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ここは、自分のこだわりを書き綴った場にしたいと思ってます。小説はすべて私の頭の中の妄想・空想を書き綴っています。


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怪兵と亜美 第3弾

5章

庄次・カノン。48歳。独身。
庄次は、木更津の郊外に小さなアトリエ兼住居を構え、イラストを描いたり、婦人雑誌のさし絵を描いたりして生計を立てていたのです。
男一人生きていくには、それで十分な稼ぎにはなったのです。

彼の描くイラストや挿絵は描写が実に細やかで出版社の間では事のほか評判が良いようです。
もちろんそんなイラストレーターが何故、フランスに住むイザベル女史の調査の網に引っ掛からなかったかというと、それはペンネームが「盆土栄二 ぼんどえいじ」という名前で描いていたからです。
しかし、彼自身、本業のイラストや挿絵は、所詮食い扶持を稼ぐためだけのものであり、彼自身が魂を揺さぶるような本当に描きたい絵は別にあったのです。
それこそが、彼自身「魂の絵」という女性DID絵なのです。
本格的な油絵で、描かれる女性の姿勢も彼の脳内ではきちんと決まっています。
実はそれこそが、イザベル女史を描いた緊縛絵そのものなのです。
決して売り物にはせず、他人に見せることもない。
庄次自身の宝物そのものなのです。
実は、これまでに世界中で13人の女性を描いてきていました。
この13人の姿こそ、庄次にとっては珠玉の宝物です。
すべて自宅アトリエの地下室に秘蔵されているのでした。

これはどんな女性がモデルでいいわけでは決してありません。
庄次自身の魂の琴線に触れなければ絶対に描かないのです。
それはお金を積めば描けるものではないのです。
描くには、というか描けるには沢山の条件が揃わないと描けないのでした。
まずは、庄次自身の好みの女性であることもちろんのことですが、
年齢とか容姿だけの問題ではありません。
どんなに若くて美人であっても庄次自身の心の琴線に触れない女性であればモデルにはなれないのです。
例え50歳のおばさんであっても、庄次自身が心が動けばそれでいいのです。
顔立ち、体型、仕草、表情、言葉使い、知性、教養etc。
彼独自の基準があって、言葉で表現するのは難しいのですが、同好のマニアであれば、ご理解頂けるのではないでしょうか!
庄次自身の魂を揺さぶる女性のみがモデルに選ばれるのです。


そして一番の問題点は、油絵であるため、庄次自身がモデルに対して長時間同じ姿勢を要求することでした。
これが一番の問題点なのです。
これまでモデルになった13人の女性の姿勢は皆同じです。
それは全員は後ろ手緊縛であり、正座させられているのです。
ある時は全裸、ある時はランジェリー姿の違いはありますが、全員、結び玉を作った布の猿轡を頑丈に噛まされ、カッと眼を見開いているのです。
背筋をピンと伸ばした正座姿で、長時間、油絵のモデルなど簡単なことではありません。
少々のお金を積んでも、普通のモデルは音をあげてしまうのです。
これだけの条件を揃えようと思えば、イザベル女史にしたように犯罪行為で女性を拘束し、脅迫しながら描く以外に中々実現しないのです。
画家にとってはリスクがある非常に危険なことなのです。

やはり安全を考えれば、非常に高額なモデル料を払うかしかないのです。
しかし残念なことに、お金を払ってモデルを募集しても、中々、今度は庄次の琴線は触れるモデルには出会えません。
彼のイメージの中にある女性の表情が何か違うのです。

それでもイメージ通りのモデルを求めて、モデル料を稼ぐために、その費用を捻出するためにだけ、これまで何作か名画の贋作を手掛けたのです。
そうやって大金を稼ぐしかなかったのです。
庄次自身は金銭にはまったく執着が無く、恬淡であります。
ただ、魂の絵を描くためにのみ執着する人間なのです。
贋作作りは決して庄次にとって楽しいものではありません。
庄次が描いた名画贋作が数点しかないのはこんな理由だったのです。



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