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ここは、自分のこだわりを書き綴った場にしたいと思ってます。小説はすべて私の頭の中の妄想・空想を書き綴っています。


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奇人四十面相緊縛の館 鉄仮面VS少年少女探偵団 第二幕:令嬢警視の巻

第九幕:猿轡っ子たちの大逆転劇!?

大ッ嫌いな蛇に迫られる恐怖のあまり、江戸川探偵団リーダー鴻池詩織嬢は本日三度目の失神です。幼くも女の子特有の色香を醸し出す詩織ちゃんの気絶貌はなかなか妖艶でした。轡玉が輝き、頬肉に食い込んだところが哀れさを醸し出します。細く綺麗な素足をちゃぷちゃぷと、失禁の滴が流れ落ちます。四十面相に捕まって以降、縛られっぱなしでお手洗いにもいかせてもらえないのですから、それも無理からぬこと。しかし、捕まりっぱなしなのは、傍らで繋がれている、桂子お姉様も一緒です。相変わらず蛇責めにさらされ、妖艶かつ憐憫な表情を浮かべながら、子供らしく拷問の恐怖に屈して、生理現象の欲求に負けてしまった詩織ちゃんを微かに羨まし気な瞳で見遣ります。下腹部をうねらせるように身悶え、まるで褌のようになったシルク地のパンティを陰部に食い込ませながら、排泄の欲求を堪えます。しかし、稀代の変態仮面はそんな乙女の願望にいち早く気が付いた様子で…。

「フフフ、可愛い警視さん。君もおしっこをしたいんだろう? 言いたくても言い出せないよねぇ、でもその轡玉を噛まされていなければ、君はそんな恥ずかしい台詞を止むにやまれず、そのお上品な御口から発していたのかもしれないねぇ」
「ンンッ、ンンンンッ!!」
言葉に誘発されたか、桂子はつま先立ちになって「もう堪忍してくださいッ」という表情で、四十面相に生理的欲求の許可を求めます。
「いいだろう、君をもっと長い時間捕えておくためには、少し要求を聞いてあげなくてはねぇ」
四十面相は、薫君を捕えてきた部下に命じます。
「江頭桂子の排泄を許すッ。お前が連れてゆくのだ。その代わり、後ろ手に縛りなおし、絶対に縄を解くな。そして…轡玉も外すな。…むふふ、貞操帯はお前が外せ。そして、放尿の間、その姿をしっかり監視しろッ」
なんと変態的な命令でしょうか。
「フフフ、桂子くん。我が部下に帝都警察の要人令嬢が、排泄を眺められるなんて最高じゃあないか。しかも、もう一つの欲求に濡れそぼった、もう一つの御口からも轡を取り出されるなんて滑稽だねぇ!!」
この男どこまで女の人をいたぶれば気が済むのでしょうか。

高手小手に縛られた純白パンティ一丁の桂子お姉様は、その縄尻を持たれたまま暗い廊下を歩かされます。ひたひたという素足の足音が妖しく廊下に溶け込んでいきます。歩を進めるたびに、卑猥な貞操帯が花豆をいたぶり、不覚にも貞淑な理性を喪失してしまいそうな快楽にハマりかける桂子。
「あがァ――ッ、あぁッ、あぁッ…」
轡玉を噛まされていなければ、もっと卑猥に喘いでしまっていたことは間違いありません。固く結びあわされた手首に荒縄が食い込む痛みも忘れ、コリコリに膨らんだ乳首を恥じらう事もせず、悶える桂子嬢。
(嗚呼、いや!! この後お手洗い場でわたくしは、この憎い四十面相の部下に、排せつするところを眺められるなんてぇ!! いいえ、そればかりか、乙女の大切な場所に埋められた物をこんな獣の手下に引き出されるなんて!! も、もう、死んだ方がましだわッ)
桂子お姉様は口内に感じる冷たく重い轡玉が無ければ、きっと自ら命を絶っていたことでしょう。ああ哀れ、桂子警視。怒りと欲求と悦楽に震える脚で排泄場にたどりついた、桂子嬢が観念しかかった様子で縄尻を持つ四十面相の配下を振り返ります。しかし、そこに立っていたのは、なんと。
「よく頑張ったね、桂君。でも帝都警察の大幹部令嬢が早々に捕まってしまうことはいただけないなぁ」
名探偵氏のご登場に、桂子はくぐもった驚愕の声を漏らすのでした。

正義の救出劇は二人の高校生コンビにももたらされました。二階堂警部はじめ、帝都警察の面々が四十面相を捕えに踏み込んだのです。
「もう逃げられないぞ、四十面相!!」
「うぬぅっ、またしても江戸川にしてやられたか!! だが憶えていろ!! 私はこれからも帝都を騒がし惑わし続けるぞ!! そして、幾多の至宝を盗み出し、美女たちを略奪し、恐怖と責苦のどん底に落とし続けるからそのつもりで、さらばだ!!」
繋がれたままの詩織と薫を残し、取り囲む警官隊を前に煙と化す四十面相でした。

助け出されたパンティ一丁の二人の令嬢と少年を前に、微笑む江戸川探偵。
「まぁ、せんせいったら酷いわ。二階堂さんが偽物だと知っていて、私たちをこの洋館に潜入させたんですか?」
詩織は小さなおっぱいを手で隠しつつ、可愛くほっぺを膨らませました。
「いやぁ、すまない、すまない詩織君。でもね、桂君が捕まった以上、君たち二人にも四十面相の虜になって欲しかったんだよ」
「どういうことですか、先生?」
薫君の疑問はもっともです。
「桂君は本物のチャイナマドンナの在処を知らない。そのことに四十面相が気付けば、用済みの桂君が処刑されてしまう危険があっただろう。だが、私の部下でカラクリを知る薫君と詩織君が一緒に捕まれば、どうあっても口を割るべく拷問に時間をかける。その間に、チャイナマドンナを帝都銀行の地下秘密保管庫に隠すこともできたからね」
「まぁ、酷い! 私たちがこんな目に遭わされているのに、ねぇ桂子さん?」
詩織が、大きな乳房をやはり手で覆い隠し、恥じらう様に立ち尽くす美人警視に同意を求めます。
「え、ええ…。でも、江戸川先生は助けて下さったんですもの。感謝しておりますわ」
と、つい先だってまでの高飛車なライバル心は消え失せたかのような淑女ぶりです。
(女は自分を命がけで守ってくれた男の方を愛するもの…。キャッ、桂子ったら、まさかこれが恋なの!?)
と美人警視は、完全に名探偵氏に心奪われつつあるのでした。

心奪われると言えば、薫君は今回の一件で虜となったガールフレンドの艶めかしさに、男心にくさびを打ち込まれたご様子で…。
(捕まって虐められている時の詩織ちゃんってなんであんなに可愛いんだろう?)
と、これまた別の方向に目覚めてしまったご様子で。思い出すだけで、ブリーフの膨らみがまたもや大きくなります。
「それにしても薫君…」
となにか言い出しかけた詩織ちゃんは、薫君の反応に赤面します。
「もう、いやらしいんだからッ!」
「ご、ごめん。それにしても詩織ちゃん、今回は四十面相にも江戸川先生にもヤラレッパナシだったね」
ごまかし気味に、取り繕う薫君。ですが、詩織ちゃんは澄ました貌で返します。
「そうでもない、かもしれないわよ」
と、詩織ちゃんは、首筋でワインレッドに光り輝く小さな首飾りを誇示しつつ、薫の耳元で囁きます。
「実はね、これが本物のチャイナマドンナ! 気が付かないなんて、江戸川先生も、四十面相もまだまだよね」
最期に嗤ったのは、今回も詩織ちゃんだったのかもしれません。 『完』

奇人四十面相緊縛の館 鉄仮面VS少年少女探偵団 第二幕:令嬢警視の巻

第八幕:世にも妖しい拷問 詩織、桂子、そして薫に三者三様の責め苦が…

「詩織責め」の名の如く、処女、いえ少女らしいパンティ一丁にされ、手首を縛められた無防備な美少女探偵助手は、柔肌に走る鞭の乾いた痛みに轡玉に押し殺された喘ぎを漏らし、育ちの良い端正な貌を激しく歪めます。
ピシ――ッ、パシ――ッ。鉄仮面の振り下ろす革鞭がうなります。
「うう―――ッ、んん―――ッ、くう―――ッ」
口内の鉄球を噛み締めつつ、喉の奥から悲痛の叫びにならぬ呻きを漏らします。痛みに打ち震える思春期の美少女の白い裸体が、残酷な拷問者をさらに狩り立てます。
(耐えるのよ、詩織。耐え忍ばなくっちゃッ)
どこまでも純粋で気丈、真っ直ぐな令嬢です。しかし、そこは貴族のお嬢様。15年間蝶よ花よと可愛がられてきたお嬢様にとってこれほどの苦痛は生まれて初めて味わう辛いものでした。五分間も責められるとすぐに意識が遠のき、自分の手首を縛った荒縄をすがるようにつかんだまま、カクンと項垂れてしまいました。華奢ですが、少女らしい穢れの無い美しい肉体には、残酷な鞭の痕がくっきり刻まれていました。
「はっはっは…この程度で意識を失われては困るのだよ、美少女探偵くん。君を虐め苛むのはこれからが本番なのだからね…」

ライオン像の口からご丁寧にも失神した詩織の黒髪に冷水が滴ります。
「はうッ…」
意識を取り戻した轡玉を噛みこんだ美貌が、喘ぎを漏らします。
「それにしても良い猿轡顔だねぇ。今まで数々の帝都令嬢を誘拐しては轡玉を噛まして責めてきたが、君ほど猿轡の掛け甲斐のある娘は初めてだね。清楚さと言い、好奇心旺盛な瞳と言い、拘束具が頬肉に食い込んだ時の憐憫さと言い、そしてやや生意気な抗弁をするところと言い、猿轡好き冥利に尽きるといったところだね」
この稀代の変質者はよほど詩織の事が気に入ってしまったようです。無論変質者的な意味で、です。
「そんな轡に歪んだ貌を見せられては、もう少し虐めてやりたくなるというものじゃあないか。もう一度気絶するまで、打ち据えてあげよう」
(ま、まだ私を鞭打つ気なんだわ)
覚悟を決めた詩織が、やがて襲い来る痛みを堪えるべく轡玉を噛み締めたその時でした。四十面相に何事かを報告する配下の男が…。
「ふん…それは面白いことになって来たねぇ」
四十面相は心底愉し気な嗤い声を仮面の下からたてるのでした。

「んんッ!?」
「アンッ!!」
詩織と桂お姉様が同時に驚きとあきらめにも似た呻きを轡玉の下から発しました。それもそのはず、その視線の先には、四十面相の部下に引っ立てられてきた薫君の姿があるのですから。虜の姫君二人同様、美少年探偵助手も白いブリーフ一貫の裸です。しかも口には「お揃い」の轡玉まで噛まされて…。これで帝都警察の令嬢幹部、江戸川探偵団のリーダー二人が揃って捕まり、下半身の大切なトコロを隠すだけの下着姿で縛られ、口まで塞がれ、まるで誘拐された幼児のように扱われることとなったのです…。

或る意味、この中で一番惨めな思いをしているのは薫君でしょう。誤解を恐れず言えば、女の人が悪者に捕まってしまうことは当然であり、恥ずかしいことではないかもしれません。古今東西、英雄譚や伝説では魅力的な女の人は皆、悪者の手に堕ち人質に取られるのが「お仕事」です。しかし薫君は男の子。女の子のように捕まるのは屈辱と言えるでしょう。しかも憧れのお姉様を救出すべく、このアジトに潜入し、ガールフレンドの詩織が危機に陥った際には必ず助けると約束したばかりです。そんな詩織と桂子の前に、彼女たちと同じ格好で引き据えられた気恥ずかしさとバツの悪さと言ったらありません。変質者、四十面相に思春期真っ盛りのオトコノコの自尊心を弄ばれた紅顔の美少年は虜の令嬢たちと目を合わせられず俯くだけでした。

ライオン像に繋がれた乙女二人が身悶え、合計四つの乳房が激しく揺れ、その女体が艶めかしく美しいラインを描きます。
「あッ、んんッ!! んんんッ!! んんんん―――ッ!!」
「ンンンン――――ッ!! アンンン――――ッ!!」
詩織と桂子への拷問が再開されたのです。しかし、今度の責めは、か弱いレディに苦痛ではなく恐怖を与えるものでした。素足になった二人の足元にそれぞれとぐろを巻くのは四十面相が密輸入した一mはあろうかという、アナコンダです。緑色の鮮やかな二匹の大蛇は、ペロペロと舌なめずりをしつつ、白い艶めかしい美脚を持つ美女と少女を威嚇する様に鎌首を上げます。帝都令嬢の二人は蛇が大嫌いです。
「ああぁぁ――――んんッ、はぁッ、むむうう――――ッ」
大きな瞳から涙を零しながら、怖がって発育途中の綺麗な裸の身体をまるでダンスさせるようにくねらせる詩織ちゃんです。
「くううううう~~~ッ…、あううぅぅ~~~ッ」
一方、成熟した瑞々しい肉体を持つ桂子お姉様は、大人の色香むんむんの恥じらう様な身悶えぶり。同じ虐められ方なれど、轡玉の下から漏れる声は可憐と妖艶「二者二様」で刺激的です。

ですが、受難は薫君も同じこと。蛇責めを受ける二人の姿を真正面の柱に据え付けられた薫君はまざまざと見せつけられることとなりました。
「どうかね、可愛いガールフレンドと憧れのお姉さんがいたぶられる姿は? なかなか君には刺激的だろう? どうだね、詩織君の無邪気な恐がり方は? 翻って、桂子警視の憐憫な態度はいかがかな、帝都警察の要人の高飛車な態度などもう微塵も持ち合わせていないご様子だ、ハハハハ!!」
虜令嬢のくぐもった喘ぎを心底愉しむ様子で、四十面相は縛られた薫の肩を叩きます。
「それにしても轡を噛まされた女の子というのは哀れなものだね。怖くとも泣きたくとも助けを求めたくとも、そして秘密を打ち明けたくともその声すら発することができないのだから。さぁ、さぁ、もっと怖がるがいい、帝都貴族のお嬢さん方よ」
催促する様に、薫の耳元で二人のレディを詰るのです。

轡玉を見事なまで見噛みこまされた詩織ちゃんの引き攣った瞳と、薫君の視線が絡み合います。これは最高に気まずいものでした。
『ごめんね、詩織ちゃん。助けてあげられなくて』
少年探偵助手は視線で謝ります。そこは優しい詩織ちゃんです。労わる様な瞳を向けてくれます。
『仕方ないわ、薫君…。相手は四十面相ですものね。私の方こそ、捕まってしまってごめんなさい。でも頑張って、宝石を守ってお姉様と一緒にここを脱出するチャンスを待ちましょう』
そんな健気な視線を向けてくるのです。しかし、そんな詩織ちゃんの瞳がある部分を観た瞬間、驚きに大きく見開かれました。それは、薫君の下腹部…。
『し、鎮まれ―――ッ、僕のアソコぉ―――ッ、お願いだから、これ以上膨らまないでくれぇ―――ッ』
稀代の悪者に捕まった詩織ちゃんが可愛ければ可愛いほど、健気ならば健気なほど、怖がれば怖がるほど、その猿轡を咥えこんで身悶える様は、薫君のオトコノコの部分を刺激するのです。大好きな女の子の危機に「反応」してしまうのも、また古今東西男の子のサガなのでしょうか。

いろいろな意味でピンチの高校生コンビですが、桂子お姉様はまた別の意味で危機を迎えていました。
「アァッ、ハアァァ…ムッ、ムゥッ」
詩織ちゃんとは比較にならぬ、艶めかしい喘ぎと悶え。なぜならば、桂子の「口」に嵌められた轡玉は一つではないためです。そう、女性ならば持っているもう一つの御口、桂子のシルク地のパンティに覆い隠された恥唇の間には奇妙な秘具が埋め込まれていたのです。開膣をした挙句、女体が微かな動きをするたびに陰核を的確に嬲る魔の貞操帯、その魔道具も奇人四十面相の趣向を凝らした人質歓待の術でした。
「ンン、ンンンン~~~ッ」
ムチムチとした太腿をこすり合わせ、素足の踵を床から離して、少しでも大蛇の舌なめずりからその身を遠ざけようと試みるたび、桂子警視の美貌が甘く歪み、轡玉の下から甘い吐息交じりの呻きが漏れます。
(ダ、ダメよ、桂子ッ。どんなに辱められても淫らな姿を見せてはダメ。ましてや、この子たちの前で…)
他の二人には知られては困る責め苦に、一人耐え忍ぶ桂子嬢。かくして、三者三様の苦悩は続きます…。

奇人四十面相緊縛の館 鉄仮面VS少年少女探偵団 第二幕:令嬢警視の巻

第七幕:とある猟奇的猿轡譚

洋館の大広間―――。立派な暖炉の左右の太い柱に作り付けになったライオン像。その大きく広げた口に光る牙に結び付けられた細く頑丈な荒縄。その縄に硬く手首を頭上で縛められた美女と美少女…。
ポタポタポタ…。大和撫子然とした黒髪に滴る水滴の冷たい感触に、気を失っていた鴻池詩織はその大きな瞳に虚ろな色を湛えたまま、自分の置かれた状況を確かめようとしました。…すると…。
「んん…?」
身体の自由がありません。なぜならば頭の上で白く細い手首は、固く硬く、荒縄で結わかれているのですから。いくら手首をこすりあわせても、荒縄が柔肌に食い込むばかりで、この状況から逃れる術はないようです。そして、詩織が受けた仕打ちはたんに縛られたことにとどまりませんでした。すぐに、その愛らしい少女の貌を赤面させ、死んでしまいたいほどの気恥ずかしさに俯いてしまいました。そう、詩織は来ていた高校のセーラー服も、程よく膨らみ始めた旨の膨らみを隠すブラジャーも、白いハイソックスも、革靴もすべて取り去られ、女の子らしい白いパンティ一貫の裸にされていたのですから。
(そうだわッ!! 私は奇人四十面相に捕まってしまったんだわッ!! いやッ、こんな格好で縛られるなんてッ、助けて、江戸川先生ッ!!)
尊敬する江戸川探偵に助けを求めようと声を出しかかった詩織ちゃん。しかし、受難がもう一つ…。
「あぁッんん―――ッ!!」
そう、詩織の上品で可愛らしい口には、四十面相の捕虜になった証、髑髏のイニシャル入りの轡玉が厳しく噛みこまされているではありませんか。
(く、口まで塞がれているわ―ッ)
声を出そうにも、口いっぱいに硬く差し入れられた鉄轡は楕円形で、詩織の喉の入り口まで冷たい金属の異物が侵入し、微かな呻きを漏らすのが精一杯です。

「お目覚めだね、詩織君…」
仮面の下で低く嗤い声を立てながら、文字通り虜の身の詩織に歩み寄るは、奇人四十面相です。鉄仮面が片手を上げると、どこからか配下が操作したのでしょうか、ライオンの口から零れ落ちる詩織の頭髪を濡らしていた水滴が止まりました。どうやら、このライオンの柱は捕えた相手を拷問するための場所のようです。そう察した詩織の恐怖はいやがうえにも高まります。
「帝都一の大悪党の私に戦いを挑んでくるなんて、勇敢な娘さんだ。実のところ、私は君が可愛くて可愛くて仕方がないのだよ。詩織君は囚われの身…嗚呼、なんて素敵な言葉だろうねぇ!! 君が私に捕まっているという事実に、我ながら興奮が冷めやらないのだよ!!」
奇妙な言い回しで詩織のお人形のように端正な貌を形容する鼻筋を撫でながら奇人は言います。
「だが、私もお仕事をしなくてはいけないのだよ。つまりは怪盗業だ。そこで君に聞きたいことがある」
四十面相は単に、女の子を攫うだけが目的ではなかったのです。
「麗雲閣で展示されている、秘宝チャイナマドンナは偽物なのだろう? 君はその在りかを知っている、そうだろう?」
「―――!!」
図星です。この悪の鉄仮面が、建物を爆破する事だけを目的とするはずはありません。江戸川探偵氏は爆破予告警備と同時に、秘宝を狙ってくることを見越して四十面相と対峙していたのです。しかし、四十面相は裏の裏をかき、見事、その有能な助手である詩織を捕えたのでした。


「さぁ、詩織君…。チャイナマドンナはどこに隠してある? 江戸川は聡明で可愛い君には教えているはずだよ、知らないとは言わせない…」
四十面相は、轡玉の拘束バンドが食い込む詩織の貌に手をかけ、冷徹な声で言い放ちます。図星を突かれ続けた乙女は、精一杯の抵抗を表すように、大きな瞳を恐い鉄仮面からそらします。
「これが一度目のチャンスだ…。君を厳しい拷問にかけてあげよう」
予期していたことですが、詩織の貌から血の気が失せます。
「でも、君を白状させたいのに、なぜ轡玉を噛ませていると思う?」
確かに詩織も不思議でした。以前、四十面相に捕まった時も猿轡を噛まされていたことを思い出しました。
(口を塞がれていたら、秘密を打ち明けたくっても、打ち明けられないじゃない)
詩織の疑問はもっともです。しかし、稀代の悪党は、サディスティックな計画を打ち明け、詩織を精神的に追い詰めるのです。
「私は君のように愛らしい少女が責め苦に怯え、震え、悶え、くぐもった悲鳴をあげるのを見るのが大好きなんだよ。私のあげたチャンスを拒めば、私は気のすむまでその相手を責め問いにするのを止めない…。つまり、君が責め苦に負けて、私に屈服する気になろうが、君は口を塞がれたままいたぶりを受け続ける羽目になるわけだ…」
奇人は変質者と名を変えるに相応しい台詞を淡々と述べます。
「さぁ、どうする? もう一度だけ訊くよ? チャイナマドンナはどこにある? 言わないと…お隣のお姉様のように何度も何度も気絶を繰り返して、惨めな姿をさらすこととなるのだよ、フフフフ」

詩織が不自由な身体を捩って、左に貌を向けると、そこには…。詩織同様に頭上で両手を縛められ、唇の間で髑髏イニシャルの轡玉を輝かせ、虚ろな表情を浮浮かべる、警視、江頭桂子お姉様の姿がありました。桂子は虜の身となり、やや高飛車で凛とした様子は消えかかっていました。代わりに拷問でやつれた様子が憐憫な雰囲気を醸し出し、女の人の色香むんむんです。
(嗚呼、詩織さん、貴女まで捕まってしまったのね)
美女は美少女に瞳で語り掛けます。
(桂子さん、おいたわしいわ。お辛い目に遭わされたのね)
詩織も労りの瞳で、美人警視を慮ります。
(秘宝の在処を知っているのならば、早く打ち明けておしまいなさい。奇人四十面相は凶悪な犯罪者よ。貴女をひどい目に遭わせることを何とも思わないわ。いいえ、そればかりかそれを愉しむつもりよ)
同じ帝都貴族令嬢、そして同じように悪者に捕まり苦境に立たされた二人は以心伝心のご様子です。
(心配なさらないで、桂お姉様。私も江戸川探偵団のリーダーです。帝都を惑わす奇人四十面相にこのまま服従してしまうなんて惨めで嫌だわッ。頑張れるところまで頑張ります。そうすれば江戸川先生や薫君だってきっと…)
そんな健気な詩織の心を見抜いた様子で、四十面相は手にしていた鞭で床を打ち鳴らします。
「どうやら、決心は揺るがないようだね。それでは待ちに待った‘‘詩織責め’‘を始めるとしようか、フヒヒヒヒ」
無類の拷問好きの奇人ににじり寄られた詩織は、お上品な口いっぱいに押し込まれた轡玉の冷たい感触を舌に感じながら、震えるのでした…。

奇人四十面相緊縛の館 鉄仮面VS少年少女探偵団 第二幕:令嬢警視の巻

第六幕:罠にかかった詩織、そして薫までが捕まって…

洋館の中に足を踏み入れると、何やらカビ臭いにおいが充満し、怪しげな空気が充満しています。大きな階段の下に小さな蝋燭がともるだけの暗い室内です。
「洋館は二階建てのようだね。お姉様が捕まっている場所を特定しなくちゃ。僕は二階を観てくる。詩織ちゃんはここで待っていてよ」
しかし、そこは明朗活発な江戸川探偵団のリーダーのお嬢様。一人待っているわけがありません。
「ね、二階堂さん。私たちは一階を捜索しましょ」
「え、ちょッ、ちょっと詩織さん」
お嬢様警視からは解放されても、もう一人の帝都貴族令嬢に振り回される哀れな警部殿です。

まるで貴族会館のように広いお屋敷の廊下は途切れることもなく続きます。そこを好奇心旺盛な瞳を輝かせ、それでいて心細そうにゆっくり歩を進めるセーラー服姿の探偵助手美少女です。
「ホントに広いお屋敷ね…。どこまで続くのかしらこの廊下…?」
ふと、江戸川探偵団携帯の小型ランプの電池が切れました。真っ暗になる洋館の廊下。
「きゃッ、二階堂さん、詩織、怖いッ」
傍らの二階堂警部に抱き付く詩織ちゃん。いくら聡明で勇敢でも、そこはまだ15歳の女の子です。
「し、詩織さんッ、こんなところを誰かに見られては、本官、異性不純交遊にぃ…。ましてや、鴻池家のご令嬢が相手では免職は免れずぅ~~ッ!!」
貴族の美少女に頼られてデレデレ状態の二階堂警部。
「もう、頼りないんだから。しっかりしてくださいッ。予備の電池を入れますね」
すっかり冷静さを取り戻した詩織ちゃん。ポーチの中に常備している電池を入れ替えます。
「あ、点いたわ。これでもう大丈夫」
ほっとしたのも束の間、二階堂警部に微笑みかけたつもりの詩織の美貌が強張ります。

目の前にあったのは稀代の鉄仮面の黄金のマスク。
「フヒヒヒヒ、やはり来たねぇ、鴻池詩織ちゃん。君を待っていたよ。この前は君に一杯食わされたからねぇ」
そう、その相手は奇人四十面相ではありませんか。悪党は前回一泡ふかされ、宝物を奪い損ねたうっぷんを晴らすべく、詩織を捕えたがって手ぐすねを引いて待っていたのです。
「相変わらず可愛いお嬢ちゃんだ…。私は君の様な快活で勇敢なお嬢様が大好きでねぇ、必ずもう一度我が緊縛の館に招待したいとかねがね考えていたのだよ」
「い、いやよッ。捕まるものですかッ」
詩織ちゃんも最低限の護身術は身に着けています。素早く、鉄仮面から身を放します。そして、なおもその細い手首を攫んでくる四十面相の脇の舌を潜り抜け、相手の腕をねじ上げます。しかし、大怪盗相手にそんなものは通じる筈はありません。
「あ、あら、なぜなの?」
鉄仮面は関節などないかの如く、詩織が掴んだ手首をクルクルと回して見せます。
「勇ましいお転婆お嬢ちゃんだ。本当にチャーミングで楽しくなる。でもこの続きは別のお部屋でしようか。少しだけ眠ってもらうよ」
言うが早いか、詩織の身体を抱き寄せるとセーラー服の上から、強烈な電流器を押し付けたのです。
「きゃッ、うッ、うううううぅぅ―――――ッ!!」
詩織は大きな瞳をさらに一瞬大きく見開き、ビクビクと痙攣した後、鉄仮面の腕の中で眠れる森のお姫様となるのでした…。

その頃二階の薫君。
「い、今、詩織ちゃんの悲鳴が聞こえた気がしたぞ…。まさか、詩織ちゃんが四十面相に捕まったんじゃあ?」
さすがに初恋に人とは心が通じ合うのか、その危機をいち早く察します。しかし、駆け出そうとしたその時、すぐそばのドアから、何やら怪しげな声が聞こえてくるではありませんか。
「アア―――ッ、アァァ――――ッ」
憐憫且つ甘く切ない喘ぎ声。真鍮製のドアノブには鍵穴があります。そこから中の様子を伺うと…。
「江頭桂子が意識を失いましたッ!! もう少し続けますか!?」
「いや、少し休ませてからまた責めを続ける」
四十面相の部下らしき、マスク姿の男たちが鞭打っていたのは誰あろう、桂子お姉様です。パンティ一丁裸で艶めかしく項垂れる憧れの女性の責め場に出くわした薫君、不覚にも心臓が高鳴ります。
「お、お姉さまが拷問を受けているんだ…」
部下たちは意識を喪失した桂子に、轡玉を噛ますと別のドアから退散していきました。
「た、助けなくちゃ…。でも詩織ちゃんももしかしたら捕まってしまったのかもしれないし。だとしたら早く行ってあげないと、今のお姉様と同じような目に遭わされちゃうかもしれない」
四十面相の猟奇ぶり、変態ぶりはよく承知しています。詩織が捕まれば、裸にされて鞭で打たれるくらいでは済まないでしょう。そう考えると、一刻も早く救出してあげねばなりません。ましてやさっき彼女が聞きに陥れば必ず助けると約束したばかりです。しかし、髑髏マークのギャグボールを艶めかしく唇の間に輝かせ、荒縄で吊るされている桂子嬢を前にすると、不覚にも男の子としての本能が鎌首を持ち上げるのです。
「お、お姉様を助けよう」
薫君は、ふらふらと監禁部屋に侵入してしまったのです。

「くぱぁ――ッ。か、薫君ね。きっと来てくれるって、お姉さん信じていたわぁ」
艶めかしく唾液に塗れる轡玉を吐き出すお姉様の甘い吐息にくらくらしながら、少年助手はその手首を縛った荒縄を解いてあげ、脱出を促します。
「さ、早く警視」
「かつらお姉さん、でいいわ。あ、眩暈が…」
ドギマギする薫君の腕を、助けを求めるように抱きすくめる桂子警視。
「や、やっぱり捕まっていたときにカラダを悪くしたんですね」
「え、えぇ。大分責められたものだから」
桂子嬢は薫君の腕を頼りにするようにぐっと顔を埋めています。柔らかーいオッパイの感触を感じ硬直する薫君。しかし、これは罠でした…。突如にっと微笑む桂子嬢は、薫君の唇を奪うではありませんか。
「お、お姉様ッ、ちょっ、ちょっと…」
囚われのお姫様のキスは、甘く蕩けるような味です。が、急激な眠気に襲われる少年探偵助手くん。そうそう甘い話はありません。この桂子お姉様は四十面相の部下の変装だったのです。不覚にも男性のくちづけで睡眠薬を飲まされた少年探偵助手はよろめきます。
「うう…ね、眠い…」
敢え無く、眠れる森の「王子さま」になった薫君。かくして江戸川探偵団は二人とも四十面相の手中に堕ちたのでした。

奇人四十面相緊縛の館 鉄仮面VS少年少女探偵団 第二幕:令嬢警視の巻

第五幕:潜入ッ、江戸川探偵団!!

「え、江戸川さんッ、大変だ。桂子警視が四十面相にッ!!」
二階堂警部をはじめ、帝都警察の面々は血相を変えていました。それはそうでしょう、何せ自分たちよりはるかに年舌でありながら、上司であり、また要人の令嬢でもある桂子警視が、あろうことから攫われてしまうという大失態をやらかしたのですから。ですが、江戸川探偵は悠然とした様子で、煙草を吹かします。
 「落ち着き給えよ、二階堂くん。君たちの可愛い女上司が拉致されたって? 好都合じゃありませんか。あの生意気な令嬢に陣頭指揮をとられたんじゃあ、仕事にならないでしょう?」
「そ、そういう問題じゃあ、ありませんッ。姫警視の後には、現職の法務大臣、江頭實光がいるんですよ。そんな御仁のお嬢様をみすみす連れ去られたんじゃあ、私どもの立場っていうものが」
「ふふん、四十面相の狙いは桂さん自身だったんでしょうねぇ。考えてもごらんなさい、今まで四十面相に狙われた娘たちの事を…。皆、血筋の良い名家のご令嬢ばかりだ。ましてや、今回はそんな世間知らずの女の子が一人で立ち向かってきたのだから、稀代の奇人としては、垂涎モノでしょうねぇ。お姫様警視は捕まるべくして捕まった、というわけか、ハハハ」
「そんな、悠長なことを言っている場合ですか!! 早く、姫警視救出の手はずを整えてください」
「安心なさい、私の有能な部下が二人もいるのだから…。早速、追跡調査を開始しようか、いいね、薫君、詩織君」
「はい、江戸川先生」
薫と、詩織は元気に返事をしました。

その頃帝都某所にある、秘密の洋館地下では…。嗚呼、おいたわしや、姫様警視こと、江頭桂子が艶めかしくも厳しい責め折檻に晒されておりました。予告通りの鞭打ち刑に処すのは、稀代の奇人、四十面相です。パーン、パァーンという柔肌を打ち据える乾いた鞭の音が地下に鳴り響きます。その都度、頭上で手首を縛った縄の捩れに合わせて、その蠱惑的な唇の間に挟み込まれた轡玉の下でくぐもった喘ぎを漏らす桂子嬢…、憐れです。
「ンンンンーーーッ!! ンン、ンンンンーーーーッ!!」
豊満な乳房がプルンプルンと上下左右に激しく揺れ動き、うら若き帝都警察の権力者の魅惑の肉体が苦痛に歪みます。しかし、桂子嬢の喘ぎは鞭の痛みにとどまりません。彼女が立たされた周囲をグルリと取り囲む様に小型火炎放射器が備え付けられており、その炎が時折半裸で縛られた桂子の素足の足元を弄ぶようになぞるのです。
「アッ、アアンッ、アッン、アア~~~ァァッ、ンンンッ…ハウウゥゥ~~~~~ッ」
健康的な脚線美溢れる下半身を艶めかしく悶えさせ、肛門の穴まで汗びっしょりにしながら、轡玉をぐっと噛みこむ姫様警視の美貌の被虐的な美しさと言ったらありません。血筋の良い令嬢たちに苦痛を与えいたぶることに異常な快楽を覚える四十面相にとって、敵対する国家組織の幹部であるこの令嬢の苦しむ様は堪らないご馳走です。しかし、この冷徹な鉄仮面は理由もなく、こんなサディスティックな拷問にかけているわけがありません。バーナーの火を止め、鞭振りを中断すると同時に気を失いかけて、カクンと艶めかしく項垂れる桂子の頭上に失神防止の冷水が降り注ぎます。
「ンン…ンンッ…」
切れ長の瞳を虚ろに潤ませ、意識を取り戻した桂子嬢の唇から、轡玉と称するギャグボールを引き抜く四十面相。ぬちゃりと艶めかしい音を立てて、甘い吐息とともに唾液の糸が引く轡玉が取り出されます。

「どうかね、姫警視殿、我が緊縛の館の歓待の余興は?」
桂子嬢は顎に手を掛けられながらも、きっと相手を睨み返します。
「ご、拷問は覚悟していましたわッ。何をお聞きになるつもりか知りませんけど、こんな卑怯な尋問、なさりたければ、いくらでもなさるがいいわッ。でも、わたくしいくら責められても帝都警察の組織の事情などお話しませんわッ」
正義の乙女らしく、勝気な態度を崩さない桂子嬢。しかし、四十面相は当てが外れた様子でふんと鼻を鳴らします。
「そうか、君はやはり知らない様子だね。まぁ、所詮はお姫様警視、お飾りだという事か。だが、良い。もうすぐ、江戸川探偵の可愛らしい助手が、君という最高の人質を救出に来る。その時に今宵の宴は最高に盛り上がることになるだろうねぇ」
「ええ? 薫君と詩織さんが…。あの子たちをどうするつもりッ!? 子供たちに手を出さないで」
年上のお姉様の貌で、必死に可愛らしい探偵助手たちを案じる半裸の令嬢警視です。
「大きな声を出されては困る。あの子たちを罠にかけて捕える楽しみが無くなるからねぇ」
四十面相は再び、桂子嬢の唇に間に轡玉を捻じ込むのでした…。

洋館の外では、二階堂警部のトヨペットで四十面相追跡をしていた江戸川探偵団、薫と詩織が到着していました。実は薫君、桂子嬢が運び去られるのを、指をくわえていたわけではなく、ちゃんと対策をとっていたのです。気球に向けて小型発信機を投げつけていたのでした。
「薫君、発信機の震源はこの洋館になっているわ。桂子さんはきっとこの中に…」
「どんな目に遭わされているんだろう。早く助けなくっちゃ」
自身も詩織もろとも四十面相に捕まり、恐ろしい拷問を受けた経験のある薫は唇を噛み締めます。
「まッ、随分心配するのね。あの高飛車なお姉様がそーんなに好きなんだ、薫君は?」
詩織ちゃんは美少女貌にまたまた嫉妬の色を湛えて、助手仲間の薫君を軽く睨みます。
「何言ってるんだよ、詩織ちゃん。今は四十面相の企みを阻止して、捕まってる桂子お姉様を助ける事だろッ」
と、いいつつ思わず赤面する薫君。あの雅な美人警視に心奪われているのは事実なのです。
「ほぉ~~ら、赤くなった。男の子って嫌いッ。気が多いんだから」
可愛くほっぺを膨らまして、横を向く詩織ちゃん。
「あ、君、やきもちを焼いているね、詩織ちゃん。僕が君よりもお姉様を心配しているような気がしているんだね?」
今度は詩織が真っ赤になる番です。
「そ、そんなことないもんッ…。で、でも、もし私がまた四十面相に捕まっても…助けに来てくれる…?」
大きな瞳を潤ませて、上目遣いに薫を見つめる素直で可愛い詩織ちゃんでした。

奇人四十面相緊縛の館 鉄仮面VS少年少女探偵団 第二幕:令嬢警視の巻

第四幕:姫警視、罠に嵌る!! そして屈辱的な誘拐劇…


中の様子は暗くて見えません。さすがの桂子警視も恐る恐るという足取りで室内に踏み入ったその時です。背後でガシャンッと大きな音を立てて鉄扉が閉められたのです。
「はッ、しまった!! 閉じ込められてしまったわッ、は、はぐぅッ!!」
監禁されたことに気が付いた桂子の首に、ぎゅうっと麻ひもが巻き付き、グイグイと締め上げ始めたのです。手にしていた銃が床に乾いた音を立てて落下しました。

「あ、あぁッ…ああぁぁ~~ッ…」
白いストッキングに覆われた桂子の踵から、革のヒール靴が脱げ落ち、素足の爪先がレンガ造りの床を掻き毟ります。絞首刑の要領で天井から吊られた麻縄に、見事なまでにその首を捕えられた桂子は、苦悶にその理知的で聡明な美貌を歪め、身悶えます。暗がりの中にぼうっと蝋燭の火がともされ、そこに偽江戸川探偵が姿を見せました。そんな彼は纏っていたスーツで一度身を隠すようのポーズをとります。すると、あら不思議、黄金の仮面に黒装束の奇人紫綬面相に姿を変えたではありませんか。
「ようこそ、お姫様警視くん。私のメッセージの真意に気が付いてくれたことは賞賛に値するが、こんな原始的な罠に捕まるようでは、未来の帝都警察幹部としては頼りないねぇ」
「あ、あうぅ…」
「だが、このまま絞殺するなんて芸の無いふるまいをするつもりはありませんよ、桂子姫」
なおも苦しむ桂子警視を言葉で詰る奇人四十面相です。

従えていた部下たちに、桂子の紺色の制服を引き裂かせ、そして役職を拝命した時に送られた帝都警察バッチを剥ぎ取らせる四十面相です。
「なかなか、豊満なお嬢さんだ…」
純粋無垢で高貴な者が身につけると言われる、純白一色のブラジャーとパンティだけに剥かれてしまった桂子。絞首の苦しみから解放されたとはいえ、なお激しくせき込みながら、跪いてその肉体を庇うように掌で覆い隠し、奇人たちを睨みつけます。その様子を愉しげに眺める稀代の大悪党。
「ふふふふ、高慢で小生意気な帝都警察幹部も、こうしてしまえば普通の女の子じゃあないか?」
鉄仮面は己の性的趣向を吐露しつつ、桂子警視ににじり寄ります。
「わたしはね、君の様な魅力的な若い娘が大好きなのだよ。これまでも、帝都の高貴な令嬢たちを幾度となく誘拐して折檻をくわえてきた。それが愉しくて愉しくてやめられない。今回の騒動も、帝都貴族の江頭家の眉目秀麗な一人娘桂子を生け捕りにするのが目的なのだからね」

しかし、弁の立つ桂子も反論します。
「き、稀代の大悪党が…予告を反故にするようなことをなさるつもり?」
「フフフ、麗雲閣爆破を止めるとは言っていないよ。君というチャーミングなレディを誘拐し、帝都警察や上流階級の者どもに赤恥をかかせ、そして震え上がらせてから、注意をそらしたうえで爆破事件を起こす。私の犯行予告にも、本日事件を起こすとは書いたが、今日爆破を実行するとは言っていないだろう、クククク」
「ひ、卑怯者ッ。か、簡単に誘拐などされるものですか!! 必ずや、この場であなた達を逮捕しますわッ」
桂子嬢は唇をわなわな震わせながら言い返します。
「フヒヒヒ、本当に可愛いお嬢さんだ。可憐で勝気で生意気で、それでいて純粋な正義感を持っている。頭の悪い部下たちは、まだ下の階をのんびりと捜査しているよ、麗しの女上司がこんな危機に陥ってるとは知らずにねぇ」
悔しくてたまらない令嬢警視ですが、成す術はありません。

嗚呼、無情ッ、おいたわしや姫警視はシルク地のパンティ一丁にひん剥かれてしまいました。そして小さな檻の中に頭上で手首を縛められて結ばれ、ムチリとした両足も股を広げた形で、足首を左右の鉄格子に結わかれました。悔しさに、その不自由な半裸体を悔しげに、そして悩ましげに捩ります。
「それにしても滑稽じゃあないか。悪者を取り締るはずの警察幹部のリーダーが、こんな年端もいかないお嬢さんで、その娘が多数の部下の取り囲む中、その稀代の悪党に誘拐されるなんてねぇ?」
「い、いやッ」
生きて虜囚の辱めを受けずを教訓とする、帝都警察の思想を信じる桂子にとって自らが誘拐されてしまうなどという事は想像を絶する屈辱なのです。
「あらかじめ予告をしておくよ、桂子姫。君は私のアジトに誘拐され、そこで拷問を受けることになる。裸にして鞭で打って…いやいや、そんなことでは済まさない。君ほどの権力を持ったお嬢さんならば、想像を絶するほど辛い思いをさせてあげなくてはねぇ、恐ろしいことだよ、フフフフ…」
あまりの恐怖に桂子は、その美貌を強張らせ、血の気をなくすのでした。
「さぁ、君は少し弁舌が上手すぎる。私の手に堕ちた女たちは皆これを咥えこむのだよ」
四十面相が手にしたのは、黒革のバンド式のギャグボールです。ボールは鉄製で髑髏のイニシャルが刻み込まれています。
「あぁッ、い、いやよッ、いやぁ~~ッ、あっ、あぁむぅ…」
「ほぉ~~らほら、往生際良く咥えたまえ。この轡玉をね」
「あはぁッ…ンン~~ッ…」
八重歯で鉄球を受け止めた桂子の頬肉に革バンドが食い込みます。ぷくりと艶めかしい唇の間で、銀髑髏が輝くのでした。囚われの令嬢警視の拘束を完了した四十面相は、捕虜を捕えた檻の前面の蓋をガシャリと閉じ、低く嗤い声を立てます…。

その数分後。麗雲閣頂上付近に現れた謎の気球に帝都警察の面々、そして通行人たちは皆唖然とします。徐々に浮き上がる気球から吊るされる小さな鉄檻。その中には虜となった美女の姿が。僅かな下着だけを身に着けたその女の人は、誰あろう帝都警察警視の、江頭桂子嬢。まるで女神のような神々しさと、奴隷の惨めさを醸し出した美女は、鉄玉に口を塞がれたまま、運び去られてゆくのでした。


奇人四十面相緊縛の館 鉄仮面VS少年少女探偵団 第二幕:令嬢警視の巻

第三幕:姫警視の捜査

帝都警察幹部だけが纏う、帝都警察の凛々しい紺色の制服姿の桂子嬢は、幼少期より体操で鍛え上げた脚線美を輝かせ階段を駆け上ります。カツカツとヒールの高い黒革靴を響かせ、美人指揮官は奇人に化けた似せ名探偵を追い詰めます。
「すべての部屋を調べ上げなさいッ。鼠一匹逃してはダメよ!!」
麗雲閣最上階にたどり着いた桂子は、すぐさま部下たちに命じ、そして自らも先頭に立って捜査を開始しました。拳銃を手に、隙の無い身のこなしで一つ一つドアを、その美脚で蹴破る桂子警視。

「姫、あぶのうございますよ」
「さよう、ここはわれわれに」
【奇人四十面相爆破予告事件】の対策本部長も務める貴族の令嬢を庇い立てする男たち。
「つまらない気遣いは無用よッ!! あなたがたノブレス・オブリージュという言葉を知らなくって?」
桂子警視は高飛車に言い放ちます。しかしその切れ長の瞳は真摯に輝いています。確かに幼少期より蝶よ花よと育てられ、我儘且つプライドの高い娘ですが、貴族としての身分をわきまえ、民を想い、悪を憎む心の人一倍なのです。

最上階のどこを捜索しても、偽江戸川の姿はありません。
(駄目だわ。こんなに大勢では、逆に見つけられるものも見つけられない)
桂子は戦国時代の姫君に傅く郎党の様な部下の態度に少々呆れながら、あることを思い出しました。
「いいわ…。ここはあなた方に任せます。私には、少々心当たりが…」
有閑貴賓上司とでも陰口をきいているであろう部下たちの安堵した態度を尻目に、桂子はすばやくその場を離れ、らせん階段をムチリと美脚を蹴り上げ軽やかに上がります。すると、最上階であるはずの十二階の上に、レンガ造りの剥き出しの壁に覆われた鉄扉があるではありませんか。
(やはりそうだわ。麗雲閣は十二階建てと言うけれど、隠し部屋があるのね。四十面相は最上階を狙うとは言ったけれど、十二階とは言わなかった。言葉を巧みに操る心理的トリックね。私に対する挑戦状…いいわ。受けて立ちましょう。必ずやこの手で逮捕してみせますわ、奇人四十面相!!)
桂子嬢は、身をひそめるように、扉を押し開けると暗闇の中にその身体を忍ばせます。

奇人四十面相緊縛の館 鉄仮面VS少年少女探偵団 第二幕:令嬢警視の巻

第二幕:張り巡らされた罠

「事件」が発覚したのはその数分後。二階堂警部は先ほど、最上階へ向かったはずの、江戸川探偵がパイプを咥え、ひょつこり姿を現したのを見て驚きました。麗雲閣にはエレベータはありませんので、らせん状に設けられた石造りの階段を使うしか下階に降りる方法はないのです。従って一階階段付近で不審者を見張っていた二階堂警部は、自分の目に触れることなく再び玄関から現れたライバルの姿に驚愕したのです。
「江戸川さん、あんた超能力者かね? さっき十二階まで上がっていったと思ったら、何時の間に外に出たのです?」
しかし、当の名探偵は逆に狐につままれた様子です。

「どういうことです? 私は、ずっとこの周囲を張り込んでいたのですよ」
「じゃあ、さっき最上階へと向かったはずの、あの男はいったい誰なんだ!?」
二階堂警部が戸惑う中、江頭警視が部下に命じます。
「皆、付いてきなさい! さっきの江戸川探偵こそ、四十面相だわッ」
多数の警事を引きつれ、階段を駆け上っていく姫警視なのでした。

「君たちは、二階堂君とここに残っていなさい、いいね」
江戸川探偵は、そう言い残すとやれやれと言う表情で、その後を追っていきます。
「ねえ、薫君、どっちが本当の江戸川先生かしら?」
「うーん」
一階に残された薫君と詩織ちゃんは顔を見合わせます。その様子を微笑ましげに見つめていた二階堂氏が、束の間の安息を愉しむようにワインのグラスを手にします。
「ふぅ~~。わたしはあの姫警視と仕事をしている間、気の休まるときが無くてねぇ。政治家のご令嬢にして貴族階級、しかも頭の切れる文句なしの美女。あれで、可愛げがあれば、少しは愉しいのだけどねぇ」
「まぁ、二階堂さんッたら、勤務中でしょ? お酒なんてダメよ。あら…何かしらこれ?」
酒好き警部殿を窘めた詩織は、二階堂が手にしたグラスの下に置かれていた、しゃれた模様のコースターに記された文字に気が付きました。
「‘馬鹿と煙は高いところへ上るものだよ、四十面相’…ですって!?」
薫は驚きに口をパクパクさせます。
「これはきっと罠だよ!!」
薫は閃いたように叫びました。

奇人四十面相緊縛の館 鉄仮面VS少年少女探偵団 第二幕:令嬢警視の巻

第一幕:ライバルは令嬢警視

帝都浅草にある12階建てのレンガ造りの塔、麗雲閣では各国の要人を来賓に「日本秘宝展」が催されておりました。
その目玉はなんといっても観る者すべてを引き込んでしまうかのようなエメラルドの眩い光を放つ中国の秘石「チャイナマドンナ」です。
青い目を輝かせる駐日大使はもちろんの事、マスコミ各社も分厚いショーウインドウに収められた宝石に目を奪われてます。
しかし、この秘宝展は別の意味でも密かな注目を集めています。それは、帝都を騒がす、謎の怪盗にしてテロリスト、奇人四十面相が、なんと麗雲閣の爆破を密かに予告しているためです。冷徹にして、人とは思えぬ魔力を持つ謎の鉄仮面は帝都民に恐れられています。しかし、帝都の治安を維持する帝国警察も手をこまねいてはおりません。捜査一課の辣腕警部、二階堂大輔を筆頭に精鋭部隊をこの麗雲閣内部や、周辺に配備して怪しい者は蟻の子一匹、侵入させまいと目を光らせているのです。そして、もう一人、頼れる犯罪のエキスパートが…。

「大変な警備じゃありませんか、二階堂警部」
ピシーッとした白いスーツで決め込んだ紳士こそ、帝都の名探偵、江戸川凛太郎です。これまでも帝都を騒がす奇人変人をことごとく捕えてきた稀代の名探偵は、旧友の警部に声を掛けます。
「いやぁ、江戸川先生 今日こそは四十面相を、我が帝国警察で捕えてみせますよ」
「ふッ、まぁ、精々頑張ってください」
江戸川探偵は気障な様子で右手を上げると、秘宝展の人だかりから踵を返そうとしました。そんな彼の腕を背後から忍び寄った乙女が呼び止めます。
「まぁ、江戸川先生ッたら、余裕綽々ですのね。噂通り素敵な方」
まるで少年の様なショートカットに、切れ長の瞳、西洋人を思わせる通った鼻筋、微かに赤らんだ頬には微かなあどけなさが残る美女の名は江頭桂子警視です。その姿を目にするや否や、周囲にいた二階堂警部はじめ、帝都警察の面々は無論、財界人もハッと目を止め、最敬礼で女神さまをお迎えする様に後ろに下がるのでした。なにせ桂子嬢は帝都貴族で法務大臣、江頭實光氏を父に持つ「選民」なのですから。米国ハーバード大を卒業後帰国し、血統が大きくモノをいう帝都警察では、入庁二年目にして数多の有能な部下を持つ令嬢警視なのです。

「いやぁ、これはこれは。帝都警察の‘姫警視’のご登場ですな。今日は部下を引き連れ、宝石の品定めですか?」
微かに皮肉の入り混じった口調に、令嬢警視はきっと瞳に険しさを湛え、頬も膨らまします。気の強さとプライドの高さ、そして微かな幼さも入り混じった表情を浮かべた桂子は、すぐにつんと澄ました貌を名探偵に向けると少々声音を仮託して、挑み加減に言い返しました。
「わたくし、きちんとした江頭桂子という名前がありますのッ。いいえ、名探偵様が煩わしければ「かつら」と呼んでいただいても結構よ。それに、若い女の能力は侮るなかれ、ですわ。きっと、貴方様よりも先に四十面相の身柄を確保してみせますから」
令嬢警視は、なかなかの自信家のご様子で…。
「それは頼もしいね、だが僕は、君たちのような形式的な調査をするために張り込んでいるわけではないのだ。この麗雲閣は地上12階、高さ50メートルの鉄塔だ。私が四十面相ならば、最上階を狙うと思うがね」
少々、気障な態度で名探偵氏はひとり、らせん状の階段へと消えていきました。
「楽しみですわね、どちらが結果を残すか」
その背中に、桂子嬢は凛とした声で言い放つのでした。

そのやりとりを少々離れた場所から見守っていた、江戸川探偵団の速水薫と鴻池詩織嬢は仲良さげに頬を寄せ合います。
「ねぇ、薫君、あの江頭っていう方、すこし言葉が過ぎると思うわ。自信過多っていうのかしら…」
やはり貴族の家柄を持ち、躾を厳しくされてきた詩織は警視の態度が少々鼻につくご様子で…。
「そうかなぁ、僕はこれからの女の人はあれくらいでいいと思うけどな。それに、美人だし…」
頬を赤らめる薫少年を、やや呆れたように睨む詩織ちゃん。
「まぁ、薫君ッたら顔が赤くなった!」
「そんなことないってば」
仲の良いお友達以上の関係に発展しつつあるボーイフレンドの浮き立つ心に、微かにヤキモチも妬いているようです。

そんな、甘酸っぱいムードの二人の間に令嬢警視が歩み寄ります。
「まぁ、あなたたちが名探偵のお手伝いをしている坊ちゃんと、お嬢さんなのね。可愛らしい」
子ども扱いしたような口調に、詩織ちゃんがわずかに反撥したように口を可愛く尖らせます。
「お手伝いだけじゃありません。江戸川先生が犯人を捕まえるため、ちゃーんとお役に立ってます」
「あら、これは失礼」
同じ帝都令嬢とはいえ、大人の美女の貫録で微笑み返した桂子さんは、その薄ピンク色の蠱惑的な唇を、顔を真っ赤にしてその美貌に見惚れている薫君に近づけ囁きます。
「ねぇ、ボク。怪しい人がいたら教えて頂戴ね。お姉さん、あなたのセンセイよりも先に四十面相を逮捕しちゃうからッ」
その素敵な微笑みにぽーっと見惚れる薫君。その手の甲を詩織ちゃんは思いっきりつねりあげ、プンと傍らを向いてむくれるのでした。


奇人四十面相緊縛の館 鉄仮面VS少年少女探偵団

第五幕:絶体絶命の少年探偵助手、そして令嬢!!

天井から伸びる二本の鎖が動きを止め、二人を捕えた檻は完全に水中に姿を消しました。
「フフフフ、小僧と小娘め、今頃アマゾンから仕入れた、世にも獰猛な獣の歓待を受けて震え上がり、水圧に加え猿轡の息苦しさもあいまって苦しみ悶えていることだろう。あの美しい少年と少女が猿轡を噛まされた顔を苦痛と恐怖に歪めているであろうに、それを眺められぬのは残念なことだよ」
水中の中では、稀代の変質者の願望通り、檻の囚われ人、薫少年が緊縛を受けた身体を苦しみに捩り、そして猿轡を噛み切らんばかりに、噛み締め、迫りくる窒息の恐怖を耐え忍んでいました。
それは詩織も同様で、海老の様に卑猥でアクロバティックな縛られ方をしている令嬢は、猿轡顏を左右に振って、縛られたカモシカの様に細い脚をバタつかせますが、水牢の虜である状況を変えられるはずはありません。
死の恐怖と隣り合わせの二人をさらに追い詰めるのが水中の獣、そう鰐です。二人の若い人間の生気を感じ取ったのか、鰐たちは精一杯口を広げ、二人を捕えている檻の端を噛み砕かんばかりに食いつきます。
(きゃあ、怖いわッ。窒息する前に食べられてしまうんじゃないかしら!?)
詩織は薄れゆく意識の中、口枷を噛まされた喉の奥で叫びます。その様子を横目で見つつ、絶望を覚える薫少年です。
(た、助けてくれッ、このままじゃ、二人とも殺されてしまう)
稀代の大怪盗はかくもサディスティックに、純粋な少年と令嬢をいたぶるのでした。嗚呼、憐れ薫少年。いたわしや、詩織嬢・・・。

魔物の潜む水中から引き上げられた二つの檻が、水を滴らせふらふら揺れます。
その中で項垂れて意識を失いかけている薫少年。
そして意識を完全に失った詩織嬢は、秘裂を晒す格好で縛られているため、シルク地のパンティの下で陰毛が張り付き、少女の色香をいやがうえにも発散させながら、失神しています。
「どうだね、我が緊縛の館の拷問を受けた感想は!?二人とも・・・大分参っているご様子だね」
感想など言えるはずがありません。
これだけの恐怖と苦痛にまだ高校生の二人が音を上げぬはずもないでしょう。
しかし、その声を発する術すら、猿轡を噛ませることで奪い取っておきながら、冷徹な四十面相はさらに二人を問い詰めるのです。
「さぁ、暗証番号を教えたまえ!! 素直に白状するつもりならば、すぐにその猿轡を外してあげよう」
口を塞いだ相手を拷責で問い詰めるのは、四十面相の術なのです。
声を発する事すらできぬ状況で、想像を絶する恐怖と苦しみを与え続け、その責苦から解放する代わりに情報を聞き出すという、残忍かつ卑劣なものなのです。

薫少年は迷いました。
詩織嬢から聞かされた暗証番号はしかと記憶しています。
でも、これは恋心を抱いた相手との大切な約束です。
どんな状況に陥ったとしても守らなければなりません。
しかし、口を閉ざせば、この恐怖の水責めを鉄仮面は間違いなく続けることでしょう。
薫少年は、見習とはいえ、探偵助手です。
江戸川探偵の指導で、多少の潜水の訓練は受けていましたので、なんとかこの責苦を耐える自信はありました。
しかし、詩織嬢は既に限界間近です。
四十面相はサディストであることは間違いありませんが、薫少年を責め苛むよりも、帝都貴族にして鴻池家の令嬢、詩織をいたぶる方が遥かに性的興奮を満たす様子です。
拷問が再開されれば、徹底的に詩織を苛め抜き、薫を問い詰めるのでしょう。
そんな詩織が、うっすらと瞳を開き、懇願する様に鉄格子越しに薫少年と視線を絡めます。
『約束よ、速水くん。もう少し頑張って・・・』
水気を帯びた猿轡を、何かを堪えるべくグッと噛み締め端正な表情を引き締める詩織嬢は、そんなメッセージを投げかけます。

「クククク、強情な子供たちだ。いいだろう、拷問を再開してやる。ただし、いたぶるのはこの娘一人だ。帝都を牛耳る大財閥のご令嬢が、あられもない緊縛を受け、声も発することも出来ぬ卑猥な貌のまま、水中の獣に怯え続けるなど、なんと痛快な出来事か!! 娘だけを水に沈めろ!! この拷問を‘詩織責め’とでも名付けてやる」
薫少年の予想通り、残酷な命令を発する四十面相。
拷問にかけるいたいけな令嬢の名を、その責苦に着けるなど、なんという残忍な輩なのでしょう。
「ふははは、たまらんな。もっと怯えろ、もっと怖がれ、もっと苦しむのだ。そして薫少年よ、娘の命があるうちに、
アクロバティックな緊縛を受け、恥毛をパンティに張り付かせた少女の肉体が再び、鰐の潜む壕へと沈められてゆきます・・・。
猿轡を噛みこんだ氷の表情を浮かべた詩織の捕えられた檻が水に浸り、その艶めかしい下半身がドプンと、沈んだその時でした。

第六幕:大逆転に次ぐ大逆転!?

突如、壕の水が潮が引く様に、みるみるうちに地面に吸い込まれてゆくではありませんか。そこに潜み、どう猛な牙を剥いているはずの鰐は皆、仰向けに失神しています。
「な、何事だ!?」
稀代の大悪党もたじろぐ中、薫少年の檻の上に、一人の紳士が降り立ちました。
そう、名探偵にして正義の味方、江戸川凛太郎氏です。
「安心したまえ、薫くん。帝都警察の協力で、壕の地下の壁を破壊した。それに鰐は皆、眠らせてある!! さぁ、君は詩織さんを救出するのだ!!」
薫の檻のカギを手早く壊した名探偵氏は、少年の猿轡を解きながら命じます。
「ふはぁっ、せ、先生。きっと来てくれると信じてました」
快活な少年探偵助手は、檻を飛び出すと地面に下ろされたものの、まだ檻に幽閉されたままの詩織嬢に駆け寄ります。

アクロバティックな姿で緊縛された、その脚の縄を解いてあげる際、パンティに張り付いた陰毛がなんともエロティックでした。
でも、令嬢は微かに恥じらいつつも、級友の救助に感激したご様子です。
後ろ手の縛めを解き放ち、最後に頬肉に食い込んだ猿轡を外してあげると、歓喜の声を発します。
「速水くん、ありがとう」
「よく頑張ったね、詩織ちゃん」
友情を超えた感情が二人に芽生えた瞬間でした。
「江戸川クンまた会おう!!」
二人を散々いたぶった稀代の大怪盗は、ヒーローのお出ましに煙の様に姿を消すのでした。

救出された二人は、翌日、改めて鴻池家で再会しました。
「詩織ちゃん、君は強い子だね。声も出せないようずっと猿轡を噛まされて、あんな辛い拷問まで受けたのに、暗証番号を教えるよう僕に頼まなかったろ?」
「ええ、実はね、江戸川先生が助けに来てくれるのが分かっていたから」
キツネにつままれたような表情を浮かべる薫少年。
助手の自分だって、江戸川探偵の登場を予期していなかったというのに、なぜでしょう。
「内緒にしていたけれど、江戸川先生はこの帝都に何人も助手をお持ちなのよ。実は私もその一人っていうわけ」
詩織嬢は飛び切り可愛いウィンクをしつつ、胸元で昨日と同じエメラルドに光り輝くブローチを見せます。
「これが、通信機を兼ねた発信機になっているの。だから先生には私たちの居所が分かるし、助けに来てくれるのが分かっていたの。私もあなたと同じ、少女探偵助手っていうわけね。」
「なぁんだ、君も探偵助手だったなんて」
「内緒にしていてごめんなさいね。速水くんをビックリさせようと思って・・・。でも、薫くんのおかげで櫻の瞳も守れたし、これからもクラスメートであり、ライバルであり・・・仲のいいお友達でいて頂戴ね、薫くん」
少々騙された気分の薫少年でしたが、詩織嬢の呼称が「速水くん」から「薫くん」に変わったことに、言い知れない嬉しさを感じる少年探偵助手です。

鴻池家の一族は薫少年に猛烈な謝意を表し、櫻の瞳を再び見せてくれました。
鴻池宗右衛門は酒の勢いもあってか、直にその宝石を触らせてくれようと十二ケタの暗証番号を合わせます。ですが、ガラスのケースの蓋は開きません。
「あ、あれ、どうしたというのだ!? 開かないぞ!!」
大慌ての鴻池翁を前に、密かに笑いを噛み殺す詩織嬢は、傍らの薫少年にそっと耳打ちします。
「実はね、私、暗証番号を勝手に変えてしまったの。だから、薫くんに教えた番号でしか開かないわ。つまり、薫くんと私だけの秘密の番号っていうわけ」
悪戯っぽく微笑む、詩織嬢のチャーミングな表情に心躍らす薫少年。
二人の大冒険は始まったばかりのようで…。【第一部完】



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