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古代への誘い~3

3章 テレビのアイドル

西暦2012年5月

東京の国立博物館の研究室に勤務する宇佐由美子は、明日からの九州出張の準備に忙殺されていた。
テレビの仕事である。
東京の名門女子大の史学科を6年前に卒業して、国立博物館の学術研究員として就職した。
大学での専攻は、古代史である。
とにかく世俗と離れて大好きな歴史の研究にだけ没頭したいと思い、博物館の学術研究員という仕事を選んだのだ。
テレビも雑誌も禄に見ずに研究するそんな毎日に転機が訪れたのは去年のことだった。
ある日、館長の藤原仲麻呂から突然、館長室に呼び出されたのだ。
「今日は、君にお願いがあって来てもらったのだよ。実は、大日本テレビが、今度、「古代への誘い」という番組を始めることになったそうだ。日曜の朝の8時。サンデーモーニングの裏番組だそうだ。・・・・・とにかく真面目な番組で、古代の謎や各地の遺跡を紹介する番組らしい。・・・・・・大日本テレビの橘諸兄社長とは、実は大学の同級生でねえ。その彼から頼みがあったのだよ。誰か古代史に詳しい先生を紹介して欲しいと。・・・・・
そこで、私は君を紹介しようと思うんだよ。」
「そんな・・・・・・私、テレビとか・・・・とても・・・・・それに、私なんかより、ずっと歴史に詳しい先輩はたくさんいらっしゃいます。私のような若輩ものが、テレビで訳知り顔でおしゃべりしたら笑われてしまいます。・・・・せっかくの館長のご好意ですけども、ご辞退させて頂きたいと存じます。」
しかし、普段は、物腰が柔らかく素敵なナイスミドルで、とても優しい藤原館長が、この日は違っていた。
「どうしても、君にやってもらいたい」と言って譲らないのである。
「もう、橘君にも君の写真を見せて推薦したんだよ。橘君も写真をひとめ見て凄く気に入ってね。こんな美しい女性が、日曜の朝から解説してくれたら、人気番組になると言って、とても乗り気なんだよ。・・・・・研究も大変だろうが、毎週30分でいいんだ。解説してくれないか?」
目立つことが大嫌いで、万事控えめな由美子は、どうしてもテレビというものに出演などしたくなかった。
一旦は固辞した。
そして、同じ学術員の男性先輩にも相談した。
由美子の2年先輩の和気清磨に、相談したのだ。
きっと「そんなの、研究の無駄だ!」と言って反対してくれると思ったのだ。
ところが、和気清麻の答えは違っていた。
「それは、いい。是非やってごらんよ。視野も広まるし、物の見方にも幅が出る・・・・・きっといい勉強になるよ。それに君が講師だったら、話題になるのは間違いない。」
外見は冴えないが、人柄が誠実で真面目な和気は、由美子が心を許せる数少ない男性だった。
そんな助言もあって、由美子もついに決心して、番組にレギュラー出演することになったのだ。

古代史の謎を真面目に分析して解説するという、ものすごく硬い番組で、3~4%程度の視聴率なら万々歳と思われていたのが、スタートすると俄然注目を集めることになった。
なんと言っても、由美子が美人過ぎたのだ。
テレビ局の女子アナたちが色褪せて見えるほど由美子は美しかった。
そして、気品が漂っているのである。
育ちがよくて、血統書付と思わせる高貴さと優雅さが、オーラとして身体中から発散しているのが、テレビ越しにわかるのである。
たちまち、若者を中心にネット上でも話題になり、日曜の朝の硬い番組にも関わらず、視聴率が20%に迫るようなお化け番組になってしまったのである。
今では、知らないものが居ないほどの美人先生として、アイドル以上の存在になっていた。
数年前は、戦国武将が好きな「歴女」ブームが起こり、そして今では、古代史好きな男の子を指す「古代君」ブームの火付け役になったのである。
渋谷を歩けば、宇宙戦艦ヤマトの主人公のコスプレをした青年がたくさんいるのである。

彼女を起用した大日本テレビの橘社長も、推薦した藤原館長も大満足であった。

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