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ここは、自分のこだわりを書き綴った場にしたいと思ってます。小説はすべて私の頭の中の妄想・空想を書き綴っています。


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鼻猿好男様投稿 明智小五郎対二十面相 その7

第7章

明智先生の言葉のとおり、隣の部屋の方では拳銃で撃ちあう音が聞こえてきます。
そして、警官隊に追われた二十面相の部下たちが応接間の方へも逃げ込んできたかと思うと、そのうちの一人はぽっかり開いた落とし穴に落ちてしまったのです。
「うぎゃああー、」
断末魔の悲鳴を上げてその男は串刺しになってしまいました。
その他の男たちは皆警官隊に取り押さえられて、次々に逮捕されていったのですが、二十面相だけは二階のベランダに逃げて行き、なんと上空に飛んできたヘリコプターから垂らされた縄梯子につかまって空を飛んで逃げおおせたのでした。
そして去り際に明智先生に向かって大声で、「おい明智、今回は俺の負けだ。しかしこれからも俺は、お前と文代の前に現れて悪の限りを尽くしてやる。覚悟しておけ。いずれまた会おう。」と叫んだのでした。
このヘリコプターを操縦していたのは、あのミモザのマスターである4号だったのです。

では最後に明智先生がどうして落とし穴のことを知っていたのか、また、運転手の斉藤さんはどこで1号と入れ替わったのか、明智先生や、斉藤さんから聞いた話から皆さんにお教えしましょう。

銀座で文代さんが明智先生に変装した二十面相と一緒に歩いているところを、われらが少年探偵団の団長である小林さんが偶然見かけたのです。
そこでそっと二人の跡をつけて行ったところ、ミモザという喫茶店に入っていったので、これは何か変だぞと思って小林さんは明智事務所へ近くの公衆電話から電話をしたのです。
そうすると事務所には明智先生ががちゃんといて、文代さんと一緒にいるのが偽物だとわかったのです。
そこで店の前に行って見張っていると、今度は自動車がやって来てなんと斉藤さんともう一人、黒眼鏡をかけてソフトをかぶった男が降りてきて店に入って行ったのです。
小林さんは車のトランクに潜り込んでどこへ行くのか見届けようと思って、得意の開錠術でトランクの鍵を開けたところ、なんと上着を脱がされて、縛り上げられ猿轡を噛まされた斉藤さんが押し込められていたのです。
すぐに斉藤さんの縄と猿轡を解き、斉藤さんはそこから離れて新宿の事務所まで電車で帰り、小林さんはトランクに隠れてアジトまで行ったのです。
斉藤さんの話を聞いた明智先生はいずれ斉藤さんに変装した男が迎えに来るものと考えて待っていたのです。

小林さんはアジトに着いて車から皆が降りた後、トランクから出て屋敷の状況をさっと眺め、見張りに見つからないようにして、屋敷の中を探ろうと木の間隠れに少しカーテンの隙間が空いている窓を覗き込むとそこが応接間だったのです。
そして床の落とし穴の仕掛けを見ることができたのでした。
明智事務所では、斉藤さんに変装した1号が明智先生を迎えに来たとき、応対に本物の斉藤さんが現れると驚いて逃げ出そうとしましたが、既に待ち構えていた警官に取り押さえられ逮捕されました。
そして、文代さんを旧牧村子爵のお屋敷に連れて行ったことも白状したのです。

旧牧村邸に駆け付けた明智先生と斉藤さんは、屋敷の近くで待っていた小林さんから応接間の状況を聞いたうえで玄関まで車で入って行きました。
二十面相の部下たちは1号が明智先生を連れてきたと思っていますので二人を応接間に案内したという訳です。
そして、警視庁の警官隊は二十面相の部下たちに気づかれないように屋敷から離れた場所で車を降り、小林さんの案内で門から忍び足で入って行き、見張りの部下たちの油断を見計らって背後から襲って気絶させ、静かに悟られないように屋敷の中へと入って行ったのでした。
そのあとの顛末は先に書いたとおりです。

この事件から1か月後には明智先生と文代さんの結婚式が行われ、私たち少年探偵団の仲間たちも出席させてもらいました。ウエディングドレス姿の文代さんは本当にきれいでした。
そしてこの後もわれらが明智先生と、怪人二十面相とは、様々な事件の度に対決していくことになるのです。
なお、明智先生と文代さんが結婚後、私と裕子の新婚時代ように寝間での縛りや猿轡プレーがあったのかどうか、私にはわかりません。


あとがき
性懲りもなく、日本の推理小説の元祖とも言われる江戸川乱歩先生の名作「少年探偵団」のぱくり小説を書いてしまいました。乱歩先生の原作にも明智探偵の奥さんとして文代という女性が登場しますが、華族の出身とかの記述はありません。
すべて筆者の考えた勝手なストーリーです。朝ドラの「花子とアン」の仲間由紀恵さんの柳原白蓮のお話が頭をよぎって、こんな設定にしてしまいました。
天国の乱歩先生、乱歩先生のファンのみなさん、どうかお許しください。
また、お話の最終段階で、どのような形で事件を解決するのか、色々頭をひねりましたが、結局安直な結末になってしまいました。本職の小説家ではない筆者にとっては、これ以上のことはとても考えがおよびませんでした。
いつものあまり上手とは言えない挿絵も、恥ずかしげもなく6枚も描いて掲載させてもらったことと合わせてお詫び申し上げます。

挿絵6

鼻猿好男様投稿 明智小五郎対二十面相 その6

6章

「さあ、これでよし。文代さん、これを見てごらん。」
文代さんを柱に縛り付け終えた晴彦は壁の方へ移動し、壁にあるスイッチのようなものを押します。
すると文代さんのすぐ前の床が一間四方より少し小さいくらいの大きさでぱたんと下へ落ち込みました。
そしてその下の方には、槍の切っ先のような物が何本も上を向いて突っ立っていて、そこに落ち込むと串刺しになってしまうという仕掛けなのです。
それを見たとき文代さんはぞーっとしました。
明智さんが私を助けようとしてこの落とし穴に落とされて殺されてしまう。そのことを知らせようとしてもこの厳重な猿轡では教えることができないのです。
「文代さん、見たか。これも屋敷を手に入れてから作った落とし穴だ。明智があんたを助けようと近づけば落ちるようになっている。このスイッチで一度閉めておいて、隣の部屋からのぞき窓を見ながらスイッチを押せば明智は串刺しになってしまうだろう。あんたはその一部始終を見物できるという訳さ。」
二十面相実は晴彦はなんと恐ろしいことをしようとしているのでしょう。
文代さんは恐ろしさのあまり言葉も出ません。
もちろん猿轡を噛まされていますので、声を出そうにも出すことはできないのですが。

「さあ、そろそろ1号が明智を連れてくるころだろう。俺たちは隣の部屋で1号が明智を案内してくるのを待つとしようか。文代さん、ほらあの鏡はマジックミラーといって、こちらからは普通の鏡だけど、反対側からはこちらを監視できるようになっているんだ。じゃあ文代さん、しばらくの間さようなら。」
晴彦と手下の2号は部屋を出て行ってしまいます。あとには柱に縛り付けられて身動きすることも、また厳重な猿轡のために声を出すこともできない文代さんが一人残されたのです。
文代さんはなんとか縄を解こうと身をよじらせたりしてみますが、固く柱に縛り付けられていますので、緩むどころかますますきつくなってくるようにも思われます。

廊下のほうでバタバタと足音が響いてきて部屋のドアが開きます。
文代さんがドアの方を見ると、そこには恋しい明智小五郎と運転手の斉藤さんが立っています。
明智先生は柱に縛り付けられている文代さんの姿を見て、「文代さん、なんとひどいことを、今助けてあげますからね。」と言いながら文代さんに近づこうとしてきます。
「ううううう、くくう、ううう」
文代さんはなんとか落とし穴のことを明智先生に知らせようとしますが、猿轡のためにむなしく呻き声が漏れるばかりです。
明智先生は躊躇することなくまっすぐ文代さんの方に近づいてきます。
「くくう、うううう」
猿轡の下で文代さんは呻き声をあげ、せめて自由の利く目で知らせようと、瞬きしながら足元の床を見たり明智先生の方を見たりを繰り返します。
明智先生が落とし穴の端に足をかけてもう一歩踏み出そうとしたその時です。床がパタンと下に落ち込むのと、明智先生がぱっとジャンプをして文代さんが縛られているすぐ横に降り立つのがほぼ同時でした。
「文代さん、もう大丈夫、今すぐ助けてあげますよ。」
明智先生はポケットからナイフを取り出すと文代さんを縛っている縄を次々に切って行き猿轡もはずして文代さんを抱きしめたのです。
「ああ、明智さん、きっと助けに来てくれると思っていました。でも、落とし穴に落ちてしまったらどうしようと、気が気じゃあなかったんです。そうだ、隣の部屋では二十面相が見張っているんです。それにその人は斉藤さんじゃあありません。二十面相の部下なんです。」
「文代さん、大丈夫ですよ。今警官隊がこの屋敷に突入しているんです。二十面相やその部下たちも逮捕されることでしょう。それにこの斉藤さんは本物ですよ。変装していた部下の男はもう警察に逮捕されて留置場に入っていますよ。その辺の説明はまたあとでゆっくりしてあげますから、この穴に落ちないようにソファーの後ろにでも隠れていてください。」

挿絵5

明智小五郎対二十面相 その5

第5章

「文代さん俺はあんたとお見合いをして一目で惚れてしまった。確かに俺はそれまで女遊びばかりしていて、女中にもはらませたりしていた。しかし、あんたと結婚できるなら心を入れ替えて真面目にやろうと決心していた。それなのにあんたの親父はおれのことを根掘り葉掘り調べ上げて結婚の約束を断ってきやがった。まだ結納ができてなかったので断りやすかったんだろう。しかし俺はあんたのことが忘れられなかった。」
「そうこうしている間に戦争に負けてしまい、華族制度も無くなってあんたのところが没落していくのをはたから見ていた。幸い俺のところは親父が貿易会社を経営していて、戦時中から戦後にかけては軍の物資を横流ししたりして、稼いでいたので金に困ることはなかった。それに闇物資や進駐軍からの横流しもやったりして、しこたま儲けていった。そんなときあんたの親父がくたばって、お屋敷が売りに出されたとき、親父に頼んで俺はお屋敷を手に入れたんだ。あんた方の生活が困らないように、相場の5割増しぐらいの値段を支払ったんだぜ。そのおかげであんたも女子大に進学できたのかも知れないけどね。」
晴彦は文代さんを見下ろしながらしゃべり続けます。

「あんたのことをあきらめられない俺は、あるとき新宿で愚連隊にあんたを襲わせ、適当なときにおれが飛び出して愚連隊を叩きのめしてあんたを助けてよりをもどそうと考えた。ところが俺が飛び出す寸前に明智の野郎が飛び出して俺が雇っていた連中を叩きのめしてしまいやがった。やっぱり金で雇われるような奴は頼りにならねえ。おかげであんたは明智と相愛になってしまった。トンビに油揚げをさらわれたってえのはこんなことを言うんだな。まったく馬鹿な話よ。俺はその後も株の売買で大儲けもしたし、色んな仲間とつきあった。そして変装術もマスターして怪人二十面相を名乗るようになり、金では買えないような美術品を盗んだりもした。そんな俺のやることを明智がことごとく邪魔をしだした。そのうえ、俺のあこがれのあんたまで奪ってしまった。そこで俺はあんたを誘拐して囮にし、明智を誘い出して葬ることを計画して実行に移したという訳だ。もうすぐさっきの1号が明智をだましてここへ連れてくることになっているんだ。」
晴彦の話を黙って聞いていた文代さんがここでやっと話をしました。
「明智さんを殺そうなんて、間違ってます。それに私を囮にしようなんて卑怯物のすることです。私を帰してください。この縄を解いてください。」
「何とでも言え。あんたの言うとおり俺は卑怯者よ。明智を葬った後で文代、お前を俺の妻にしてやる。楽しみに待っているんだな。おい、2号、入ってこい。お前、この女を柱に縛り付けろ。」
ドアが開いて2号と呼ばれた男が入ってきます。
黒眼鏡の男です。「おっと、その前にもう一度猿轡を噛まさせてもらうよ。明智に話しかけられないようにしとかないとな。」

二十面相の晴彦は文代さんの横に来ると顎をつかんで口を開かせ、さっきのハンカチを口の中へ詰め込むと、後ろから2号がさっきと同じように白い布を噛ませるように縛った後、もう一枚の白い布で鼻口を覆って猿轡を噛ませるのです。
「ううん、くくう、うううう」再び噛まされた厳重な猿轡の下で文代さんは呻きます。
「文代さん、さっき気が付いたと思うけど、以前あなたが住んでいたころ、この柱はなかったはずだ。この柱はあなたを縛り付けるために取り付けたのさ。ほれここに立ってもらおうか。」
晴彦は2号と一緒に文代さんを柱の前に連れて行って立たせるとその柱に文代さんを縛り付けます。
足首や脛のあたり、そして太腿のところはスカートの上から縛り付けて身動きできないようにしてしまったのです。


挿絵4

鼻猿好男様投稿 明智小五郎対二十面相 その4

第4章

20分くらい走ったでしょうか。車が止まって文代さんは車から降ろされます。車から降ろされても、縛った縄も猿轡も目隠しもそのままなので、2号が文代さんを肩車して屋敷の中へと運び込みます。
応接間のような部屋に運び込むと文代さんをソファーに座らせるように降ろします。
ここでやっと文代さんの目隠しと猿轡がはずされたのです。
二十面相は文代さんの口に押し込んであったハンカチを取り出すと、文代さんの唾液でぐしょぐしょになったハンカチを自分の鼻に押し当ててなにか匂いを嗅ぐような仕草をしているのです。
「お願いです縄も解いてください。」
文代さんは二十面相に訴えます。
しかし二十面相は「いいや、文代さん、縄は解きません。解いてもどうせすぐにまた縛る必要がありますので、そのままでしばらくの間しんぼうしてください。」
そう言って文代さんの前に立ち、部下の男たちに目配せをしますと、二人の男は部屋を出て行き文代さんと二十面相の二人だけが部屋に残されました。

「文代さん、あなたをひどい目に合わせて申し訳ありません。ところで、この部屋を見回してみて、何か気づくことはありませんか。」
文代さんは部屋を見回しました。そして気が付きました。
この部屋は以前文代さんが過ごしていたあのお屋敷の応接間なのです。
そういえば、今座らされているソファーも見覚えがあります。
そして壁にかかっている絵も昔からあったマチスの絵の複製のようです。
ただ部屋の隅に以前はなかった丸い柱が一本立っているのと、文代さんが座らせられている正面の壁に大きな鏡が付いている以外は昔のままなのでした。
「ああ、ここは私のおうちだわ。」
「気が付いたようですね。そうです、ここはあなたが育った牧村子爵家の応接間です。お母様がこのお屋敷を売りに出したときここを買ったのが私なのです。ではこのへんで私の正体も明らかに致しましょう。」
そう言うと二十面相は自分の顎のあたりに手をかけると、顔の皮をだんだんとはがしていきます。
その下から現れた顔を見た文代さんは「あっ、あなたは三木本晴彦さん、あなたがこの屋敷を買われたのですか。でも何故、私をこんな目にあわせるのですか。」
その男は文代さんが以前女学校時代にお見合いをした相手の三木本男爵家の次男晴彦だったのです。
文代さんは晴彦とお見合いをして、結婚が決まりかかっていたのですが、お父様が晴彦のことを調査した結果、晴彦はお金で徴兵を逃れておきながら、女遊びを繰り返していて、三木本家の女中にも手を出して子供をはらませたこともあり、浮名が絶えないふしだらなことをしているという調査結果が出て、婚約解消になったということがあったのです。



挿絵3

鼻猿好男様投稿 明智小五郎対二十面相 その3

第3章

4号と呼ばれたマスターが文代さんの方へ近づいて来ます。
その手には麻縄の束を持っています。
「ああ、あなたたちは私をどうしようというのです。いや、いや。明智さん助けて。」
文代さんは席を立って入口の方へ行こうとしますが、明智に変装した二十面相に腕を捕まれて引き戻されたところを、4号が両手を後ろに捩じ上げて麻縄で縛り上げたうえ、胸の上下を二巻づつ締め上げて、いわゆる高手小手に厳重に縛られてしまいます。
「あれー、助けて、明智さん、助けて。」
文代さんは思い切り叫んで助けを呼ぼうとします。
「ふん、この店は外には声は聞こえやしないよ、さあ、私のアジトに案内してやるから、これでも食べといてもらおうか。」
二十面相は文代さんの口を開けさせると無理矢理ハンカチのような布きれを口一杯押し込みます。
そして、その布きれを吐き出せないように、長めの白い布を歯と歯の間に噛ませて頬がくびれるほどきつく縛ってうなじのところで固く結びます。
「ううう、くくう、うう、」
文代さんは呻き声を漏らします。
「念のためもう一枚仕上げの猿轡を噛ましておけよ。」
「へい、わかりました。」
4号はもう一枚の白い布で文代さんの口を覆って更に厳重に猿轡を噛ませてしまったのです。
挿絵1

そのときドアが開いて男が二人入ってきました。
「ボス、車を持って来ました。ほう、もうちゃんと荷造りが出来上がっていますな。このお嬢さんを例のところへご案内するんですね。」
その一人の顔を見て文代さんはびっくりしました。
明智事務所の運転手の斉藤さんが入ってきたのです。
もう一人の男は黒眼鏡をかけてソフトをかぶっています。
「ははは、驚いたようだな、文代さん。この男は私の部下の1号、見た通り変装の腕は私と比べてもそん色はない。これからあなたをアジトに案内した後、明智を迎えに行くことになっている。本当の斉藤という運転手は気絶して車のトランクに縛り上げて放り込んであるよ。さあ、1号と2号みんなでお嬢さんをご案内するんだ。」

麻縄で後ろ手に縛られたうえ厳重な猿轡を噛まされた文代さんは、男たちに引き立てられて車に乗せられます。
そのとき斉藤さんに変装した1号と呼ばれた男は手に拳銃を持っているのを文代さんは見ました。
二十面相と2号の間に座らせられ文代さんに、二十面相は「文代さん、これからアジトにご案内する間、目隠しをさせてもらうよ。」と言って文代さんに黒い布で目隠しをするのでした。

挿絵2

鼻猿好男様投稿 明智小五郎対二十面相 その2

第2章

その日文代さんはウエディングドレスの衣装合わせのために銀座にあるお店を訪れたあと、一人で有楽町の方へ歩いて帰るところでした。
文代さんが歩いていると、後ろから明智先生が声をかけてきたのです。
「あ、文代さん、よかったやっぱりここで待っていたかいがありました。
お母さんにお電話したらウエディングドレスの衣装合わせに行かれたと言われたので、多分この辺じゃあないかなと思って待っていたんですよ。どうです、この近くに僕の行きつけの喫茶店があるのでおいしいコーヒーを飲みながら、少しお話しませんか。」
「あら、明智さん、今日は予定が詰まっていて来られないということじゃあなかったのですか。」
「ええ、そうだったんですが急に依頼主から電話があって打ち合わせの予定がキャンセルになったもんですから、文代さんと銀座でコーヒーでも飲みながらこれからのことをお話ししたくなって待っていたんですよ。文代さん、すぐそこですからご案内しますよ。」
「わかりました。じゃあご一緒しますわ。」

明智先生と文代さんは、少し歩いて銀座の裏通りにあるミモザという喫茶店の前までやって来ました。
文代さんは「あら、明智さん、このお店閉店という札が出ていますわ。こんな時間なのにもう終わったのでしょうか。」
「文代さん、大丈夫です。このお店のマスターは雑多な客が来るのが嫌で、顔なじみの客だけを相手に営業しているんですよ。本当のお休みのときには休業中という札を出すようにしてるんですよ。」
「へえー、変わったお店ね。そんなことで営業できるのかしら。」
「文代さん、このお店のコーヒーはおいしいですよ。さあ入りましょう。」
明智先生と文代さんはミモザに入って行きました。
文代さんがお店の中を見回すと、カウンター席が8席ほどと、4人掛けのボックス席が二つだけの小さなお店で、お客は誰もいなくてカウンターの中にはマスターらしい男が一人立っています。
「あ、明智さん、いらっしゃい。おや、こちらのきれいなお嬢さんはどちらさまですか。紹介してくださいよ。」
「ああ、マスター、こちらは牧村文代さん、僕の婚約者だよ。来月結婚するんだ。これからも時々一緒に来るからね。」
「そうですか、この前来られた時に話されていたあの文代さんですか。やはり明智さんのお眼鏡にかなっただけあって美しいお嬢さんですね。これからも御贔屓をお願いしますよ。どうぞごゆっくり、うちのおいしいコーヒーをお飲みください。」
「じゃあマスター、マイルドブレンドを二つお願いしますよ。」「はい、わかりました。少々お待ちください。」

二人はボックス席に座ります。
「文代さん、今日お待ちしていたのは、結婚式もあとひと月と迫ってきましたので、今まで隠していた僕の秘密をお話ししたいと思ったからです。」
「え、明智さん、隠していた秘密ってなんなの。今までどうしておっしゃってくださらなかったの。どんな秘密があるのかしら。私には何でもお話してくださっていたのではないのかしら。」
「ええ、もちろんこれまで私のことは何でもお話してきました。今回お話することは、実は今、文代さんの目の前にいる私は明智小五郎ではないということなのです。いかがです、驚きましたか。」
「え、何とおっしゃったのですか。明智さん。私の目の前にいるのが明智さんではないというのは、いったいどういうことなのでしょうか。そしたら、あなたはいったい誰なのですか。」
「ははは、実はあなたを使って私の変装がどれだけ完璧にできているかを試してみたのですよ。文代さん、私の名前は、明智さんから聞いたことがあるかもしれませんが、怪人二十面相というのです。そうです、これまでも明智さんとは何度も対決をしています。私の変装を、明智さんの恋人であるあなたは見破ることができなかった。私はこの変装に自信を持つことができました。そして、私は明智小五郎に少々恨みごとを持っているので、あなたを人質にして、明智小五郎を葬り去ろうと考えています。実を言うとこのお店は私のお店です。マスターももちろん私の部下の一人で4号と呼んでいます。私は部下を名前ではなく1号、2号と呼んでいるのです。もうすぐ1号がやって来るはずです。文代さん、私の本当の正体はいずれ明かしますが、まずは私のアジトにご案内しましょう。おい4号、文代さんをお連れする準備をするんだ。」


鼻猿好男様投稿 明智小五郎対二十面相 その1

みじめな男のDID小説の文章にうんざりの方も多いことと存じます。
鼻猿好男様から正統派美少女DID小説を挿絵付きでいただきました。
皆様、気分を変えてお楽しみ下さいませ。

鼻猿好男様
いつも本当に素敵な作品をありがとうございます。
いろんな方の文章を読ませていただくと勉強になりますし、
想像が広がって次回の創作意欲にもなります。
深謝です。

第1章

私の名前は高杉健二、このお話も少年探偵団時代に起こった事件のことを書いてみました。
以前書いた「少年探偵団の思い出」は、私と妻の裕子が子供時代に経験した事件だったので、詳細に至るまで実体験として正確に書けたのですが、今回のお話は私が直接事件の渦中にいて体験したものではなく、明智先生やその奥さんの文代さん、事務所の運転手斉藤さん、団長の小林さんなどから聞いた話を思い出しながら書きましたので、事実と違うところもあるかもしれませんが、その点も頭に置いてお読みいただきたいと思います。

明智先生の奥さんの文代さんは、旧姓牧村といって、戦前は華族の牧村子爵家の令嬢だったのです。
しかし戦後華族制度はなくなり牧村家では、文代さんのお父さんである子爵が坊ちゃん育ちで事業を起こすような才覚もなく、地方の小作人からの献上米だけで生活していましたので、農地解放によって所有の土地を小作の人たちに払い下げてしまうと、たちまち大きな屋敷を維持することもできなくなってしまいました。
そんなときお父さんが風邪をこじらせて肺炎でなくなってしまい、軍人として満州に行っていたお兄さんもシベリアで病死されてしまったのです。
そこでお母さんは住み慣れたお屋敷を人手に渡して、その売ったお金で郊外の小金井にこじんまりした住宅を買い、文代さんと二人で移り住んだということです。

ここからは明智先生と文代さんの出会いをご紹介します。
それは昭和22年のことです。女子大の4年生だった文代さんが新宿の裏町で三人の愚連隊にからまれて危うく車に連れ込まれそうになった時に、丁度通りかかった明智先生がその愚連隊を叩きのめして文代さんを救ったのです。
それ以来明智先生と文代さんは、お互い思いを寄せるようになり、文代さんが大学を卒業してからは明智探偵事務所で勤めるようになり、半年も経たずに結婚の約束を取り交わしたのです。
そして明智先生と文代さんの結婚式があと一か月に迫ったころ、あの事件が起こったのです。
第2章

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