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ここは、自分のこだわりを書き綴った場にしたいと思ってます。小説はすべて私の頭の中の妄想・空想を書き綴っています。


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妖華昇香 その7

第7章

断続的に股間を嬲るものを止められ、昇天に執行猶予を与えられている清流院は目前で縛られてゆく幼馴染の少年、早乙女佑樹を悲しげな瞳で見つめる。
彼女と同様にスタッフから後ろ手に緊縛を受け、脚首まで縛られた佑樹はまるで簀巻きにされたように手もなく床に転がされる。
年頃の少年にはたまらない屈辱であろうことが想像に難くないだけに、桂はその心の痛みと彼を芸能界の陰謀に巻きこんだことへの罪悪感に苛まれ、褌轡を噛まされた美顔を憂いに変えているのだ。
しかし、当の佑樹は恐怖よりも屈辱よりも今日これまで見てきた清流院桂の痴態に、盛んな性欲を抑えきれない。
いや、勃起した股間を聴衆やスタッフ、何よりも桂に見られることさえも奇妙な快感を覚えているというのが正確だ。
「さあ、佑君とやら・・・あんたのスケベ心も見上げたもんだ 憧れのお姉ちゃんが素っ裸で緊縛されているところで自慢げに御挨拶するKY坊やと思っていたら、自分がパンツ一貫で縛られて惨めな姿を大女優をはじめ皆さんに鑑賞されているっていうのに今度はアソコがこんにちわしてるんだから」
さすがの佑樹も屈辱感に顔を真っ赤にした。
「フフフ、可愛いじゃなの 坊や、さあ、最後のお色直しと行こうかね」
高島は魔女めいた顔で佑樹の顔をぐっと引き寄せると、その頬を優しく撫でまわしながら、残酷な手つきで少年の口を上下に開く。
そして、黒いゴムゴールをねじ込んだのだ。

「これだ!これだよ! 求めていた清流院桂の表情! いや、これぞ究極の憐憫顔!! 澤崎淑子を演じるにふさわしい・・・ い、いいやッ、彼女を超える大女優かもしれん」
服部が綿密にカメラワークを指示する先には快楽と悲壮感を併せ持った、大女優清流院桂の轡顔が捕えられる。
女優としての美顔に、初めて私情がはさまった憂いの表情。
彼女の切れ長の瞳の先には緊縛を受け、自分と同じように轡を噛まされた幼馴染の少年の姿。
しかし、皮肉なことにその少年は桂がこの鬼才の一派の手に堕ち、いたぶられている姿に幼い性を弄ばれているのだ。
桂が性的快楽に咽べば、佑樹も溢れんばかりの性欲をこの場で披露させられる。
いわば二重の屈辱に女優は芸の肥しでは片付けられぬ、苦難を味わう羽目となったのだ。
一方、仰向けにされた佑樹が天井に向けてテントを張ったブリーフの先から、我慢汁を滴らせる。
桂の表情を恍惚の顔で見つめながら、恥ずかしげもなくヒクヒクとブリーフを亀頭が押し上げる…。

桂は股間の痺れに苛まれる中、祖父がつけてくれたという桂子の名の由来を考えていた。
カツラの花は風で花粉が運ばれる風媒花。
つまり十分に虫など、他者の援助を必要としない自立した植物だ。
桐山家という名家に生まれた以上、社会の中でだれの助けも借りず、己の力で凛とした道を切り開いて欲しいという願いが込められていると聞いた記憶がある。
その言葉に感銘を受け芸能界入りする際も「桂」という名を欲した。
しかし、伝え聞くところによると桂の木は軟質で変形し易く、故に加工も容易という。
桂はパンティにローターの摩擦による愛液がじゅわりと漏れ出る感触に失神しそうな快感を覚えながら思った。
自分は変質しやすい淫華だと。
それを心ならずも、鬼才服部照三一派によって開花、いや昇華させられたのだと。
緊縛、そして口にねじ込まれた褌轡によって・・・。
女優が幾重にも雫を滴らせながら、性感を絶頂まで高めた瞬間、佑樹少年はどろりとした夥しい量の液体がブリーフの中に広がるのを覚えた。
そして、口に噛まされたギャグボールの下で声なき声を絞り出した。
(桂お姉さんは名華だよ・・・)                         完



妖華昇香 その6

第6章

「佑君・・・」
すべてを諦めたような表情で、清流院桂、いや桐山桂子はブリーフ一貫で立ち尽くす佑樹を切れ長の瞳を曇らせることを合図に招き寄せた。
佑樹は後ろ手に縛められ、項垂れる憧れの美女に歩み寄ると勃起したブリーフのテントを気にしながら膝まづく。
「ご、ごめんなさい、お姉さん」
「あッ、いいのよ・・・」
13歳の少年が何を目的にここへ現れ、今どういう心境で、成長著しい肉体が自分を前にどう変化しているかも知りつくした、リードするような母性に満ちた表情だった。
「こんなことに巻き込んでごめんなさい いい? 佑君、お姉さんにお願いがあるの この布を・・・」
桂は膝もとに堕ちた布に視線を向ける。
それは先ほどまで彼女の秘部を隠していたクラシックパンツだった。
「この布、じゃないでしょ ちゃんと‘名称’を言いなさい」
高島サオリが声を荒げる。桂が意を決したように囁くように言った。
「この・・・褌をお姉さんの口に噛ませて頂戴」
「どういうこと?」
「声を出したくないの お姉さんは・・・分かるでしょ? これからいやが上にも汚らしい声をあげるの その声が出ないように口を塞いでほしいの」
切れ長の瞳を潤ませながら、哀願する女優は続ける。
「猿轡、って知っているでしょ 誘拐された時に言葉が出ないように口を塞いじゃう・・・それをして欲しいの」
あまりにも憐憫な表情に佑樹は股間の疼きと同時に、恋を新たに認識するのだった。

桂は、先ほどまで秘部を隠していた面積の広い部分を丸めるように指示した。
「そう、そうやってボールを作ってそこをお姉さんの口に噛ませて・・・」
佑樹は言われるがままにコブを作る。
桂は催促するようにする瞳で合図する。
そっと緊縛を受けた桂を目前にし、いよいよ佑樹の心臓は激しく高鳴る。おずおずとした手つきで自由を奪われた憧れの女性を抱きよせる。
「ご、ごめんなさい、お姉さん・・・咥えて・・・」
不器用な仕草で丸めた褌を白い八重歯でくっとかみしめると、観念したように幼馴染の少年が己の口に、秘部を隠していた布を加えた。
涼しげな瞳を閉じ、長い睫毛を震わせる仕草に佑樹は珠玉の名品を自分の物にしきったような、言い知れない征服感を覚えるのだった。
本能的に少年はその征服を完全なものとすべく、彼女の甘い髪の匂いに興奮しながら褌の縄尻を首の上で固く結んだ。
均整の取れた両頬に褌が食い込み、美顔にラインを描いた。
少年は女優、清流院桂、そして憧れ続けた桐山桂子を蹂躙した征服感に酔いしれると同時に、服部監督が週刊誌で語っていた言葉の真意が理解できた。
悲鳴をあげる権利すら奪う、それこそが本当の蹂躙であり、拷問だと…。対照的に女優は全てを観念したように横たわるのだった。

スタジオ内に漏れ伝わる卑猥な音、それは大女優の女陰が快楽に濡れ、溺れる音でもある。
その場にいた男、いや高島サオリさえも息を呑むほどの妖艶な痴態。
後ろ手に縛めを受けた清流院桂は股間を中心に広がるジンジンとした痺れに自由を奪う縄を引きちぎらんばかりに二の腕を捩る。
美顔の眉間に皺が寄り、噛まされた褌をグイッと噛み込み、己が快楽におぼれつつあることを認めまいと必死に頭を振る。
くぐもった喘ぎが逆に女優であり、演技に慣れきったはずの桂の初濡れ場を引き立てる。白いパンティの中で大人の玩具が振動を続ける度、妖艶なまでに身悶え、床に己の肉体を這いずらせながら嬌声をあげる様に佑樹は釘付けになる。
これは演技なのか、それとも歓喜の声なのか…。
「初濡れ場とは思えんな…」
服部照三は惚れ惚れしたようにつぶやく。
「だが、違う・・・私の求めている清流院の顔は・・・猿轡は完璧・・・ だが、何かが、何かが足りない・・・」
「それを埋めて差し上げるわ」
傍らで助監督、高島サオリが、恍惚の表情で女優に見とれる少年、佑樹を残忍な顔で見つめた。

妖華昇香 その5

第5章

早乙女佑樹はトイレの個室で、カウパー液に塗れ、先走り液がじゅわりと吹き出す亀頭を見つめながら、午前中にその瞳に焼き付けた清流院桂の責め場を思い起こしていた。
そしてこれから自ら体験するであろうこの上ない、官能的な出来事に想いを馳せ、ペニスに溜まり溜まったマグマを吹き出したい願望に駆られるのだった。
何と、助監督の高島はプラチナチケットを持つゲストに清流院の肉体を一分間だけ、自由にいかようにも、どんな部位でも触れて構わないというお達しを出したのだ。
一般人には雲の上の存在である女優。
しかも、当代きっての大女優清流院桂の美しい肢体に触ることができるのだ。
あの万民を惹きつけてやまない美顔に、Dカップの乳房に、くびれた臍周りに、そして褌に隠された秘部に。
刑務所に食らいこむことになろうと、レイプしてでもその肉体を弄びたいという男はごまんといるであろう、礼嬢女優、佑樹もその幸運に彩華れるのだ。
しかし、彼にとって女優清流院は幼馴染のお姉さまだ。
演技の最中は女優はすべてを忘れると言われていて、観客席の佑樹のことなど目に入らないであろうが、その肉体を愉しもうと手を伸ばす少年の顔を見まがうわけはない。
彼女のこの上なくいやらしい濡れ場を見学に来たと知れば、清流院は、いや桂子はどんな眼差しで自分を見つめるであろうか。
軽蔑の視線を投げつけてくる桂子を思い起こし、それでも佑樹は勃起しきったペニスに血管が浮き立つのを抑えきれなかった。

スタジオでは既にファンと称した卑劣な狼たちが一人ずつ、まるで蜘蛛の巣に捕えられた美しき長の如く大の字に拷問セットに拘束された清流院桂に魔手を伸ばしている。
「あッ、あぁ~~…」
60代と思われる淫心を隠そうともしない初老の男性から丹念に首筋に舌を這わされ、豊かなバストを揉みしだかれた桂はためらいがちな、嫌悪の喘ぎをあげる。
「どうかね?清流院 私の仕事を受けたことを後悔しておるかね? こんなファンサービスまでしてもらって」
まさに公開で嬲り者にされる桂の様子を心底愉しむように眺める服部。
過去に女優が過酷な撮影に耐えきれず、命を絶ったという噂を思い返し、さもありなんとゲストたちは思っただろう。
しかし、誰一人としてそれを否定する目つきではない。
下は最年少の佑樹から、この初老の男まで10人の男全てが服部照三の陰謀に協力し、清流院桂というきっての美人女優をいたぶることを楽しみにしているのだ。
しかし、清流院桂はポーカーフェイスを装い、狼の愛撫を毛ほどにも感じぬ、という表情で言い返す」
「ま、まさか・・・私は女優よ 女優である以上、男性を魅了するのが仕事よ 時としては淫心を誘ってこその女優 すべては芸の肥しだわ」
「なかなか見上げた女優魂だ 君はさすがに他の女優とは格が違うよ しかし、スターでありいわば選民である君が一般ピープルの男たちの愛撫に歓喜の声をあげたなんて、体裁が悪かろう? 心は嫌がっても肉体は感じてしまう、それが女だろう 君が望むのならば口を猿轡で塞いであげようか フフフ」
服部はスタッフが床汚れの清掃に用いている細長い雑巾を指差す。
「け、結構よ! 感じているふりをする、それも女優の役目・・・ 心底私を熱くできるのならば、させて戴きたいくらいよ 感じている声、大いに結構よ 是非あげてみたいものだわッ」
勝気だが、どこか女としての悦びを未だ知りえぬのではないか、と思わせるような言葉は、根強く囁かれている清流院桂、処女説を思い起こさせ、ゲストたちをさらに興奮させるのだった。
自由を縄で封じられた女優の前に、彼女の肉体を弄ぶことのできるという特典を求めて一列に並んだゲストもすでに3人を残すのみだった。
皆、桂の肉体に触れた男たちは魂を抜かれたように恍惚の表情を浮かべている。
その最後尾で早乙女佑樹は後ろめたいような、一秒でも早く彼女の肉体を撫でまわしたいような複雑な心境でうつむいていた。
やがて・・・彼の目の前に四肢を繋がれた憧れの麗しき女性が現れた。

佑樹の幼さを残す黒目がちの瞳と、美顔を象徴する清流院桂の切れ長の瞳が交錯した。
「ゆ・・・佑君!? う、嘘、でしょ」
女優、清流院の強気な色は消え、佑樹にとって慣れ親しんだ桐山桂の優しさを含んだ顔、そして声音に変化した。
佑樹にはそれが嬉しかったが、桂は困惑と恥辱の表情が浮かんだ。それを察したのは高島が早かった。
「あら、ぼうや まさか、あんた、この大女優とステディな関係なの?」
「はい・・・子供のころからずっと知っています 優しくて勉強もよく教えてくれました 近所でも美人で評判のお姉さんでした」
佑樹は所詮少年だった。
いや、愚かなというのは酷かもしれない。恋い焦がれていたお焦がれの女性が女優という雲の上の人間となり、その彼女と公の場で再会する。
奇妙なまでにハイテンションになっていたのだ。
しかし、それが清流院桂を、そして佑樹自らを窮地に陥れることにあなろうとは予想だにできない。
「それはいい、高島君 この坊やに協力を仰がぬ手はないな」
桂の表情から完全に強気な表情が立ち消え、その芯の強さよりも幼馴染の少年を慮る母性が勝っていた。
「さあ、清流院! ここからは性的な責め苦に耐える澤崎淑子を演じてもらう そこで君には演技をするよりも本当に‘感じてもらう’という寸法だ」
「ど、どういうことです?」
ためらいの表情を見せる清流院、いや、桐山桂子に鬼才は残忍な笑みを浮かべる。
「決まっているだろう? ナマでオナニーをして頂く!」
「そ、そんな!! いや、厭ですわ」
初めて桂が女優の顔を棄て、若い娘のように恥じらいと怒りに満ちた表情を見せる。
「女優魂を忘れたのかね? 望み通り、君を心底嬲って絶頂を味あわせてあげようという趣向だ すべてが芸の肥し、だろう? それも幼馴染の少年に性の道しるべまで教えてあげられる女優なんてなかなかいないぞ フフフ」
人質を誇示するように佑樹を眺める服部に感情をあらわに桂が言葉で詰め寄る。
「こ、この子は関係ないでしょ!! この世界に巻き込まないでッ!!」
「さあ、撮影再開だ!! 清流院とこの坊やに準備をさせろ」
鬼才の指示で誰一人抗うことなく、「舞台」の準備が始まった。

「なかなかの美少年ね 細身で肌もきれいで」
高島サオリ助監督のもと、服部組の捕虜となった早乙女佑樹は命じられるがままに白いブリーフ一貫になった。
佑樹は恐怖と不安が入り混じった気分だったが、夢にまで見続けた清流院桂、そして桐山桂子の想像もできなかった姿を目の当たりにした白昼夢にまだ囚われたままだった。
朝から猛り続けたペニスからはカウパー液が滲み出て、ブリーフにシミが浮き出ているが、それを見られることに屈辱感を感じることすら忘れかけていた。
それは清流院桂という人科の雄ならば誰もが性欲を覚えて当然という奇妙な価値観を、この場にいたスタッフとゲストたちのすべてと共有していたからかもしれない。
その証拠に、清流院桂がスタッフの男たちから引っ立てられてくる姿を観た瞬間、公衆の面前であるにもかかわらず再び激しく勃起してしまった。
佑樹の憧れの人は少女チックな白いパンティに履き替えさせられ、後ろ手に縛られたまままるで本当の罪人のように屈強のスタッフ2人に連行されてきた。
高嶺の花のお姉さまが「かつらかつら」と呼び捨てにされ小突かれて、パンティ一貫で苛められる、そんな姿に少年の嗜虐心は理性を失ったのだ。
「桂の準備ができました」
男たちが監督に報告する。
そこで屈辱に項垂れる清流院桂の姿を目にしたゲストたちがざわつき始める。パンティに隠された秘部が奇妙に膨らんでいるのだ。
「別に、清流院桂はミスターレディだったわけではないんですよ」
スタッフたちからも、サディスティックな失笑が漏れる。
桂はパンティの下に小型のローターを挿入されたのだ。
「ここからは恥辱的な性拷問に耐える澤崎の姿を好演するわけだが、さすがにアソコは撮影できんからね 桂のイキ顔だけを撮影させてもらうわけだが、勝気な地顔を出されては台無しだ そこで坊やに協力してもらって憐憫な表情を見せてもらおうという寸法さ 高島君、準備はいいかね」
「ゆ、佑君に・・・何をするつもり?」
憔悴しきった表情で桂が問う。
「フフフ、今にわかるわ でもその前に・・・」
高島サオリは長い美脚を崩すように座り込んで項垂れる桂に何かを耳打ちした。
「いいわね、坊やにお願いしなさい」
あるものを桂の膝もとに投げつけた―――。



妖華昇香 その4

第4章


 ここ梅竹撮影所大スタジオは、奇妙な熱気と、ピリリと張りつめた空気、そして若く美しい女性が放つ、いわば淫気に満ちあふれていた。
プラチナチケットを握りしめた佑樹は約束通り、『乱華』撮影現場に通された。
話題の名女優が裸をさらすというのに年齢指定すらされない服部監督の権力の魔城でもあるこのスタジオ。
昨日まで期末試験に臨んでいた彼にとっては今日が初めての見学になる。
文字通り夢にまで見た憧れの女の濡れ場だというのに、見逃してしまった数日間のことを思うと、胸が引き裂かれるような悔しさがこみあげてくる。
しかし、スタジオ内に入り、物々しい雰囲気の中、昭和初期の特高警察取り調べ室が再現されたセットの中に、囚われた美女の姿を目の当たりにした佑樹はすべてを忘れ、言葉を失った。
そこには木製の柱に後ろ手に縛めを受け、露出した豊かなバストを上下で挟み込まれるように縄をかけられ、絶望したように項垂れる一人の女。
そう、それは紛れもなく清流院桂だった。
「桂子・・・お姉さん・・・」
おもわず、佑樹はつぶやいた。
憧れた女が他人の手で裸にされ、縛りあげられるという残酷な仕打ちを受ける姿。
血気盛んな少年ならば誰もが妄想しがちな光景だが、今佑樹の前には紛れもなく想い人、桐山桂があられもない姿を曝しているのだ。
乳首を拝むだけでも少年に与える茂喜は計り知れないが、しかも緊縛姿なのだ。
「それではシーン45 澤崎淑子、取り調べシーン再開します! 3・2・1・・・アクション!」
現場を仕切っているらしい、黒メガネの声とともに撮影が始まった。
その傍らで、己の指示で縄を打った美人女優を見つめる白髪の男が、かの服部照三だった。
項垂れる澤崎淑子を演じる清流院桂の顔面めがけて、冷水がぶちまけられる。
あぁ、と喘ぎながら特高警察官を演じる川谷敬三に黒髪を攫まれながら美顔を引き起こされるその姿はたまらなく嗜虐的だった。
しかも、である。
桂は上半身を裸にされているだけでなく、下半身にもほとんどの衣服を身につけてはいなかった。
着衣と言えば、わずかに股間を覆い隠す白い布、もっこ褌と呼ばれる、パンティをビキニにでもしたような秘部隠し一丁という信じられない痴態を曝している。
それが、顔面から滴る水滴で透けていき、やがて恥毛が浮かび上がるのを観た瞬間、佑樹は見てはならぬ、それでいてこの世で最もいやらしいものを目の当たりにしたことを実感した。
「ええ加減に、転ばんかい!? 強情な小娘が」
「私は捕えられようと、投獄されようと、信条を曲げるつもりはありません」
桂の凛とした、やや鼻にかかった、それでいて澄んだ美声がスタジオに響く
「そうかぁ~? それならば、少しばかり痛い目に遭うぞ」
川谷演じる刑事が蝋燭立に火を近づける。
そしてその白く小さな松明を、縄で挟み込まれ上下につぶされた豊かな乳房の上にそそり立つ濃いピンク色の蕾を焙る様に上下左右に動かす。
「あッ、ああッ! ああぁぁぁ~~~ッ!!」
初めて聞く、恋心を抱く女、そして憧れの美人女優の悲鳴に佑樹の心臓が異常なほど高鳴り、全身が震えるのを抑えきれない。
「わ、私は・・・あきらめないわ・・・そして捨てない! 思想と信条、そして平和を愛する心をぉ~~ッ」
美顔を苦悶に歪め、緊縛を受けた乳房をフルフルと揺らし、美しい肢体を捩らせ、女のエロティズムをすべてを魅せつける迫真の演技。
ただの女優が演じたのであれば、間違いなくVシネマ同然の官能作品になり下がりかねない演出だが、清流院の女優、いや女としての格がそれを妨げ、むしろ故人となった澤崎本人の神格化にもつながるような艶姿と言っても良かった。
桂が拷問に美姿を歪ませ、悲鳴をあげるたびに、スタジオ内を行きかう男性スタッフは股間を隠すように前のめりに歩き、ゲスト観客の佑樹達も食い入る様にその光景を見つめながら、性器が熱く猛るのをこらえられずにいた。

嬌声にも近い清流院桂の悲鳴は午後1時近くなっても、スタジオ内を淫微にこだましていた。
その場にいる数十人単位の男性の股間をくまなく刺激し、魅了しきった清流院の演技だが、すでに4時間以上にも及ぶ拷問シーンに服部監督はいつまでもOKを出さない。
SM用の火傷防止用の蝋燭とはいえ、桂の乳房には赤い痕が残り、食い込んだ縄が柔肌を剥いていたが、その様子も清流院桂の屈強な女優魂を演出する小道具になっていた。
「清流院! おまえは歴史認識ができているのか? 澤崎は暗い昭和の陰部に真正面から逆らった女だ 今のお前の己に酔いつぶれたような演技など、澤崎に失礼だ」
面前で罵倒された桂は、屈辱的な緊縛を受けたままの姿でキッと服部を睨む。
「私も、故人に対しては崇敬の念を抱いてやまぬ一人です でもこれは映画よ 私が演じる以上、澤崎は清流院桂のやり方で演じるのが筋じゃありませんの? それを引き出すのが監督さんの務めじゃなくて!?」
理路整然とした言葉を放つ美人女優の姿に、またしても多くの魅せられ、そして畏敬の念を抱かせられた。
桂には裸という無防備な姿であろうと、縄を打たれていようと他者を寄せ付けない気高さがあるのだ。
それは彼女の人間的な芯の強さと、プライドの高さの表れでもある。
心優しいお嬢さまの姿しか知らなかった佑樹は、彼女が東大在学中に女優を志し、家名を穢すとの大反対に遭いながらも押し切ったという噂話を思い出し納得するのだった。
「どうも、桂さんは苦労を知らずに大きくなりすぎたんじゃないの? 少し精神修養が必要だわ」
そう言って服部の傍らで妖しく微笑むのは助監督の高島サオリだった。
服部の右腕として彼の作品には必ず名を連ね、斬新な構想を持ち作品を昇華させると評判の人物だった。
「桂さん、あなたに特訓を用意したわ 私がたっぷり仕込んであげる フフフ・・・」
細面の狐のような瞳が光るのを見て佑樹は胸騒ぎを覚えた。
いや彼だけでない、スタジオ全体が一つの大きな共同体として一つの陰謀を成し遂げることに加担し始めた瞬間だった。

妖華昇香 その3

第3章

翌日、早乙女佑樹は授業を終えると、昨日手にした念願の切符に思いを致しながら帰路に就いた。
少年の住まいは目黒区の洗足に在った。
高級住宅街として知られ、皇太子妃の実家もあることで有名だ。
彼の家はTV局の番組製作会社に勤務する父親がこの地に住まいを構え20年になる。
近隣には地味だが、それでいて富裕層と呼ばれる人々が家主であろうことは疑いようのない住宅が立ち並ぶ。
早乙女家の斜め向かいの豪邸もまさにそうだった。
ホワイトのコンクリート製の瀟洒なデザイン。
数100坪はあろうかという敷地面積。
控えめだが、威厳を保つように怜悧な文字で「桐山」とある。
その家の前を通り過ぎる時、佑樹はしばし立ち止まり2階の一室を見上げ、かつてその部屋の住人だった幼少期に淡い想いを寄せたある女性に想いを馳せる。
とその時、静かなエンジン音とともに黒塗りの公用車が停止した。
重厚感のある音とともにドアが開き、黒いパンプスを履いた脚が2本揃えられすっと地面を踏む。
昨日今日身につけたとは思えないさりげなくも気品のある立ち居振る舞いで姿を見せたのは168センチはあろうかという長身の美女だ。
秋口には少々、薄着のブラウスにグレーのスラックスというシンプルな装いだが、ブラウスの下で大きな乳房がユサリと震える。
健康美あふれる長い美脚は内股気味に、それでいて自信に満ちた彼女の信条を思わせるかのようにしっかりとした足取で地面に立っていた。
ボーイッシュなショートカットに黒いサングラス。
英国人を思わせる様に通った鼻筋は隠しようもなく目立つ。
その美女は佑樹の姿を認めると、まあ、という驚きにも似た笑みを浮かべ、サングラスを外した。
「まァッ 佑君!佑君ね! 久しぶりねぇ… こんなに背も伸びて」
美女は懐かしそうに感嘆のセリフを述べると、涼しげな瞳を細め少年に歩み寄る。
幼少期から変わらぬ呼び方で名前を口にされた照れ隠しに、佑樹は視線をそらしながらペコリと頭を下げる。
「桂子・・・さん お久しぶり、です・・・」
「うふふ、桂子姉さん、でいいのよ でも、佑君に逢うなんて何年ぶりかしら わぁ、背も伸びたわね、お姉さんも抜かれそう・・・ もう中学生よね? おじ様とおば様はお元気?」
桂子さんと呼ばれた女性は、懐かしげに矢継ぎ早に質問を投げかける。
(桂子姉さんは変わっていないな)
佑樹はこの聡明で快活な女性が、この桐山家に暮らしていたころに想いを馳せる。
桐山桂子は3年前までこの家で暮らす、洗足界隈でも評判の美女だった。
名士として知られる桐山家の御令嬢らしく頭脳明晰で文武両道に長け、名門女子校時代からボランティア活動に努めるなど評判の才女で、佑樹もその姿を見かけるたびに胸を熱くしていた。
早乙女家とは比較にならぬほどの名家の令嬢の彼女だが、気さくに佑樹一家に接してくれたものだ。
小学4年の夏、佑樹の勉強嫌いを憂いた母が、彼女に算数の家庭教師を依頼したことがある。性に目覚める直前の少年の瞳には憧れの名門女子大生の聡明で優しげな桂子の美姿は女神にも例えられるほど鮮烈な印象を残した。
特に佑樹はある出来事を忘れられない。
几帳面な性格に反して、字の書き順を間違う彼に正しい道しるべを教授しようとした時のことだ。
桂子は佑樹の右手に自らの白く細い指をそっと添えると、胸をときめかす少年を導くように「心」の文字をなぞったのだ。
まるで‘今の貴方の気持ちこそ、恋心なのよ‘とでもいう様に。
自分の手の甲に伝わる、ひやりとしたそれでいて母性を多分に感じさせる彼女の温もりに佑樹は文字通り「恋」という、人間だけが持つ心を教えられたのだった。
「桂子・・・さんは・・・どうしてここへ?」
今は渋谷の松濤にマンションを購入し、一人住まいの彼女が実家へ戻った理由を尋ねた。仕事を始めて以来、実家には寄り付きませんわ、と彼女の母が話していたことを家族から聞いたことを思い出したためだ。
「今度、長期のお仕事が入ったの・・・年内は両親の顔も見られなくなるでしょうから、年始の挨拶も兼ねてやってきたわけ」
桂子は聡明そうな美顔を微笑ませ、小首をかしげて弟のように可愛がった少年を見つめる。
「うちの両親も、親不孝な一人娘をもって寂しがっていますから、佑君も見かけたら声をかけてあげて」
桂子が今の仕事に就く際、両親は無論、官僚や名士揃いの親類縁者から大反対に遭ったのだ。
しかし、己の意思を貫徹するプロ意識と、そのことを年下の少年にユーモラスに語れる明晰な頭脳に佑樹は魅せられるのだった。

微笑しながら手を振り、壮言な門構えの邸宅に消えた憧れの女性の姿を思い出しながら、佑樹はベッドの中で猛り立つ性器を鎮める様にうつ伏せになった。
初めての夢精の時も、また自慰行為もその妄想にいたのは桐山桂子だった。
全裸の桂子が自分に向って豊かな乳房を揺らし駆けてくる。
そんな夢だけで、性に目覚めたペニスは限りない膨張を続け、やがて限界に達し、白濁とした白い液体を噴出する。
だが、いつの日からか憧れの桂子が男たちから小突きまわされ罵倒され、やがては辱められる、そんな嗜虐的な妄想が彼を虜にしはじめた。
妖しげな禁断の興奮と、羨望そして嫉妬。
少年が抱き続けた複雑な欲望は近日、現実のものとなる。
なぜならば、桂子の職業は「女優」だからだ。
己の性欲を我慢しきれなくなった佑樹は机の上に置かれたその女優の写真集を食い入るように見つめると白いブリーフの放尿口からペニスを取り出した。
カウパー液に塗れた亀頭をゆっくりと扱きながら、佑樹はつぶやいた。
「桂子・・・お姉さん・・・」
桐山桂子とは女優である彼女にとっては浮世をしのぶ仮の名だ。
そう、彼女の真の名は清流院桂―――。

海綿体が充血を帯び、オーガズムに達しそうになった己の下腹部の至福の時間を少しでも先送りしたい衝動に駆られながら、佑樹は桂子の先ほどの言葉を思い返す。
彼女の言う「お仕事」とは言うまでもなく、服部作品の『乱華』への出演に他ならない。
名家の令嬢の彼女は間違いなく濡れ場を演じ、その対面を穢すことになるのだ。
そのことも、少年の嗜虐心を大いに掻き立てた。
憧れの近所のマドンナ桐山桂、そして高値で手の届きようもない美人女優という名華である清流院桂の苦悶の表情を浮かべる姿を想像した瞬間、佑樹の性器は限界を迎えるのだった。


妖華昇香 その2

第2章
本来であれば、如何わしい噂の絶えない、服部作品になど出演する筈のなかった桂だが、芸能界の力関係は彼女の血筋の及ばぬところらしく、特に映画界で絶大な権威を誇る服部のかねてからの要望を拒みきれなくなった、というのが大方の見方だった。
特に桂は大手プロダクションには所属せず、自ら社長を務める事務所では芸能界パワーバランスの中で翻弄されてしまったのだろうというのが、マスメディアの見解だった。
ともあれ、昭和の大女優は名前も知らなかった平成生まれの佑樹だが、嗜虐性の高い服部作品をひっそりとDVDで観賞しては性欲を発散させていた彼にとって清流院桂の抜擢は異常な悦びを喚起させる事件だった。
書店の18禁コーナーで店員の目も気にせず、震える手で週刊紙に書かれた扇情的な服部監督のインタビューを佑樹は忘れることができない。

―――清流院桂…あれだけの女優はいないよね いや、女優というより全国の大和撫子の中でも彼女ほどの女はいないよ 美貌と言い、知性と言い、育ちと言いね ああいう女を昭和の大女優に重ね合わせて、己の信条と引き換えに肉体を責め苛まれるシーンを撮影できるんだから僕は幸せ者だよね

その一文を読んだとき、佑樹はこれまでのオナニーでは味わった経験のない興奮と、言い知れない嫉妬を覚えたものだ。
あの清流院桂が理不尽な暴力にさらされるシーンを観ることができるという性的な悦び、その一方で永遠の処女とも言われる清純派女優を自分の妄想一つで性的趣向のままに好きなように撮影できることへの羨望の感情が少年の胸を締め付けるのだ。そんな、佑樹の心を弄ぶように記事は続いた。

―――緊縛?むろん縛りますよ、清流院の肉体を! 今回の映画は三部作、うち第二部はすべて投獄された女優の生活を描きます ありとあらゆる辱めを受け、それでも耐え続ける信念の女優を演じてもらうわけですから、SM張りの緊縛は当然アリでしょ

清純派のイメージが穢れるのでは、という質問にはこう答えている。

―――清純なイメージ? そんなものは虚像でしかない そんな彼女のイメージを徹底的に突き崩しますよ 今回、清流院には映画界ではタブー同然のハードな濡れ場を演じてもらいます いや、濡れ場なんて言う生易しものじゃなく、凄まじくも淫微な人格を踏みにじられるほどの性的な辱めを受ける彼女の姿を余すところなく映し出します そんな撮影に耐えられたとき彼女も真の名花として邦画界に名を刻むことになるでしょうな

桂はヌードをさらすのか?
―――皆さんが一番知りたいのはそこでしょ(笑) あの時代、官憲に捕まれば、当然そういう格好はさせられますよねえ

その一文を読んだ佑樹は本を片手に、公衆の面前にもかかわらず勃起するのを抑えられなかった。清純派女優が、それも血筋も頭も一級品の清流院桂が裸にされるのだ、という事実は性欲の盛んな少年にとってはこの上ない衝撃だ。

撮影はハードなものになるのかという質問については

―――当然です 清流院には本格的に悲鳴を上げてもらうことになります 昭和の大女優が受けた責め苦を、自分の肉体でも味わってみてその辛さを骨の髄まで理解させてあげますよ 苦悶の表情で身悶え、悲痛の叫びをあげる清流院の姿も今回の映画の見所ですな 

稀代のサディスト監督の面目躍如と言わんばかりの言葉が誌上に踊る。
そしてその最後の言葉に佑樹は異常な興奮と好奇心を覚えたものだ。

―――まあ、喘いだり悲鳴をあげる権利すら蹂躙するのが究極の拷問ですが、ね

その言葉の真意は佑樹には理解できなかったが、誌面は成人誌らしい文面で結ばれていた。

―――稀代のカリスマによってこれまで穢されることのなかった清純派、清流院桂の肉体が毒牙にさらされる日はもう間近だ 鬼才に縄を打たれ、淫微な責め苦に歪む平成の妖精の美貌と美乳に貴方の股間は耐えられるか?

嗜虐的な性欲を持つ少年がそうであるとおり、世間の関心も映画そのものよりも一人のマドンナ女優がサディストによってどんないたぶりを受けるのか、という一点に注がれていた。

佑樹はため息をつきながら、写真集のページを操る。
そして、この写真集のどこかに挟み込まれているかもしれない一枚のチケットを探してゆく。
印刷されている女優の美貌に、その存在を忘れかけていた少年だが、彼の目的の半分はそのチケットを手に入れることにあったといっても過言ではない。
梅竹映画社の子会社、禁断社が発行している清流院桂写真集『名華』。
高額かつ、300部という入手すら困難なこの写真集を購入出来た者の中から、さらに10名だけに許された信じられない特権。
それは映画『乱華』の撮影現場への見学招待状だ。
しかもクランクアップ後、撮影開始予定日以降ならばいつでも練馬区にある梅竹撮影所に入場が可能という清流院ファン垂涎のアイテムと言っても過言ではない。
撮影現場で見聞きしたことを口外しないことを条件に、当代きっての清純派美女の淫微な初濡れ場を見学できる、いわばプラチナチケット。
この写真集の購入者の大半はそのチケット目当てであることは想像に難くなかった。
現にネット上では既に『名華』の値段は跳ね上がり、チケットが封入されているとも分からない未開封の商品に120万円のプレミアが付いていたのを思い出し、佑樹は半ばあきらめたようにため息をついた。
桂がやや挑みかけるように微笑み、清楚な素顔をかなぐり捨てるような挑発的な笑みを浮かべるアップの写真、これがこの写真集の最終ページだった。
そこにあとがき代わりに記された【今、この時代をともに、この世界を生きるあなたへ】と題された達筆な彼女のメッセージを眺めながら、佑樹はこの目で清流院桂が穢される姿を拝みたいという願望が夢と儚く消えたことを実感した。
だが、その時だ。落胆した彼の手に握られた写真集の奥付け部分から、シルバーの光り輝くカードが抜け落ちた。手にして見ると、《平成に現れた妖精の宴への御招待券》と流麗な印字がある。そう、それは紛れもなく少年が求めていたプラチナチケットだった。佑樹は異常な性的興奮を募らせながらも、感激でその身を震わせた。そして写真集を抱きしめるとこうつぶやいた。
「嬉しいよ・・・桂子姉さん」

妖華昇香 その1

第一章

早乙女佑樹は自室に戻ると、郵送されてきたばかりの小包みの包装を破った。
震える手でつかみだしたのはある女優の写真集だ。
タイトルは『名華』とある。
『平成の世に生まれし、最後の清純派美人女優―――』
ビニールに包まれた写真集のサブタイトルを目にしただけで、佑樹の鼓動はさらに高まる。
現代では希少になりつつある、瓜実型の顔立ちに切れ長の瞳。
準和風の美貌にはやや不似合な通った鼻筋。
左頬に笑窪を作りながら、まるで佑樹を見つめる様に微笑む女優の写真を目にしただけで13歳の少年は胸を焦がすような想いを抱かされるのだ。
中学生の少年には高額すぎるともいえる30,840円の写真集は、限定300冊しか出版されず、超がつくプレミア希少本になることは間違えないだろう。
どのページに掲載された彼女の写真も美しかった。
ある時は和服で清楚に、ある時は黒蝶をあしらったドレスで妖艶に…。
気品と知性を併せ持ち、平成最後の清純派、そして最高の美人女優の魅力を余すことなく、映し出した名写真集だと少年は実感した。
しかし、彼が多数の応募から洩れることを恐れながらも、予約受付と同時に祈るような思いでこの写真集を入手しようと思った理由はこの写真集だけが目的ではなかった。
それにはこの女優との接点を持つことができる信じられない「特典」が付属しているためだった。

その女優、清流院桂(せいりゅういんかつら)は23歳。経団連会長を祖父に、そして総理補佐官まで務める財務官僚の父をもち、自らも東京大学卒という華麗な経歴を持つ美人女優だ。
大学在学中に、巨匠と言われた山川洋三監督が渾身の力作として送り出した昭和の懐古的作品『東京ストーリー』で、老親を気遣う心優しき良家の娘を好演して人気が爆発。
その後も、著名な監督や脚本家に気に入られ、昨年の暮れには3度目の山川作品でヒロインを務め「主演女優賞」を受賞するなど、たった3年のうちに日本を代表する大女優に上り詰めた感もある。
政府が主催する各種のパーティにも姿を現し、皇族主催の園遊会にも招かれ、すでに23歳にして女優の域を超え日本を代表する文化人の仲間入りすら果たさん勢いだ。
清流院の特徴は、財界の御令嬢という血筋の良さもあり、作品を選ぶことにあった。
著名な監督を好むことはもちろんだが、己のポリシーや思想信条に合致しない作品への出演は頑なに断っていた。
むろんバラエティや私生活を披露するような番組には姿を見せず、平成の芸能界には珍しい硬派な女優としても知られている。
その一貫した姿勢、そして対照的に演技で見せる優しさや柔和な表情が老若男女問わず支持され、年配層からは「理想の嫁」あるいは「理想の娘」と持て囃されている。
逆に自ら事務所の社長を務めるというマルチな才能を持つ現代的な女優像は若年層にも受け入れられ、2年連続で「私の愛する女優」のナンバー1にも輝いた。
清流院という源氏名のような姓も、また桂というやや古風な名も、保守的な美貌と斬新なスタイルを併せ持つ彼女には自然に感じられしまうのだ。

その清流院桂にまつわる「事件」が起きたのは4か月前のことだ。
週刊誌の見出しや、スポーツ紙の一面、ネットに衝撃的な言葉が躍った。
「清純派の妖精 清流院桂 全裸緊縛!!」
「桂、衝撃の初濡れ場、初責め場!! 平成最後の清純派もついに年貢の納め時!!」
「永遠の処女、清流院のDカップ乳房が縄に歪む!!」
征服欲を持つ男を刺激する扇情的な言葉の数々に、性にとっくに目覚め、かねてから嗜虐的な性的欲望を持つ佑樹も食い入る様に各種メディアを見つめたことは言うまでもない。
それらで報じられた内容はそんな少年の心をかき乱してやまないものだった。
名門映画製作会社の梅竹がこの度、昭和の名女優と言われた澤崎淑子の没後20年を記念し、彼女の生涯を映画化することを発表したのだ。
同社の威信をかけた製作費何十億という、その作品のメガホンを採り、脚本まで手掛けるのが邦画界の鬼才と異名を持つ服部照三だ。
その独創的なストーリーと、斬新なカメラアングルは既存の映画の枠組みを打ち壊し、新しい邦画界の担い手と称賛する声が止まないカリスマ監督だ。
その一方で服部には常に性的スキャンダラスな噂が絶えない。
それは彼の作風からも窺い知れることで、シリアスな社会性の高い作風を扱いながらも、そのほとんどの作品に女性の凌辱シーンや暴行シーンが織り交ぜられ、その過激な描写には賛否両論がある。
そして、撮影現場でも彼の役者に対する要求は厳しく、過去に二度ほど主演した女優が自ら命を絶ちをするという事件も起きている。
2人ともまだ若い売れ始めの女優だったが、自殺の理由は失恋とも、芸能界に疲れ果てた故とも言われている。
しかし、その背景にはあまりにえげつない凌辱シーンを要求され、それに耐えきれなかったという説も根強く残っている。


そんな彼の新作『乱華』では、女優、澤崎淑子の生涯が赤裸々に映像化されることになっている。
澤崎自身は名家の御令嬢として生まれながらも、第二次大戦中に反戦を訴え、逮捕経験もあるという異色の女傑だ。
特高警察に逮捕され、凄まじい拷問にかけられても「転向」しなかったという過去はあまりにも有名だった。
そこには無論、権力の手中に堕ちた美女が受ける宿命「性的拷問」があったことは想像に難くない。
今回、服部監督はその投獄されても屈しなかった女優魂を描ききることを宣言した。
こういうと聞こえは良いが、彼の過去から穿った見方がマスコミを席巻したのは言うまでもない。
また思想信条にかこつけて女優をいたぶる作品を撮影するつもりだ、という関係者の声も聞こる中、主演女優が発表された。
その名は当代きっての名女優、清流院桂―――。



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