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ここは、自分のこだわりを書き綴った場にしたいと思ってます。小説はすべて私の頭の中の妄想・空想を書き綴っています。


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妖華昇香 その4

第4章


 ここ梅竹撮影所大スタジオは、奇妙な熱気と、ピリリと張りつめた空気、そして若く美しい女性が放つ、いわば淫気に満ちあふれていた。
プラチナチケットを握りしめた佑樹は約束通り、『乱華』撮影現場に通された。
話題の名女優が裸をさらすというのに年齢指定すらされない服部監督の権力の魔城でもあるこのスタジオ。
昨日まで期末試験に臨んでいた彼にとっては今日が初めての見学になる。
文字通り夢にまで見た憧れの女の濡れ場だというのに、見逃してしまった数日間のことを思うと、胸が引き裂かれるような悔しさがこみあげてくる。
しかし、スタジオ内に入り、物々しい雰囲気の中、昭和初期の特高警察取り調べ室が再現されたセットの中に、囚われた美女の姿を目の当たりにした佑樹はすべてを忘れ、言葉を失った。
そこには木製の柱に後ろ手に縛めを受け、露出した豊かなバストを上下で挟み込まれるように縄をかけられ、絶望したように項垂れる一人の女。
そう、それは紛れもなく清流院桂だった。
「桂子・・・お姉さん・・・」
おもわず、佑樹はつぶやいた。
憧れた女が他人の手で裸にされ、縛りあげられるという残酷な仕打ちを受ける姿。
血気盛んな少年ならば誰もが妄想しがちな光景だが、今佑樹の前には紛れもなく想い人、桐山桂があられもない姿を曝しているのだ。
乳首を拝むだけでも少年に与える茂喜は計り知れないが、しかも緊縛姿なのだ。
「それではシーン45 澤崎淑子、取り調べシーン再開します! 3・2・1・・・アクション!」
現場を仕切っているらしい、黒メガネの声とともに撮影が始まった。
その傍らで、己の指示で縄を打った美人女優を見つめる白髪の男が、かの服部照三だった。
項垂れる澤崎淑子を演じる清流院桂の顔面めがけて、冷水がぶちまけられる。
あぁ、と喘ぎながら特高警察官を演じる川谷敬三に黒髪を攫まれながら美顔を引き起こされるその姿はたまらなく嗜虐的だった。
しかも、である。
桂は上半身を裸にされているだけでなく、下半身にもほとんどの衣服を身につけてはいなかった。
着衣と言えば、わずかに股間を覆い隠す白い布、もっこ褌と呼ばれる、パンティをビキニにでもしたような秘部隠し一丁という信じられない痴態を曝している。
それが、顔面から滴る水滴で透けていき、やがて恥毛が浮かび上がるのを観た瞬間、佑樹は見てはならぬ、それでいてこの世で最もいやらしいものを目の当たりにしたことを実感した。
「ええ加減に、転ばんかい!? 強情な小娘が」
「私は捕えられようと、投獄されようと、信条を曲げるつもりはありません」
桂の凛とした、やや鼻にかかった、それでいて澄んだ美声がスタジオに響く
「そうかぁ~? それならば、少しばかり痛い目に遭うぞ」
川谷演じる刑事が蝋燭立に火を近づける。
そしてその白く小さな松明を、縄で挟み込まれ上下につぶされた豊かな乳房の上にそそり立つ濃いピンク色の蕾を焙る様に上下左右に動かす。
「あッ、ああッ! ああぁぁぁ~~~ッ!!」
初めて聞く、恋心を抱く女、そして憧れの美人女優の悲鳴に佑樹の心臓が異常なほど高鳴り、全身が震えるのを抑えきれない。
「わ、私は・・・あきらめないわ・・・そして捨てない! 思想と信条、そして平和を愛する心をぉ~~ッ」
美顔を苦悶に歪め、緊縛を受けた乳房をフルフルと揺らし、美しい肢体を捩らせ、女のエロティズムをすべてを魅せつける迫真の演技。
ただの女優が演じたのであれば、間違いなくVシネマ同然の官能作品になり下がりかねない演出だが、清流院の女優、いや女としての格がそれを妨げ、むしろ故人となった澤崎本人の神格化にもつながるような艶姿と言っても良かった。
桂が拷問に美姿を歪ませ、悲鳴をあげるたびに、スタジオ内を行きかう男性スタッフは股間を隠すように前のめりに歩き、ゲスト観客の佑樹達も食い入る様にその光景を見つめながら、性器が熱く猛るのをこらえられずにいた。

嬌声にも近い清流院桂の悲鳴は午後1時近くなっても、スタジオ内を淫微にこだましていた。
その場にいる数十人単位の男性の股間をくまなく刺激し、魅了しきった清流院の演技だが、すでに4時間以上にも及ぶ拷問シーンに服部監督はいつまでもOKを出さない。
SM用の火傷防止用の蝋燭とはいえ、桂の乳房には赤い痕が残り、食い込んだ縄が柔肌を剥いていたが、その様子も清流院桂の屈強な女優魂を演出する小道具になっていた。
「清流院! おまえは歴史認識ができているのか? 澤崎は暗い昭和の陰部に真正面から逆らった女だ 今のお前の己に酔いつぶれたような演技など、澤崎に失礼だ」
面前で罵倒された桂は、屈辱的な緊縛を受けたままの姿でキッと服部を睨む。
「私も、故人に対しては崇敬の念を抱いてやまぬ一人です でもこれは映画よ 私が演じる以上、澤崎は清流院桂のやり方で演じるのが筋じゃありませんの? それを引き出すのが監督さんの務めじゃなくて!?」
理路整然とした言葉を放つ美人女優の姿に、またしても多くの魅せられ、そして畏敬の念を抱かせられた。
桂には裸という無防備な姿であろうと、縄を打たれていようと他者を寄せ付けない気高さがあるのだ。
それは彼女の人間的な芯の強さと、プライドの高さの表れでもある。
心優しいお嬢さまの姿しか知らなかった佑樹は、彼女が東大在学中に女優を志し、家名を穢すとの大反対に遭いながらも押し切ったという噂話を思い出し納得するのだった。
「どうも、桂さんは苦労を知らずに大きくなりすぎたんじゃないの? 少し精神修養が必要だわ」
そう言って服部の傍らで妖しく微笑むのは助監督の高島サオリだった。
服部の右腕として彼の作品には必ず名を連ね、斬新な構想を持ち作品を昇華させると評判の人物だった。
「桂さん、あなたに特訓を用意したわ 私がたっぷり仕込んであげる フフフ・・・」
細面の狐のような瞳が光るのを見て佑樹は胸騒ぎを覚えた。
いや彼だけでない、スタジオ全体が一つの大きな共同体として一つの陰謀を成し遂げることに加担し始めた瞬間だった。

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