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ここは、自分のこだわりを書き綴った場にしたいと思ってます。小説はすべて私の頭の中の妄想・空想を書き綴っています。


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江戸を斬る あとがき

~あとがき~

本来、この小説は、二人の女性のみが登場する小説にするつもりで書き始めました。
最初のタイトルは「蔵の中」
あの有名な?中年の未亡人が、若い男性を自宅の土蔵に監禁して半年間折檻をする物語からヒントを得ました。

そして、物語は肉体的な責めや性的な描写は一切しない。
捕らえた方の女性が、一方的におしゃべりするだけの美女2人が登場するだけの物語にしたかったのです。

アダルト官能ドラマではなく、文学的で真面目な人間ドラマです。
登場する二人の心の内面にフォーカスした脚本になるような、そんな映画になるような物語にしたかったのですが、私の筆力では到底無理なことでした。

数々の恨み。恋の恨み、金銭的な恨み、肉親を奪われた恨み・・・etc。
それらの恨みを復讐する女の物語を書きたかったのです。
どなたか真面目な映画監督さんが、ドラマにしていただけませんかねえ。

登場人物は、美女二人のみ。
撮影場所は、土蔵の中のみ。あとは二人の回想シーン。
でも、二人以外の人物の顔出しは、NG。

捕らえる側の片方の女性は、映画の間中、長い長い台詞を覚え、喜怒哀楽のすべて感情を表現出来る女優。それも美人で、どこか影があって、演技力があって・・・・・etc。
深津絵里という名前がすぐに浮かんできました。
次点で思いついたのは菅野美穂でしたが・・・・・・。
私の好みで、深津絵里にしました。

一方、囚われの女性も美人でなければなりません。
男奪い取ることによって怨み買う訳ですから、魅力的な女性であることが大前提です。
物語の最初から最後まで、この美人女優は、猿轡を噛まされています。
まったく言葉を発することは出来ません。
でも、捕らえた女性が話す内容によって、表情を変えていかなければなりません。
言葉を発せず、呻き声と顔の表情で、すべてのことを表現出来るだけの演技力がある女優。
猿轡NGの女優では、もちろん駄目ですし、可愛いだけ、綺麗なだけで人気を得ている大根美人役者でも駄目です。
かなりの役者魂があって、全篇猿轡を噛まされ続けても出演OK。それでいて、知名度があって、本当に魅力的な美人女優。
さあ、だれが思い浮かびますか?
私には、とっさに黒木瞳さんならこんな役どころでも引き受けるだろうと感じました。
若い頃の樋口可南子さんや若村麻由美さんなども思いつきましたが、いずれも私の中では、もう猿轡を見たい女優さんではありません。
天海祐希さんのならOKのような・・・・

とことん、人間の内面にだけ突っ込んだこんなシチュエーションの真面目な真面目な人間ドラマを誰かドラマ化してもらえないものでしょうかねえ?


>悦ちゃん。ご無沙汰しています。
実は、この小説のタイトルを「江戸を斬る」にしたのは、すべての文章を書き終わった後でした。最初は「蔵の中」でした。
でも、何のヒネリも感じなかったので、最後になって「江戸を斬る」にしました。
次郎吉や西郷屋も最初は別の名前でしたが、最後になってテレビの「江戸を斬る」の登場人物に書き直しました。

でも、やっぱり大半の人は、松坂慶子さんを想像してしまいますよね(笑)
私も、先月ランキング6位で松坂さんの項を書く際、再度竹轡のシーンを見直しまして、
その魅力を再確認したものです。
詳細は、ランキング6位で書いた通りです。
竹轡の縄が緩いのだけが残念で仕方ありません。もう少しだけせめて厳しく締め上げてくれていたならと思います。
それと、青竹を噛まされたシーンは、唇の紅が薄いのです。おそらく囚われてやつれた女の演出なのだと思いますが、出来れば普通の口紅の色で、口を割って竹轡を噛ませて欲しかったと思います。実に些細なことなんですけど(笑)・・・・・・。
それと、彼女が竹轡を一瞬噛み締め直すシーンは、私も気がついていました。
非常にお気に入りの仕草で、何百回も見直しています。
飲み込めない涎のせいなのかもしれないと思うと、本当に萌えてしまいます。

本当に改めて考えると「江戸を斬るⅡ」を台本そのままに平成の今リメイクした欲しい名作だとつくづく思います。

では、誰が現代なら紫頭巾を演じて欲しいか?
これは、連休中に再度書いてみたいと思います。
また、その際、松坂慶子さんへの想いも書いてみたいと思います。

>69さん。書き込み本当にありがとうございます。
確かに、もう少し、瞳奥様をじっくりと責め抜くシーンの描写を書きたかったのが本音です。ただ、責めがあれ以上思いつきませんでした。
私の責めは、猿轡責めと言葉責めと恥辱責めしか思いつかないのです。
それしか興味がないというべきなのかもしれません。
時代劇小説は本当に難しいです。
もう一作、「化け猫」という作品も書いています。
こちらも感想をお聞かせいただければ幸いです。
実は今、「鬼姫旅日記」という時代劇作品を半分書いて暗礁に乗り上げています。
何か参考になるものが欲しいと思っているところです。
69様の好きな時代劇シーンや好きな女優さん。理想のストーリーなど、何でも結構です。
メールを頂いても構いません。
お好みを教えて頂けたら大変嬉しく思います。
何か創作意欲が沸いてくるようなきっかけが欲しいと思っているところです。
まったく最近テンションがあがりません・・・・・・。
これからもどうか宜しくお願いします。

>BONDさん。毎度ありがとうございます。
復讐をテーマに書いていくうちに、脳裏に浮かんだのは、昔、岩下志麻さん主演の
「五瓣の椿」という映画でした。山本周五郎の原作も実に面白い小説でした。

あの時の岩下さん最高に綺麗でした。
あんな美女が復讐に燃え、怨んだ相手を殺さず、生け捕りにして恥辱責めにするようなドラマを創ってもらえないかと思って書いたのですけど・・・・・・・。
純粋な文学として、真面目な小説家に書いてもらえないものでしょうか?・・・・・。
実は一番の希望なんですよ。

>たまさん。毎度です。
美男が囚われて責められる。
中々難しいです(笑)。やっぱり自分のような醜男が綺麗な女性に生け捕りにされて笑われながらいたぶられるシーンを夢想しながら、小説を書くから興奮するのです。
美男子ものは、書いていて萌えません(笑)
それより、たまさんの小説に美女を登場させて下さいませ!!
心待ちにしています。

江戸を斬る 遠山桜狂い咲き9

9章

瞳がかどわかされから、すでに5日が過ぎようとしていた。
この間、瞳は一度も縛めを解かれることもなく、蔵の中に押し込められていたのである。
この5日間、あの顎が痺れるような桜の木で作った猿轡をしっかりと噛まされ続けていた。
排尿も排便も絵里が指図した。
その姿も、由蔵はしっかりと描くのである。

絵は、瞬く間に江戸中に評判になった。
人の口に戸は立てられぬの諺通り、江戸町民はおろか大名、旗本にまで瞳の姿態を描いた絵がひそかに流通するようになったのである。
いくら公儀が、取り締まろうとしても、取り締まっている役人自身が男心をくすぐる絵の続編を見たいと思う以上、取り締まりに身が入いらぬのは道理だった。
そのことを報じる瓦版も、また飛ぶように売れた。
遠山桜の狂い咲きとのタイトルで、天下の北町奉行の奥様が拉致され、盗賊一味から嬲り者にされているのを面白おかしく報じたのだ。

「いかがでございます。奥様、もう、江戸の街では奥様のことで、町中大騒ぎでございますよ。・・・・・・・・・・遠山桜と謳われた瞳奥様のこのお姿は、町民にはあまりにも刺激的過ぎますものね。ほほほ。みんな口々に可哀想だとか言いながら、本心から思ってる男なんぞいませんよ。みんな奥様の次のお姿を待ち望んでいるんですよ、でも、今日売り歩いている排便する奥様のお姿で最後に致しますわ。これ以上やせ衰えた奥様を描いても、もう面白くございませんもの。・・・・・・実は、かわら版屋の春川屋に、長崎から今までのことを全部記した手紙を送りつけましたわ。明日になれば、黒木家と西郷屋、それに遠山奉行様がやった過去からこれまでの悪事の数々が江戸中に知れ渡ることになっているのですよ。」
虚ろな目でにらみ返す瞳に、絵里が続けた。
「もう一人、奥様、動かぬ生き証人がいるのですよ。ほら、あれを御覧なさいまし」
そう言って、絵里が合図をすると、手下が、土蔵の床下の隠し扉を開けて、中から一人の男を連れ出してきた。
全裸でキチキチの高手小手に縛り上げられ、口には褌の猿轡を噛まされている中年の男だ。
紛れもなくその男は、父の盟友の西郷屋輝衛門だったのだ。
長い時間縛られたまま監禁され、厳しい拷問が加えられたらしく、衰弱していたが、瞳を見つけると目を大きく見開き驚嘆の表情を浮かべた。
「この男が、これまでのことを全て白状いたしましたわ。証拠の念書もすでに西郷屋に忍び込んで手に入れてございます。ふふふ。明日の朝早く、お二人には江戸の日本橋まで行っていただきますわ。そこで解放致します。動かぬ証拠の念書を身体に縛り付けてね。ほほほ」

翌朝、江戸の町は大騒ぎになったのだ。
西郷屋と瞳の2人が、全裸のまま縛られ、日本橋の橋の欄干に鎖で縛り付けられていたからである。
2人ともM字開脚縛りに高手小手の後ろ手縛り。口には南蛮渡来のゴムの猿轡が噛まされており、結び目には革が使われ、南京錠で留められていたのだ。
その上、首輪が施され、首輪の先端から鎖が延び、橋の欄干に繋がれていたのである。
朝から、町民たちでお騒ぎになり、町役人が駆けつけてた時には、ものすごい野次馬が集まっていた。
役人が慌てて縛めを解こうにも南京錠と鎖に阻まれ、介抱出来ないのだ。
2人の縛めが解かれたのは、夕刻になっていた。
その間、いくつもの瓦版屋が集まり、その姿をお抱え絵師に描かせて号外として江戸中にばら撒いたのである。

その後、黒木家と遠山家はお家断絶。黒木筑後守と遠山金四郎は切腹。西郷屋輝衛門は打ち首獄門。
しかし、瞳のその後はようとして知れなかった。
復讐鬼と化して、ねずみ小僧一味を追い続けたのかもしれない。
                           ~完~

江戸を斬る 遠山桜狂い咲き8

8章

黒い茂みと赤い貝。洪水のように溢れ出てくる愛液と滑り汁。
睨みつけるような眼をした怒った表情の瞳の姿を描いた後は、目を閉じ、必死に武家女の矜持を守ろうとする瞳の姿を次々に仕上げていく。
もう、描き始めて一刻が過ぎようとしていた。
「ほら、奥様、いい加減、我を折って、女になりなさいまし。ほほほ。女がこの姫泣かせを塗りこめられ、肥後ずいきで責められて、女にならなかった女人などこの世にいないと言われていますよ。悶え、鳴いて喜ぶ瞳奥様のお姿を江戸の町民はきっと見たいとおもいますよ。ほほほ。」
少しほろ酔いになった絵里自身が、今度は、肥後すいきを片手に持ち、責めまわしていた。
足首を縛った縄尻が、首に廻され、座禅ころがしの姿に瞳は変えられていた。
肥後ずいきが、差し込まれた秘部からは、愛汁があふれ出し、黒い秘毛を濡らしている。
「まあ、奥様、お尻の毛まで丸見えでございますわ。まるで犬のようなでございますこと。
ほほほ」
「さすが、遠山様の奥様、それに剣の達人と言われたほどの瞳様だけのことはございますなあ。これほど、責められてもまだ、我を折ろうとなされぬとは。ははは。しかし、それくらいのじゃじゃ馬なればこそ、責め甲斐があろうというもの。ほれほれ、もう一息でございます。ここを責めますと、さすがの奥様も・・・・・・ほれほれ!」
「むむむむ・・・・・ぐぐぐぐ・・・むぐむぐ・・・・・うううううう」
首を振り、腰を振り、手のひらを握り締め、猿轡を噛み縛り耐えていた瞳も限界に近づいていた。

そして、次郎吉の秘技がついに瞳を攻略した。
瞳の眼が、ついに屈服したように燃え始め、みだらな呻き声を猿轡越しに発し始めたのだ。
もっと奥まで強く責めて! と秘め場所から声が聞こえてくるように腰を振り始めた。
「ほほほ、とうとう瞳様も観念なさったのでございますね」
「奥様、やっと女の姿になられましたねえ。由蔵はその姿を待ちわびておりましたよ。へへへ」

飲み込めない涎が猿轡からこぼれだし、秘め場所からも愛液が大洪水を起こした姿が、由蔵の手で描かれていく。
「さあ、仕上がった絵から、さっそく版画にして、江戸中にばら撒くんだよ。」
描き終えられた絵は、配下の者によって、すぐに版画にされ、夜が明ければ、すぐに行商人に化けた盗賊一味の者たちによって、江戸中に売り歩かれる手筈になっていた。

我を折り屈服した瞳は、もう恥ずかしいくらいに腰を振り、あえぎ声を出しながら身悶え続けていた。もう、北町奉行の妻としての矜持も何もどこかに飛んでいたのだ。

「絵里様、もうそろそろ猿轡を外していい頃合じゃござんせんか? もう舌を噛む気力なんざ残っていませんぜ、へへへ。あっしらも遠山桜の喘ぎ声を聞きとうござんすぜ。」
次郎吉は、あくまでも元の主家のお嬢様である絵里には、丁寧な物腰である。
「次郎吉さん、その猿轡は、あたしが女郎部屋で骨の髄まで噛まされ続けた恨みの猿轡でねえ。その時の辛さは今も忘れられないのさ。・・・・・・・この奥様にも、骨の髄まで味あわせてやりたいのさ。絶対にはずさないでおくれ。顎が痺れて悶え苦しめばいいのさ。なあに、人間水さえ与えていれば六七日メシを抜いても死にやしないさもんさ。猿轡はそのままに水だけは与えて差し上げますわ」

江戸を斬る 遠山桜狂い咲き7

7章

そして、土蔵が開き2人の男が入ってきた。
一人は、遠山家に半年前から出入りしていた次郎吉であり、もう一人は、同じ頃から出入りし始めた小間物の行商人に由蔵という男だった。
次郎吉こそ、今世を騒がず、ねずみ小僧一味の頭領であり、由蔵が、謎の美人画絵師の北州斎写楽だったのだ。
「奥様、いい格好じゃございませんか!へへへ」
次郎吉が下衆な目で瞳を舐めるように見回した。
「へへへ、奥様、毎度ご贔屓に。小間物屋の由蔵でございますよ。いつか奥様を描きたいと思い、次郎吉親分の命令で半年前から遠山家に出入りさせていただいておりやした。へへへ。」
大奥を初め、大名、旗本屋敷や江戸の大店に出入りして内部の見取りを調べるのが、由蔵の仕事である。
そして、そこで見かける美人を描いて売っていたのだ。
「ひと目奥様をお屋敷で見たときから、雷に打たれたような気分になりましてございますよ。噂に聞いちゃいましたが、これほどの美人がこの世のいるのかと我が目を疑いましたよ。将に天女様でございますね! 早く描きたくたまらなかったのでございますよ。へへへ、それも今度は縛られてなぶられる奥様の春画が描けるなんざ、極楽に昇るような気分でございますよ! へへへ、もう下絵は出来ているんですぜ。目を瞑ると奥様のそのお綺麗な姿が浮かんでくるくらい懸想しておりましたよ。」
おおよそのデッサンは出来ているらしく、数十枚の下絵を床において見せたのだ。
一刻も早く描き上げて、江戸市中にばら撒きたいのだ。
下絵はどれも、すぐに瞳だとわかるほどデッサン力を由蔵は持っていた。
さすが、江戸一番と評判の絵師である。

「さあ、早速始めましょうや、絵里様、その姫泣かせの媚薬を奥様の秘め場所にたっぷり塗りこんでくださいまし。奥に塗り込むのはまだですぜ。へへへ、最初は、ほんの手始めに塗ってから段々と燃えていく瞳様を描きたいもんでしてね。」
「奥様、いかがでございます。あっしらのような行商人と中間のような下衆な野郎からおもちゃにされるご気分は。へへへ、それにしてもいい格好ですぜ。絵里様もひでえ縛り方されるもんですぜ。これじゃ、言うこと聞かねえ女郎に折檻するのと同じじゃございませんか?」
「ふふふ、そうさ、足抜けしようとした女郎は、みんなこうやって亀甲縛りの上、座禅転がしにされて、徹底的になぶられるのさ。ふふふ。・・・・今、奥様が口に噛み締めているのは、その時に使う猿轡ですよ。あたしもそいつを10日間も噛まされ続けて折檻されたことがあるんですよ。そりゃもう、辛くて辛くたまりませんでしたわ。・・・・・・奥様。ふふふ。折檻の辛さに負けて舌を噛んで死ぬ女郎がたくさん居ましてね。観念してしまうまでは、決して猿轡は外さないんですよ。・・・・顎が痺れてどんなに泣き喚いてもその桜木の猿轡は外してもらえないのですわ。私は、年季が終わって遊郭を出る時、そっと盗み出してきたんですよ。いつか、この猿轡を瞳奥様の口に噛ませてやろうと誓っていましたのさ。」
「それじゃ、絵里様も本望って訳だ。へへへ。いかがです、奥様、女郎の猿轡のお味は?
はははは。」
「それじゃ、次郎吉親分、早速親分から、その肥後ずいきで楽しませてやっておくなさいまし」

瞳は長襦袢姿のまま、罪人にかけられるような亀甲の縛りを施されたまま、足首を交差するように胡坐をかいた状態で縛られていた。
次郎吉の手で、胸元が開かされ、真っ白な形の良いふくよかな両の乳房が縄目の間から顔を出した。
ツンと上を向いた乳首と静脈が青く浮いた白い乳房が縄によって変形させらている。
次郎吉は、片手で絵筆を持ち、その乳首を撫でるように弄びながら、もう片手にはこけしのような肥後ずいきを持ち、瞳の秘め場所をゆっくりと押したり引いたり廻したりして奥へ奥へと攻め込んでいっている。
その中間姿の下郎風情に弄ばれている武家髷を結い上げた旗本の奥方の姿を由蔵が描いていく。
瞳は、武士の妻として、呻き声すら出すまいと、必死に堪えている。
こんな卑しい人間に、こんな形で屈服してしまうことは、絶対にプライドが許さないのだ。
猿轡を噛み締め、思いっきり憎悪の眼差しで、3人を睨みつけていく。
その武士の妻の矜持を保とうとする姿が、次郎吉と由蔵には堪らない魅力なのだ。
決して手の届かないと思っていた高嶺の花の北町奉行の妻、それも江戸随一の美貌と言われ、遠山桜とまで言われた瞳を、ねっとりと責め抜ける喜びは何物にも代えられぬ幸せだった。
絵里は、手酌で酒を飲みながら、3人の姿態を薄ら笑いを浮かべながら眺めていた。

江戸を斬る 遠山桜狂い咲き6

6章

遠山金四郎は、その後、黒木家と西郷屋からの全面バックアップで北町奉行にすぐに出世したのだ。
金四郎は、江戸奉行の地位を利用し、西郷屋が江戸で抜け荷の品を売りさばき、莫大な儲けを出すことに目を瞑り続けた。西郷屋は、黒木家と遠山家に利益を山分けする。
黒木家、西郷屋、遠山家は莫大な資金を隠し持つまでになったのだ。

その後も、絵里は、自分の身の上話を続けた。
絵里は、その後、年季が明け、自由の身になった。
そんな時、昔、肥前屋で働いていた次郎吉に江戸で再会したのだった。
次郎吉は、肥前屋が潰れた後、諸国を転々とした後、とうとう盗人にまで身を落としていた。ねずみ小僧次郎吉という二つ名を持つ大泥棒にまで上り詰め、とうとう子分が江戸に100人を超える盗人一味の首領になっていたのだ。

次郎吉も大恩ある肥前屋の敵討ちに賛同してくれたのだった。
しかし、旗本大番頭と北町奉行の2人を殺すことなど容易ではない。
そこで、2人の罪を暴き出し、評定所に裁かせる策略を練ったのだった。

「さあ、もうすぐ、ここに江戸一番の絵師がやってくるわ。誰かわかる? 今、江戸で評判の幻の絵師、北州斎写楽よ。名前くらいはご存知よね。役者絵を描かせれば、飛ぶように売れる。江戸中の版元が彼を探してるわ。でも、どこの誰が写楽なのかがわからない。
謎の絵師 北州斎写楽がもし、美人画を書いたら、江戸中大騒ぎになるくらい売れるでしょうねえ。ふふふ。・・・・・・・・・・・・・その写楽に奥様を描いていただくのよ。・・・その絵を100人の盗人たちが、絵の行商人に化けて、江戸中に売り歩くのよ。何といっても、江戸一番の絵師、北州斎写楽の美人画ですから、瞬く間に江戸中に広まるわ。それも、江戸一番の美人と評判の北町奉行の奥様・遠山瞳様の美人画なら・・・・・ふふふふ」
「・・・・・・・・」(私を描くって・・・・まさか)
「そう、そのまさかよ、その縛られた艶かしいお姿を描いていただくのよ」
「ムムムグググ・・・・・・」
「ふふふ、殺しはしないわ。絵を描き終わり、江戸の町中に絵をばら撒き終わったら、生き恥をさらさせてやるわ。女として、この世で生きて生けない恥辱を味わうのよ」
絵里が、着物の袖から、こけしのような張りぼてを取り出すと、瞳の前に放り出した。
「さあ、奥様、これが何かご存知かしら?ふふふ。これは、九州は肥後の国に伝わる幻の秘具。そう、有名な肥後ずいきですわ。・・・・・・そして、これが媚薬の肥後の姫泣かせ・・・・・・ふふふふ。これを奥様の秘め場所にたっぷり塗りこんで差し上げますわ。
クスクス・・・肥後ずいきでじっくりと秘め場所をなぶりものにしたら、奥様がどんな声を上げられますやら・・・・・・。ほほほほ」
「ムググググ・・・・・・・・・・・」
「遠山奉行の奥様が、盗人一味に生け捕りにされ、罪人縛りに縛められ、猿轡を噛まされたまま、観音様を丸出しにして下郎になぶられる。黒い恥毛も口を開けた赤貝もあぶれ出る恥汁も、しっかり描いて差し上げますわ。ふふふ。・・・・・・最初は気高く気取っている奥様も所詮女でございますもの、姫泣かせを塗りこめられ、肥後ずいきで嬲られれば、すぐに女になりますわ。濡れ濡れになって洪水になったお姿を、絵に描かれて町中にばら撒かれたら、そりゃ、恥ずかしくてこの世に生きてはいけませんわよね。ほほほほ」
{・・・・・おのれえ、何たる卑劣な・・・・・・}
「ほほほ、奥様ったら、そんなに怖い目で睨んだら嫌でございますわ。・・・・・
猿轡を噛ませたのもあまりの恥辱に舌を噛んで自害なんか出来ないようにで、御座いますのよ。ほほほ。女にとっては、死ぬより辛い恥辱でございましょうねえ、ほらほら、嫌々といって泣き叫んで御覧なさいまし、もっと身体を身悶えして御覧なさいまし、はははは」
絵里は勝ち誇ったように高笑いをして、猿轡を噛み締め、口惜しそうに固まっている瞳を見下すように微笑んだ。

江戸を斬る 遠山桜狂い咲き5

5章

目が覚めてからどれくらい身悶えしただろう。
手足が痺れて本当に辛くなってきた。
鏡に映し出された縄目の自分の姿は、あまりに惨めで屈辱的な姿に思えた。
若い頃から、江戸一番の美人だと持て囃され、その美貌は城中の将軍の耳にまで、入ったと聞いたことがある。
嫁いでもなお、その美しさが衰えるどころか、女の色気がますます加わり、人妻の色香が匂いたつような艶かしさを漂わせていた。
遠山桜とは、本来、江戸市民が、奉行の奥様の美しさを桜に例えた言葉だったのだ。
それほどの美貌の瞳奥様のこの無残な緊縛姿、残酷なほど顔を歪める猿轡。
瞳の心の中に怒りがふつふつとこみ上げてきた。
そして、口いっぱいに噛まされた猿轡で、顎が痺れ、飲み込めない涎が、長襦袢を随分濡らし始めたころ、絵里という女が、入ってきた。
「奥様、そのお姿は気に入っていただけましたでしょうか?ふふふ。・・・・奥様ご自身もご覧になりたいと思いまして鏡台を用意いたしましたのよ。ほほほ・・・・・遠山桜が散って、桜吹雪になった。ほほほ、そんなお姿ですわ。」
「ムムム・・・・・」(おのれ!!!!)
「ほほほ、おのれ下郎め!とかおっしゃいたいのでしょうか? でも、こんな屈辱はまだ地獄の入り口なんですよ。これから、本当の恥辱を与えてご覧にいれますわ・・・・・・・。」
絵里はそこまでいうと、これまでの勝ち誇ったような表情を一変させ、胸の中にしまっていた積年の恨みを一気に爆発させたのだ。
「あんたは、覚えていないだろうけど、20年前、あんたの父親が長崎奉行だった時、
何をしたか、教えてあげるわ。・・・・何の罪もない商家に抜け荷の濡れ衣を着せて、
私財を盗み取ったのさ」
「・・・・・・・・・・」
「信じられないって顔だね。いいかい。よくお聞き! あんたの父親の黒木筑後守は、長崎で西郷屋と結託して、真面目一筋だった私の父と母を殺したのさ。おとっさんは、一生懸命に働く裏も表もない真面目な商人だったわ。肥前屋といって、西海一の廻船問屋だったわ。・・・・・そこに、在りもしない抜け荷の疑いをかけ、おとっさんを獄門にしたのよ。あんたの親父と西郷屋が儲けたいが為に、おとっさんを殺したのよ。お店は決所。取り潰されたお店をみながら、
おっかさんと2人で、家を出て行ったことをよく憶えているわ。・・・・・・・。それから、すぐにおっかさんは病に倒れて、すぐに亡くなったわ。・・・・・・・・・まるでおとっさんの後を追うようにね。・・・・・結局、あたしは、一人ぼっち。まだ、10歳だった。それから女衒に売られ、江戸の遊郭の子女として働かされた。」
「・・・・・・・・・・」
「その江戸で、あたしは、あんたを見たのよ。大旗本・黒木筑後守の娘だったあんたが、家来を引き連れ、歩く姿をね。・・・・憎かったわ。必ず復讐してやると誓ったわ。・・・・・・それからは、岡場所の女郎として長く苦しい地獄を味わったのさ。・・・・・・・でも、そんな、あたしを見請けしてもいい。あたしのことを気に入って通い詰めてくれる人が現れたのさ。・・・・・・・・・誰だと思う? そう、あんたの旦那の遠山金四郎さ。・・・・旗本の3男坊で、遊び人でさ。背中には粋な桜吹雪の彫り物なんかいれて、あたしの所に、毎晩のように通ってきてくれたのさ。武士を捨てる。年季が明けたら、一緒になろうと言ってくてたわ・・・・・・・。あたし、もう、金さんと所帯を持って幸せになる。あんたの家への復讐も忘れかけてた・・・・。それなのに、その金さんをあんたが、また奪ったのよ。」

遠山家は、嫡男と次男が相次いで病死し、突然3男の金四郎が家督を継ぐことになったのだった。
家督を継いだ金四郎は、メキメキと才覚を表し、瞬く間に旗本頭になり、次いで北町奉行にまで出世した。

「あんたの父親も、西郷屋と結託し、おとっさんから奪ったお金を、幕閣にばら撒き、出世を手に入れた。黒木筑後守が大番頭にまで出世できたのも、みんな袖の下のおかげよ。そして、西郷屋も江戸に出てきても、抜け荷を続け、そのお金を元手に今では、公儀の御用を務める大店にのし上がったのよ。・・・・・・。あんたの父親は、金さんが旗本の中でやり手になると見込みをつけると自分の陣営に引き込む為に自慢の娘を嫁がせることにした。それが、あんたよ。・・・・・・・・・・色仕掛けで、金さんを誑かして、あたしから金さんまでも奪ったのよ。・・・・・・・あたしは、あんたたち4人に復讐を誓ったのよ。ふふふ。4人とも地獄に落としてあげるわ」

江戸を斬る 遠山桜狂い咲き4

4章

どれくらい眠ったのかわからない。
眠り薬の効き目が終わり、眠りから覚めた。
眠りから覚めて、顔を上げたとき、ご丁寧に縛られ柱に繋がれた瞳の前方に大きな鏡台が据えられているのが、瞳の目に飛び込んできた。
縛られた自分の姿が真正面に見える。
着物を脱がされ、淡い緋鹿の子の長襦袢姿で縛られていた。
長襦袢だけでも身に着けているのが救いだった。
亀の甲羅を思わせる亀甲縛りが施され、乳房の形が浮き上がるように両乳が絞り上げられている。
手首は背中高く捩じり上げられて交差して縛られているのがすぐにわかった。
関節をきっちり押さえた見事な縛りで、肩も動かせないし、腕はすでに痺れるような感覚になっている。
緊縛の術の心得のあるものから縛られているとすぐにわかる。
その上、下半身の湯文字は剥ぎ取られていて胡坐を掻かされ、足首を交差させて足首を荒縄で縛られているのだ。
足首の縄尻が首にはさすがに廻されてはいないが、膝を揃えようにも、足首の縛りは厳しく、鏡の中で長襦袢の奥に黒い茂みが見えそうになっている。
余りの屈辱に声を出そうにも、木で出来た猿轡を新たに口に噛まされていたのだ。
桜の木を球状に丸くくり抜き、キレイにヤスリで丸く磨き上げられている球体が口に噛まされているのだ。
球の真ん中に棒を通し、その両端になめし皮で作った紐が付いていて、球体を口に噛ませた後、なめし皮をうなじに廻して厳しく締め上げられていた。
大きく口をいっぱいに開かないと、口に嵌らないような球体であり、使い込まれたのだろう、球体には人間の歯型を思わせる傷がいくつも付いているのが鏡に映った猿轡でわかる。
なめし革が頬に食い込み、美形の瞳の顔を醜く歪めている。
{きっと何人もの人間がこの猿轡を噛まされてきたのだわ}
そう思った時、激しい憤りがこみ上げてきた。
仮にも北町奉行を務める千石取りの旗本の妻女なのだ。
{この縛めはいったい何なの?罪人への縛めと同じじゃないの!・・・武家の妻女に対する縛めとして、あまりにも無礼。湯文字を剥ぎ取り、長襦袢姿で罪人縛りの辱めをなぜ受けなければならないの・・・・・。この猿轡はいったい何?見たこともない形状だし、他人に噛ませた猿轡を口に嵌められる恥辱・・・・。おのれえ・・あの女狐!}
口いっぱいに噛まされた猿轡は顎を痺れさせ、腕や手の痛みとともに、屈辱感を増幅させるのである。
蔵の中には、絵里が残していったたった1本の蝋燭が細々と灯りを燈し、ただ静寂に包まれていた。
その時、どこからともなく鞭で何かを叩く音と人間の呻き声のようなものが微かに聞こえてきた。
それは、本当に耳を済ませなければ聞こえない微かな微かな音である。
{ここの地下にも部屋があるのかしら?・・・・・きっと隣か地下にも監禁蔵があるのだわ・・・私以外にも誰か監禁されているのかしら?・・・・でも、あれは鞭の音・・・・私にもあのような折檻をする気なのね?}

江戸を斬る 遠山桜狂い咲き3

土蔵の扉が開き、蝋燭を灯した人影が土蔵の中に入ってきた。
逆光の中、やっと視線に入ってきたのは、やはり先ほど絵里と名乗った女だった。
もう、武家女の着物姿ではなく、明らかな町人の髷に花街の芸者を思わせるような粋な着物を身にまとい、微笑みを浮かべながら入ってきた。
「お気づきになられたんですねえ。ふふふ。どんなご気分かしら? ほほほ。とうとう私の掌の中にお入りなられましたわねえ。」
「・・・・・・・・」{とうとう現れたわね、この女狐!}
「まあまあ、さすがはお武家様のご妻女さまになると違うんですねえ、捕らえられ、こんな薄暗い土蔵の中に縛り上げられて押し込められても、足も崩さず、正座をしたままでいらっしゃるなんて、ほほほほ。・・・・・・でも、いつまでそんな矜持が保てますやら」
「むむっむむむ・・・・・・・・」
「ふふふ、私が何の為にこんなまねをしたかをお知りなりたいのでしょう?・・・まあ、お急ぎになられなくても、ゆっくりお聞かせいたしますわ。私が誰で、何のために奥様を
かどわかしたのかも。・・・・・そして、奥様がこれからどうなるのかも。ふふふふ。」
絵里という女は、そこまで言うと、土蔵の上部にある明り取りの窓に取り付けられている木の棒を器用に下から外した。
持ってきたろうそくの灯りが、土蔵の外に漏れるのを嫌ったのだ。
ろうそくの灯りを傍らの木の樽の上に置くと、柱に縄尻を繋がれ、木の床に正座している瞳の目の前の木の椅子に腰を下ろした。
「奥様、お役宅は、今頃大騒ぎでございますよ。お奉行様の奥様がかどわかしにあったのですもの。明日の酉の上刻までに伝馬町の罪人全部を解き放たねば、奥様の亡骸が大川に浮かびますと投げ文を手下に持たせましたもの。・・・・・・ふふふ。次郎吉は、あなたをかどわかす為に遠山家に中間にもぐりこませたのもわたくしでございますわ。」
「・・・・・・・」
{あの次郎吉が!!。やっぱりそうだったのね。・・・でも、馬鹿ね、旦那様がそんな愚かな要求を呑むとでも思っているの!}
そう思った瞬間、心を見透かすように話が続いた。
「ふふふ、最初から罪人の解き放ちなど出来っこないとわかっているんですよ。・・・ただ、
あの遠山奉行が窮地に追い込めさえすれば、私はいいのですもの。ほほほ。・・・・それと手下には、瓦版屋の春川屋にも北町奉行の奥様がかどわかしに遭って、奉行所の中が大騒ぎになっていると知らせましたわ・・・・・ふふふ。」
{あなたは、旦那様に何か恨みがあるのね。でも、無駄よ、私を人質にしても旦那様は
悪に屈するような人ではないわ・・・早く考えなおしなさい。でも何故、瓦版屋にまで、それでは、間違っても罪人の解き放ちなど出来なくなってしまうわ}
「奥様は、もしかして、私が遠山にだけ怨みがあると思っていらっしゃるのかしら・・・・ほほほ。それでしたら、教えて差し上げましょうかねえ。復讐したいのは、あなた。・・・そう瞳奥様あなた様ですわ。・・・・・・・・奥様ご自身を今からたっぷり地獄に落として差し上げますわ」
{・・・・・・・・。あなたの私の心の中が読めるの?・・・・・・・。それに私に何の怨みがあるの?・・・・・・・。あなたはいったい誰なの?}
「まったく心当たりございませんってお顔ですわね。よろしゅうございますわ。お話するのは、後に致しましょう。・・・・・しばらく、お眠り下さいませ。・・・・・眼がおさめになられましたら、ゆっくり何故ご自分が今から地獄の苦しみを味わなければいけないのか?をよくお考えくださいませ。ほほほ。・・・・それから、ご自分のお姿をゆっくりご覧くださいませ。今から素敵なお姿にさせてさしあげますわ。」
そう言うと、絵里は着物の裾から、何か陶器の小さな器を取り出した。
「奥様、これは、南蛮渡来の眠り薬でございますわ。今からしばらくこのお薬の臭いを嗅いでいただきますわ。すぐにいい気持ちになって深い眠りについてしまわれますわ。」
絵里が器用に口に被せていた猿轡を一枚外すと、陶器の容器を瞳の鼻先に近づけた。
首を振って拒もうとした途端、ツンとした甘酸っぱい匂いがし、拒もうとした首を絵里が鷲掴みにすると甘酸っぱい匂いが鼻腔の奥底まで入ってきて、急に意識が遠のいたのである。



江戸を斬る 遠山桜狂い咲き2

2章

茶屋は初老の男と下女が切り盛りしているらしく、他に客はいなかった。
奥の部屋で、枕と布団を借りて横にすると、妻女は厚く礼を述べ、身分を明かした。
「私は、旗本深津主税の妻で絵里と申します。このたびは何とお礼を申し上げれば宜しいやら。」
「そのような礼は無用でございますわ。災難の時はお互いさまで御座いますもの。・・・これは申し遅れました。私は、北町奉行遠山左衛門尉景元の妻で瞳と申します。さあ、もうしばらく横になっていらっしゃってくださいませ」
その時だった。
次郎吉が障子を開けてお茶を持って来たのだった。
「さあ、奥様も喉がお渇きになったことでしょう。温めのお茶を持って参りました」
次郎吉が差し出したお茶を何の疑いもなく飲み干したときだった。
急に、体に眠気が襲ってきて、正座していられなくなったのは。

「奥様!いかがなさいました?・・・・・・。薬が効き始めたようですぜ、ふふふ」
急に次郎吉の言葉遣いが変わったのがわかった。
「奥様、ご油断なさいましたな。そのお茶には眠り薬が入っているんですぜ!ふふふ。」
「・・・・おのれ、次郎吉、・・・・何をする気です」
その時だった。
横になっていた絵里が急に微笑を浮かべながら起き上がってきたのは。

「奥様が、時折、紫の頭巾を被り、北町奉行所の捕物を手助けされている剣の達人であることも全て調べがついているんですよ。・・・・・・・・ふふふ。江戸の街で評判の紫頭巾も体が痺れては、手も足も出せますまい、さあ、次郎吉。眠り薬が効いてるうちに、さっさと縛り上げて猿轡をお噛まし!」
「合点承知の助でさぁ」と次郎吉が、懐から手拭を取り出して、器用に真ん中に結びコブを作ったところで、気を失ったのだ。

{そこまで聞いて眠ってしまったんだわ。・・・次郎吉が入れたお茶に・・・・。でも、一体何の為に?・・・}
身体を見回してみたが、着物が乱れた様子はまったくない。白い足袋や帯もしっかり結んだままだし、シゴキも乱れていない。貞操だけは守られているようだ。ただ、胸の懐剣が抜き取られている。


{猿轡を噛まされていては、武士の妻女の貞操を守ろうにも舌を噛んでも死ねないわ。・・・・何とかここを早く逃れなくては・・・・・・・でも、何の目的で誰が・・・・北町奉行の妻女と知った上での誘拐なら、盗人一味か、ならず者が夫を陥れるために人質に取ったとしか思えない。・・・・あの絵里と名乗った女性は何者かしら?確かに直参旗本二千石取の深津様という名前はあるが、まさかあの女が犯人の一味なら本名を名乗るとも思えない・・・・あの絵里という女にはまったく見覚えはないわ。・・・・それに私が縛られる前に喋った言葉遣いは、間違いなく町人のものだった。・・・ということは偽の武家女。・・・そうだ。あの茶屋の親父と下女はどうなったのかしら。まさか縛られた女が運び出されるのに気づかないなんて・・・・第一真っ昼間どうやって私を連れ出したのかしら?
いくらなんでも駕籠や長持ちでは人目につくはず。・・・・・船?・・・・そうだわ、きっと船で運ばれたんだわ。誰か私が連れ去られるのを見ていないかしら?}
高窓の明かりが薄暗くなり、夕闇が迫ってきたころ、土蔵の鍵が開く音がした。
もう明かりがなければ土蔵の中は真っ暗で居られない暗さである。

江戸を斬る 遠山桜狂い咲き1

1章
{どれ位気を失っていたのかしら?何か長い夢を見ていた気がするけど・・・・}
そう思って起きようとした時だった、自分が縛られている事に気が付いたのは。
縛めは厳重であり腕のツボを見事に抑えた縛りであることはすぐに気がつかされた。
腕を動かそうとしても、全く動かせないのだ。
背中に高く手首を捻り上げられて縛り上げられていて、帯の上の乳房を上下から挟み込むように胸縄を噛まされている。何か声を出そうとしても声が出せない。
猿轡を噛まされていることをすぐに思い出した。
{ああ~やっぱり夢じゃないのだわ。・・・私はかどわかしにあったのだわ・・・・。次郎吉に謀られたのだわ・・・あの女が指図していたわね!・・・・。}
猿轡をお噛まし!という女の声が耳奥に残っているし、気を失う瞬間、次郎吉が手拭に結びコブを作っているのを見て、猿轡を噛まされるとまで思ったのが蘇ってきた。
部屋を見渡すと、土蔵の中に監禁されているようだ。
高窓があり、格子になっている。
日が差し込むところを見るとまだ日は暮れていないのだろう。
夕暮れのようだ。
水鳥らしき鳴き声が聞こえ、一度船の艪が軋む音がかすかに聞こえた。
遠くで人足らしき男たちの話し声らしきものが微かに聞こえる。
{猿轡さえ外せて大きな声で助けが呼べれば、もしかして気づいてもらえるかもしれないわ}そう思って猿轡を外そうとしても、しっかりと詰め物を噛まされ、更に口を割り、頬が歪むくらい厳しく猿轡が締め上げられているのがわかる。
おそらくその上から更に被せるように口を覆う猿轡が二重にかけられているようだ。
口いっぱいの詰め物でまったく口が閉じれないし、声を出そうにもまったく呻き声しか出せないのだ。
簡単に猿轡を自力で外せそうもない。

自分が何処か薄暗い土蔵の中に手足を縛られて猿轡を噛まされて監禁されている事を飲み込んで騒いでも当分無駄だと気づくと、今日の出来事を順を追って思い出してみた。


今日は、朝から本家である実家の黒木家の母の3回忌の法要の準備の為、菩提寺の妙泉寺にお参りしたのだ。
半年前に雇った中間の次郎吉一人を供にしての帰り道だった。
次郎吉は歳の頃は45~6歳の世慣れた渡り中間で、半年前から奉公に来ている。
話し上手で世事に詳しい次郎吉は、今はやりの歌舞伎役者や芝居の話を普段からよくしている。
今日は大事な法要の打ち合わせも無事に済み、どこか心にスキが出来たのかもしれない。
次郎吉が、上野に面白い芝居小屋が掛かっているから、「奥様いかがで御座いますか?」と誘ってきたのだった。
まだ、時間に余裕があったので、次郎吉を供に芝居見物をしてまわり道をしてしまったのだ。
芝居が終わり、初めて通る道を帰っていたときだった。
前から、綺麗な着物を着た武家娘が歩いてきて、まもなくすれ違おうとした時、
その娘が、突然、わき腹を抑えて道端にしゃがみ込んだのだ。
「いかがなさいました?」
娘は30歳前後くらいの身分の高い武家の妻女のようである。
「いえ、急に差し込みが。・・・持病が御座いまして、・・・しばらく休んでいれば・・・
じきに痛みは消えますので、・・・・・どうかお気遣いなく・・・・」
「次郎吉、印廊から腹痛の丸薬を!さあ、どこかで水をもらってきておくれ。」
「いえ、本当に結構で御座います」
かなり具合が悪そうなので、介抱しようと手を差し伸べても、奥ゆかしく遠慮するばかりである。
「どうかご遠慮なさらずに、武家は相身互いでございますよ。このお薬を飲めばすぐに楽になりますよ」
その時次郎吉が、水を汲んできた。
「奥様、あそこに丁度茶屋がございます。小さな部屋もあるようでございますから、あちらにお連れいたしたら、いかがで御座いましょう!」
「そうですね、さあ、奥様、あちらで少しお休みを。次郎吉!手を貸して差し上げなさい」

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