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ここは、自分のこだわりを書き綴った場にしたいと思ってます。小説はすべて私の頭の中の妄想・空想を書き綴っています。


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丹下左膳異聞 その2

丹波の屋敷の離れの茶室では、床柱の前に萩乃を座らせ、別の縄で萩乃を床柱に縛りつけます。
赤垣が出て行ったあと、丹波が萩乃を見つめながら話しかけます。
「さて、萩乃さま、いや、萩乃、やっとわしの手の届くところにきたな。かねてからこの日の来るのを待っていたのじゃ。お察しの通り、先生には死んでいただいた。玄庵どのに薬を調合してもらってな。先生はどうしてもわしと萩乃との祝言を認めなんだ。わしの剣は邪剣じゃとののしりおった。仕方なくわしは先生に毒を無理やり飲ませた。玄庵と赤垣と三人でな。萩乃、源三郎ももうすでにこの世におさらばしておろう。丹下左膳はお前を囮にしてきっと葬ってやるわ。そのあとお前と晴れて夫婦となって司馬道場をついでやるわ。」
丹波は縛られ、猿轡を噛まされた萩乃の前に近づき、肩をさすったり、胸をなでたり、顎に手をかけていやがる萩乃を自分のほうに向けさせたりして狼藉に及ぼうとします。
「ううう、くくう、うううう」
萩乃は猿轡の下でうめき声をあげます。必死にのがれようとしますが、床柱に縛り付けられていますのでどうしようもありません。
そのとき外から女の声で「お前さん、帰って来たのならちょっとはあたしのところへ顔を見せたらどうなんだい。その女は縛りあげてるんだろう。逃げられやしないんだから、あとで楽しみゃあいいじゃないか。ちょっとこっちへ来ておくれよ。」
その声を聞いた丹波は、
「ちっ、お蓮か、うるさい女だ。萩乃、おとなしく待っておれよ。」
丹波は舌打ちをしながら部屋を出ていきます。
萩乃は「ふう」とため息をついて目を伏せるのです。

ここは国境の国見峠、切通しになった峠道の崖の上の林の中には、火縄銃を構えた侍が三人潜んで柳生源三郎のくるのを待っています。
峠道の頂から一丁あまり向こう側に下がったあたりに源三郎と供の侍が上ってくるのが見えてきました。
三人の侍が火縄銃のねらいを定めて引き金を引こうとしたその時です。
「柳生さま、鉄砲が狙っております。あぶのうございます。お逃げください。」
下男の作造が大声を出しながら峠を駆け下りてきます。
その声を聞き源三郎と供の者はさっと道端に横っ飛びになり地にひれ伏します。
「ダダーン」その時鳴り響く鉄砲の音。
「あああ」作造に一発の弾が当たり倒れます。
源三郎と供の者には当たらず二人は音の出た方めがけて突進し、たちまちのうちに三人の侍を斬り倒します。
倒れた作造のところに引き返すと、作造は足に弾がかすっただけで大事にはいたっていませんでした。
「柳生さま、お嬢さまが峯丹波にかどわかされて、丹波の屋敷の離れに閉じ込められています。先生がお亡くなりになったのも丹波たちの仕業と思われます。早くお嬢さまをお助けください。」
作造は先ほどの出来事を源三郎に話します。
「なに、丹波が萩乃どのを、なんという恥知らずめ。おそらく先生もあやめたにちがいあるまい。おのれ生かしてはおけん。作造お主はけがをしておる。わしの供の者と後から来るがよい。」
源三郎が駆けだそうとしたとき、
「おいおい、ちょっと待て、鉄砲の音がしたのであわてて来てみたら、萩乃どのがかどわかされたというではないか。いきなり乗り込めば悪知恵の働く丹波のこと、萩乃どのを人質にしてどのような罠をしかけているかもしれん。」
現れたのは丹下左膳です。
「まずは正面からおれが斬りこむ。源三郎お前は鉄砲が待ち伏せしていたのだから、おそらく死んでしまっていると敵は思っているだろう。そこでおれが源三郎のかたき討ちだと乗り込めば、野郎油断しておれ一人を仲間全部で囲んで打ち取ろうとするにちがいない。その隙にお前は裏口から忍び込んで萩乃どのを助けるのだ。」
「それがようございます。丹波は柳生さまを打ち取ったという知らせを今か今かと待っておりました。丹下さまがそうおっしゃれば簡単に信じることでございましょう。お嬢さまが閉じ込められている離れの茶室は裏口からも近うございます。」
作造も相槌をうって賛成します。
左膳と源三郎は峠を下り、丹波の屋敷の手前で別れて表と裏から侵入し萩乃を救いだし、丹波一味を成敗しようと出かけていきます。

場面変わってここは峯丹波の屋敷。
離れの茶室では、かどわかされてきたときと同じように、萩乃が高手小手に縛しめられて、口には厳重に猿轡を噛まされたまま床柱に縛り付けられています。
いくら身悶えしても縄が緩むことはなく、萩乃は源三郎が救いに来るのを待とうと思うのです。
しかし丹波が差し向けた鉄砲によって源三郎が命を落としているのではないかとも思い、気が気ではない萩乃なのです。
そのとき襖が開いて一人の女が入ってきました。
丹波の情婦お蓮です。手には匕首を持っています。
「お前が萩乃とかいう小娘かい。ふん、縛り上げられていい気味だよ。猿轡で口もきけないんだね。あたしの亭主があんたと夫婦になるんだとかぬかしているけど、そんなことあたしは承知しないからね。ここでお前を殺してやるんだ。覚悟しな。」
お蓮は匕首を構えて萩乃をにらみつけると、「このあま、死ね!」と言って萩乃めがけて突っかけてきました。
萩乃は後ろ手に縛られた不自由な体で精いっぱい体をよじって匕首の切っ先を避けようとします。
「えい!」
二度目に突き出した切っ先が萩乃を縛っている胸縄を切ってしまい、萩乃は自由に動くことができるようになったのです。
[作者注・高手小手に縛しめられている場合、胸縄を切っただけでは後ろ手を縛っている縄が緩むことはありませんが、この物語は映画などでのシーンと同じように胸縄が切れたことにより、縛しめがすべて解けたという設定にしました。]
「ええい、逃がしてたまるか。殺してやる!」
なおも萩乃に斬りかかろうとするお蓮からのがれようと、萩乃は離れの外へと逃げ出します。
「お蓮、何をしておる。馬鹿なことはやめるのだ。その女は大事な人質なのだ。お前を捨てるようなことをするはずがないではないか。わしを信用しろ。」
丹波が驚いて止めにはいります。
「ふん、信じろと言っても信じられるものか。この娘と祝言をあげるといっているじゃあないか。そのあとにはあたしを捨てるに決まっているんだ。この娘を殺してやるんだ。」
なおも萩乃を追いかけようとするお蓮の手を丹波がはっしと打ちます。
「あっ、痛い。」
匕首を取り落すお蓮の右手を丹波はつかむと後ろに捩じ上げます。
「おい、赤垣お蓮を土蔵に連れて行って縛り上げておけ。うるさくわめくようなら猿轡も噛ませておけ。」
丹波に命じられた赤垣はお蓮を引き立てて土蔵の中で後ろ手に縛り上げ、わめく口に猿轡を噛ませて中の柱に括り付けました。
「萩乃どの、怖い目にあわせてしまったのう。あの女は少々おかしくなっておるのじゃ。さあ、そなたにはもう一度離れにはいってもらおうか。」
丹波は萩乃の手をつかんで背後に捩じ上げて肩に手をかけて離れの茶室に押し込みます。
そして先ほど解けた縄で再び萩乃を後ろ手に縛り直し、今度は床柱を背に立たせて縛り付けようとします。この騒動の間、猿轡まではずす余裕がありませんでしたので、猿轡は最初と変わらず噛まされたままなのです。
「源三郎を打ち取ったという知らせもまだじゃし、左膳もどこにおるのかわからんし、萩乃どのにはまだまだ人質としての役割があるのでな。逃げられては困るのじゃよ。このようにきつく縛られて苦しいじゃろうがおとなしくしといてもらおう。」
萩乃を床柱に縛り付けようとしたそのときです。
表の方で騒がしい声が聞こえてきました。
「やい、丹波、俺の剣の相手、源三郎を卑怯にも鉄砲で撃ち殺しやがって。この左膳が仇を討ってやるから尋常に勝負しろ。」
左膳が乗り込んできて大音声でわめいているのです。
その声を聞いた萩乃ははっとしました。恋しい源三郎が鉄砲で撃たれて亡くなってしまったのです。
もう萩乃は生きていく力が抜けていくような気がするのです。(もう源三郎さまのいないこの世で生きていくことはできない。そうだ舌を噛んででも死のう。)と思いましたが、猿轡を噛まされているため舌を噛むこともできないのです。萩乃の瞳からは涙がとめどもなく流れ出て猿轡の白布を濡らしていきます。

表門のあたりでは一人で斬りこんできた丹下左膳を丹波の配下が囲み、打ち取ろうと刀を構えています。
裏門に配置していた者たちも源三郎が撃たれたと聞いて、案の定集まってきました。左膳はかかってくる相手を次々となぎ倒していきます。
左膳の気迫におそれをなした配下の侍は遠巻きに囲んで手を出せずにいます。
そのとき丹波と赤垣が、後ろ手に縛って猿轡も噛ませている萩乃を引きずるようにして連れてくると、喉元に刀を突きつけて叫びます。
「やい、化けものめ。刀を捨てろ。この女の命がないぞ。」
「おう、出てきおったな丹波め、相変わらず卑怯な手を使いよるわい。萩乃さん、縛られてかわいそうにな。しかし安心しな、すぐにわしが助けてやるぞ。やい丹波、萩乃さんを離せ。そうしないとてめえの命がなくなると思え。」
「左膳、何をほざくか。刀を捨てろ。捨てねばこの女の命はないものと思え。」
そのときです。
萩乃の背後で縄尻を持っていた赤垣が突然うめき声をあげて倒れ、萩乃は丹波から離され一人の男に抱きすくめられます。
それは裏口からひそかに侵入してきた源三郎が一刀のもとに赤垣を切り捨てて萩乃を丹波から引き離したのです。
萩乃は自分を助けたのが源三郎とわかり驚くとともに、うれしさがこみあげてきます。
萩乃が源三郎によって助けられたのを見届けた左膳は、まっすぐに丹波の方に駆けより、動転している丹波をめがけて濡れ燕を振り下ろします。
「ぎゃあー」左膳の振り下ろした濡れ燕は、あやまたず丹波の右肩を袈裟懸けに斬り裂きます。
これを見た配下の者たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ去ってしまい、あとには左膳と源三郎、萩乃の三人が立っていました。
源三郎は後ろ手に縛しめられた萩乃の縄を解き、猿轡もほどいていきます。口に噛まされていた手拭いをはずされたとき、萩乃は詰め込まれていた布きれをやっと吐き出すことができたのです。
「源三郎さま、よくぞご無事で、萩乃はうれしゅうございます。」
「萩乃どのも無事でなによりであった。丹波め、あんなにきつく縛りおって、萩乃どのさぞ苦しかったことであろう。よく我慢されたものよ。」
「ええ、必ず源三郎さまが助けにきてくださると、萩乃はずっと信じておりました。」
このやりとりを聞いていた左膳、
「あーあ、聞いておれないよ。二人でいつまでもそうして抱き合っておればいいんだ。わしは邪魔にならんように消えるとするか。お二人さん幸せにな。あばよ。」
左膳は一人でいずこへともなく歩きはじめました。
その後ろ姿に源三郎と萩乃は深々と頭を下げて見送るのでした。
なお、土蔵に閉じ込められていたお蓮は裏門から忍び入った源三郎が、女のうめき声に萩乃ではないかと蔵に入り、お蓮の縄を解いてやり、お蓮の案内で丹波たちの背後に近づくことができたのです。めでたし、めでたし。           終り   

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丹下左膳異聞 

登場人物   丹下左膳
       柳生源三郎
       司馬卜伝(司馬道場の道場主・故人)
       娘 萩乃
       峯 丹波(司馬道場の師範代・悪者)
       お蓮(丹波の情婦)
       赤垣主水(丹波の腹心)
       医師 玄庵
       下男 作造

[作者注・この物語は昭和三十八年に松竹で映画化された「丹下左膳」を元に作者が終りに近い部分の筋書きを独自に替えてDID小説として書き上げたものです。
登場人物は映画のものを尊重していますが、一部削除したり、独自に登場させた人物もいます。
ヒロインである萩乃は当時十八歳の美少女女優、鰐淵晴子さんでした。
現在の女優さんでこの役にあてはまる人を思い浮かべようとしましたが、テレビでは新しい時代劇もほとんど放映されませんので、これという人は見つけられませんでした。
したがって年配の方は若き日の鰐淵さんを思い浮かべて、また鰐淵さんをご存じない方々はそれぞれお気に入りの女優さんを思い浮かべて読んで頂ければ幸いです。]

第1章

ここは司馬道場の奥座敷、仏壇の前では道場主の娘萩乃と師範代を務める峯丹波が向き合っています。
「萩乃さま、先生がご逝去されて早や七日、初七日も明けたことゆえ、先生のご遺言通り私と夫婦になって当道場を引き継ぎいたしたいと思っておりますが、祝言はいつごろ行えばよろしゅうございましょうか。」
丹波は萩乃にかねてから横恋慕しており、柳生源三郎の婿入り話が進み始めてからは、病気で伏せている道場主の司馬卜伝に詰め寄っていましたが、相手にされずついには腹心の赤垣主水、医師の玄庵とはかって卜伝を毒殺し何食わぬ顔で葬儀、法要を執り行ってきたのです。
そして、初七日の法要も終えた翌日に、卜伝の娘である萩乃に夫婦となるよう迫っているのです。
「峯どの、父が亡くなってまだ七日、このようなときに何を言い出すのです。父上の遺言などと言っていますが、父がそのようなことをいう筈がありません。父はかねてから源三郎どのに婿になってもらい、この司馬道場を継いでもらうのだといっておりました。あなたの作り話など誰も信じはいたしません。まもなく源三郎さまもこちらのお着きになるはずです。早々に立ち去ってください。」
「萩乃さま、何をおっしゃいます。先生のご臨終に際し、身どもと、医師の玄庵どの、それに赤垣が立ち会ってはっきりとお話しされたのですぞ。源三郎どのよりも拙者のことを信頼されてのお言葉と信じております。」
「あの日、私が下男の作造を伴に連れ、母上のお墓参りに行っている間に父上の容体が急変して、そのまま亡くなったとのことですが、朝方の父上の様子から、そんなに急に亡くなってしまったというのは、私には到底信じられませぬ。あなたたち三人がはかって父を亡き者にしたのだとのうわさも聞こえてきています。源三郎さまがお着きになればそのこともお調べになって明らかにされるでしょう。峯どの、どうぞお引き取りください。」
「ふふん、萩乃さま、源三郎は今頃国境の峠あたりで鉄砲で撃たれて蜂の巣のようになっていることでございましょう。あなたには私の屋敷においで願います。源三郎を仕留めもらすこともあろうし、また他に丹下左膳とかいう化けものも出没しておりまする。この左膳なるものもあなたさまに一目ぼれしております様子、こやつらを葬り去るためにも萩乃さまを囮として捕えておけば好都合と思いましてな。」
丹波は片膝を立て萩乃ににじり寄ってきます。
萩乃は帯に差した懐剣の紐を解き、抜き放って身構えます。
「正体を現わしたな峯丹波、やはり父を亡き者にしたのもそなたであろう。父の敵、覚悟せよ。」
「なんとおっしゃいます萩乃さま、そのような危ないものはお納め願います。けがでもなされては一大事、おおい、赤垣、お嬢さまをわしの屋敷にお連れするのだ。」
がらっと縁側の障子が開き峯丹波の腹心赤垣主水が片手に麻縄の束、片手に手拭いのような布を何枚か持ち部屋に入ってきます
。萩乃がそちらのほうをちらっと見た刹那、丹波は懐剣を持った萩乃の右手首をつかむと、すごい力でその腕を捩じ上げて懐剣を取り落とさせてしまいます。
なおもあらがう萩乃の両手を無理やり背後に捩じ上げて押さえつけます。
「ああ、何をする。無礼な!痛い、ああ、助けて、源三郎さま。」
「赤垣、今のうちに猿轡を噛ませろ。」
赤垣は縄束を畳の上に置き、懐から手拭いよりも少し小さめの布を取り出し、萩乃の両顎に手をかけて力を入れ、無理やり口を開けさせ布きれを口の中に詰め込もうとします。
萩乃は首を振って抵抗しますが、両手を背後に捩じ上げられ顎も強い力でつかまれていますので、到底かなう筈もありません。
口に詰めこんだ布きれを吐き出せないように手拭いを歯と歯の間に噛ませて、頬がくびれてしまうほどきつく猿轡を噛まされてしまいます。
「うう、くくく、うぐうぐう、ううう」
萩乃は、猿轡のため言葉にはなりませんが助けを呼ぼうとします。
「さあ、早いとこ縛り上げて駕籠に乗せて連れて行くんだ。」
先ほど畳の上に置いた麻縄の束を取り上げ、背後で重ね合わせた両手首を一つにして文庫結びの帯の上まで高々と持ち上げて縛り、さらに胸の乳房の上下を四、五巻きづつ縛って背後で手首を縛った縄に固く結びつけていわゆる高手小手に縛り上げてしまいます。
「最後の仕上げじゃ。ぐうの音も出ないようにしておけ。」
丹波が言うと、赤垣は持っていた手拭いよりも少し長めの白い布で、萩乃の口をふさぐように一巻き、そして鼻口も覆ってもう一巻きしてうなじのところで固く結ぶのです。
「ううう、くくう、うう。」三重に噛まされたあまりにも厳重な猿轡で萩乃はうめき声も出せないほどです。
丹波と赤垣は縛り上げた萩乃を軽々と抱き上げると、廊下から裏口へと運んでいきます。
そこには町駕籠が待っています。
駕籠に萩乃を押し込んで、駕籠から転げだせないように帯のあたりでさらに縄で背後の支柱に括り付けるのです。
「よし、駕籠屋早いとこ、わしの屋敷に運ぶのだ。もう源三郎を打ち取ったという知らせも届くことじゃろう。萩乃どのとは、左膳とかいう化けものを葬った後、わしと正式に祝言をあげて晴れて夫婦になろうぞ。それまでは大切な人質、逃げたりせぬようわしの屋敷に閉じ込めておいてやるわ。」
萩乃を乗せた駕籠は垂れを下して丹波の屋敷へと向かって行きます。
駕籠の中では萩乃が何とか縛しめを解こうと身悶えしますが、高手小手の厳しい縛しめは緩むどころかますます腕に食い込んでくるようです。
助けを呼ぼうとしても口の中に布きれを一杯詰め込まれたうえ、三重にも厳重な猿轡を噛まされていますので、うめき声がわずかに漏れるだけなのです。


この時、萩乃が丹波たちによってかどわかされていく様子を物陰から残らず見ていた者がいます。
下男の作造です。
作造は亡き道場主の司馬卜伝に長い間つかえ、萩乃も爺やといって慕っています。作造は見え隠れに駕籠のあとをついていきます。
丹波の屋敷に着くと、駕籠から降ろされた萩乃は縛られたまま離れの茶室に担ぎ込まれて閉じ込められたのを見届けて、一散に国境の峠に向かって駆けていったのです。

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新時代劇小説

投稿小説
このたび、鼻猿好男様より時代劇小説を頂きました。
次回から掲載致します。
昔の時代劇の名作を鼻猿好男様風にアレンジされた作品です。
そしてお馴染みのイラストを挿絵として頂いています。
小説とマッチした名画に仕上がっておられます。
お楽しみ下さい。
今日は、その中の1枚を先行アップです。
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