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Author:ベスト
ここは、自分のこだわりを書き綴った場にしたいと思ってます。小説はすべて私の頭の中の妄想・空想を書き綴っています。


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ギャグフェイスコレクション2 その2

第2章

「さ、無駄なお喋りはお終いです 実は宇佐美さんに手伝っていただきたいの」
百合子嬢は真顔に戻ると話を切り出した。
「例の我が社の雑誌広告のことなんだけれど、滝沢准一先生にお願いしたいと思っているんです」
「チェンジ」再度の主張だと、我が社の大人のおもちゃの精度は業界でも一、二位を争うレベルなのだそうだ。
そこで、その手の雑誌に大題的に広告を掲載すべきという意見が経営陣から飛び出し、その実現に向けて動き出したのだ。
役員会では商品の写真リストのみならず、淫靡な女体をイラストで掲載すべきという意見が多数を占めたため、その書き手となる作家を探しているのだという。
いったい何の相談をしているのやら、俺は役員会というのがたまらなくアホらしくも羨ましくも思えた。
百合子室長がその手の雑誌の内容や、イラストの意味を理解しているかは甚だ疑問だが、滝沢准一の名は俺にも訊き覚えがある。
確か、少年期に体験した初恋の少女とその姉とのSMチックな体験を小説化し、大ベストセラーになったのが10年前、近年はその手の雑誌で連載を持つ傍ら、緊縛絵の名人としての名を確立している異色の芸術家だ。
「先ほどお会いしてきたの」
「ちなみに、成宮室長、滝沢准一がどんな絵を描くか知っています?」
「いいえぇ」
百合子嬢は真顔で頭を振る。
やっぱりだ。
SMチックな趣向に着眼し、ビジネスにしようという経営者なのに肝心なところがわかっていない。
天然なのか、商才「しか」ないのか、はたまた敵をかく乱させる蛇皮線なのか・・・。
それにしても書いてもらいたい絵の趣向も分からずに依頼に行くとはある意味この上ない無礼というか、豪傑というか。
「あのねぇ、室長 滝沢准一は今をときめく官能作家ですよ ウチのような町工場の製品のために書き下ろしてくれるはずはないじゃないですか 書いてくれるとしてもいくらかかることやら それこそ大赤字ですよ!」
俺は小々、M&Aの女神さまの見識の無さに呆れた。
(所詮はコ娘よのぉ~~)
しかし、我が上司からは意外な返答が。

「それが書いて下さるそうなんですよ しかもタダで!!」
百合子嬢は大きな瞳を輝かせて満面の笑みだ。
身を乗り出し、両手を握りしめながら「タダ」という言葉にことさら力を込めるところも可愛い。
「うそでしょ!?」
俺は素っ頓狂な声を上げた。
有名作家がタダで作品を書き下ろしてくれるなんて前代未聞だ。
「本当に気さくな方でしてねぇ~~ただし一つ条件を付けられましたけれど…」
「条件!?」
少し雲行きが怪しくなってきた。
「そう、ミッション1!」
百合子嬢は急に弾んだ声で人差し指を立ててみせる。
「新宿2丁目のとあるビルに隠された宝物を盗み出すこと・・・」
「室長、TVの観過ぎじゃないですか?」
俺が呆れて訊ねる。
「お生憎様!わたくしTVは観ません でも真面目なんです 宇佐美さん、先生の書かれた『古代への誘い』というお話読んだことあります?」
「う、うん、ありますよ」
俺は「古代への誘い」という小説のハードな内容を思い返しながらバツが悪そうに答える。
滝沢准一が友人の美貌の妻をモデルにした小説で、緊縛猿轡をテーマにしたストーリーだった。
たしか、NASAの技術を用いたギャグボールが登場するSFタッチの内容でもあったと思う。
それを、若い娘の前で読んでいることを白状させられるのは相当恥ずかしい。
「実は先生は小説の中で登場させた‘あるもの’を裏社会の秘密結社・・・ま、闇金融らしいんですけれど、そこに借金のカタに奪い去られてしまったらしいの それは先生にとっては宝物らしいんです それを私が奪い返すことに成功したら、無条件に望みどおりの絵を描いて下さるそうよ」
「はあ~~・・・ 成宮君、真面目にその話信じている?」
俺は呆れて言葉が出ない。
日本の名門大学を卒業し、英国留学までして何を勉強していたんだか、このお嬢サマは。それにしてもあるものってなんだろう?
「信じていますともぉ 先生のご様子からして嘘偽りはありませんわ、きっと」
急に少女チックなキュンとした顔になる百合子室長。
そんな顔されると俺までキュンとしてしまう。
「先生の小説を読まれているのなら話が早いです! 私と一緒にその秘密結社に潜入してください お願いしますっ!」
百合子嬢はにっこり微笑んでペコっと頭を下げる。
黒髪のあまぁ~~い香りが俺の鼻孔をくすぐる。
「まぁ、いいですよ 行っても」
俺は百合子嬢のチャーミングさに陥落し、ついついOKしてしまった。
顔をあげた瞬間、その美顔に髪がかかる様子がまた百合子嬢のアイドルフェイスを艶やかに彩る。
「あ、今言いましたね、行くって言いましたよね 絶対絶対、約束ですよぉ~~」
百合子嬢は急にいたずらっぽい瞳を向ける。
「実はね、先生ともう約束しちゃったんです だけれどね、誓約書も書かされたんです」
百合子嬢は一枚の用紙をデスクに差し出した。
『この件にはすべて自己責任で臨みます 万が一、私もしくは私の部下が捕えられたり殺害されることがあっても、貴方様に損害賠償及び責任の追及は一切いたしません』
百合子嬢の綺麗なサインまで添えられ、印鑑まで押してある。
加えて部下一名のところにはご丁寧に俺の名前まで代筆、押印されている。
「そう言ってくださると思ってサインをしておきました これも仕事ですからねぇ」
百合子嬢は屈託無い表情で微笑んだ。






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