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ここは、自分のこだわりを書き綴った場にしたいと思ってます。小説はすべて私の頭の中の妄想・空想を書き綴っています。


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ギャグフェイスコレクション外伝 洋助の回想録 我が愛しの百合子嬢篇

第11章

―――奥多摩の榎本産業産廃投棄場。殺風景な錆びた看板以外は人っ子一人いない山中の、そのまた奥に作られた薄暗いこの場所には、スクラップにもならない鉄屑や、30年前のバスが駐留し、廃墟の雰囲気満点だ。後続の古株連中が到着するのを待って、俺たちは自分の車から降ろされる。
「へへへ、宇佐美。言っただろう、道中気をつけろと」
俺たちに遅れること三十分、大久保工場長はニマニマと残忍な笑みを浮かべ、俺と百合子嬢を交互に眺める。
「さてと、コイツラどうやって始末します?」
中堅どころの社員、古林が言う。
「宇佐美は榎本社長を裏切った重大犯罪人ですぜ。普通の殺り方じゃあ、みんなが納得しねぇ」
大久保の俺に対する恨みは半端じゃない様子だ。こりゃあ、俺の死にざまは相当無様になりそうだな。
「それにつけても許せないのはこの小娘だ。俺たちの恨みの大きさを感じながらあの世へ行けるよう、ちょっと残酷な方法を考えてみました」
平田は徹底的に百合子嬢を目の敵にしている。百合子嬢は覚悟を決めたのか、俺の傍らで毅然と佇んでいる。大久保は平田の計画に残忍な笑みを浮かべ頷くと毛命じた。
「さすがに泣き叫ばれたりしては始末が悪いし、苦しみがゆっくり続くよう、美しすぎる社長殿に猿轡を噛ませてやれぃ!!」
どこで準備したのか、手にはピンポン玉に穴の開いた革製のボールギャグを持っている。
そのボールギャグを百合子嬢の口に嵌めこむと、頬が洋梨のように醜く歪むまでストラップを絞り上げたのだ。


投棄上の片隅には雨水や、産廃から流れ出した誘導な液体がかなり深い沼を形成している。その畔に、小ぶりなクレーン車が横付けされた。ブイーンブーン・・・。大きなモーター音とともに、後ろ手に緊縛され、両足をピシーッと揃えられ縛られた我が可愛い女社長、成宮百合子嬢が逆さに吊り上げられていく。生足が眩しい、なんて言っている場合では無い。
「ンンッ!! ンンッ!! ンンンンン〜〜〜ッ!!」
百合子嬢はさすがに恐怖にボールギャグフェイスを引き攣らせ、喘いでいる。
「ようし、美人社長殿にゆっくり産廃エキスの風呂に浸かって戴け!! 俺たちの汗と涙が生み出した工場の廃棄物の沼地で窒息死するなんて、ハイエナファンドのお姫様にお似合いの死にざまだぜ!!」
大久保は狂喜している。もう普通じゃあない。
「や、やめろッ、その娘を殺すのは!! 俺なら殺してもいいから!! その娘だけはぁ!!」
俺はマジで叫んでいた。無論本心だ。だが、狂人と化した暴徒たちを止めることはできない。重機を操作する古林は徐々にクレーンを嬲る様なスピードでじわじわと下げてゆく。身悶えする可愛い我が女社長が、徐々に沼地へと吸い込まれていく様を俺は見せつけられるわけだ。
 「安心しろッて、宇佐美。もうすぐテメェも同じ方法で後を追うことになるんだ。あの世で身分違いの姫さんに可愛がって飼い犬にでもしてもらいな」
連中の間から爆笑が起きた。だが縛られている俺になすすべはない。

徐々に下げられてゆくクレーン。百合子社長の逆さになった美貌から垂れる黒髪が、ついに油の浮き立つ産廃池に浸った。そして聡明さを象徴するような白い額のを左右に振り、綺麗な瞳で俺を見つめる。目の前で愛する女が処刑されようっていうのに俺には何の手立てもないのだ。大久保はわざと逆さになった彼女のボールギャグフェイスが水没する寸前でクレーンを止めさせる。
「へっへっへっ、言い様だな、ハイエナお嬢さん。何か言い残すことがあるかい? まっ、そんなに無様に顔が歪むほど猿轡を噛まされてりゃあ、言うに言えねえか、さぁ、死出の旅路を愉しんでくれや!!」
ガクンとクレーンがまた動き出す。
「止めろおおおおおぉぉぉぉ――――――ッ!!!!」
俺は叫んだ。その時だ。遥彼方からパトカーのサイレンが聞こえてきたのは・・・。
「け、警察、誰が呼んだ!?」
大久保は狼狽した様に右往左往したが、すぐさま、山道を駆け上ってくる警察車両を目に、百合子嬢の処刑の中止を命じ、その場にへたり込んだのだった。

「危なかったですねぇ」
百合子嬢は猿轡を外してあげると、縛っていた手首の縄の痕を撫でつつ、俺に微笑みかけた。
「警察を呼んだのは誰です!? まさか、大久保の仲間が」
「まさか、あれほどの決意で私たちを殺そうとしたんですよ」
「じゃあ誰が?」
「このわ・た・し・ですよ。そしてその立役者は、宇佐美さん、あ・な・た・です!」
百合子嬢は革コートのポケットから見慣れたものを取り出した。そう、それは俺が車の中に置きっぱなしにした携帯電話だ。
「で、でも社長は電話では話なんてしていなかったでしょ?」
俺はマジックでも見せられた気分だが、彼女の優秀さや状況判断力に驚かされるのはココからだった。
「メールを出したんです、私の部下に、ね」
そうか、縛られた手首をこすりあわせていたのはメールを打っていたからだったのか。それにしても、である。俺が疑問をさらに投げかけた。
「でも、キーを見ないで携帯なんて操作できるんですか?」
「慣れれば案外簡単ですよ。電卓をボタンを見ずに叩ける人と同じ要領です。仲間や友人のメルアドは頭に記憶していますしね」
驚くような頭の良さだ。百合子嬢は今度は悪戯娘が甘えるような表情で俺の胸に顔を当て囁く。
「宇佐美さん、私忘れませんよぉ。貴方は私のヒーローです。社長としても、女としても、貴方は私にとって特別な人になりましたから」
百合子嬢は惚れ惚れするような表情を見せ、妖しく微笑んだ。


―――――と、まぁ、これが二年前に俺が体験した百合子嬢との「馴れ初め」だ。俺のドジをことごとくカバーした上でそれを反撃に利用し、俺がたまたま持っていた僅かな『運』まで自分に引き寄せる我がオンナ社長の鮮やかな逆転劇で、俺はこうして生き延び、その美人上司と恋人関係にあるわけだ。BMWは港街の巨大なブリッジを見渡す
「今でも俺の事、英雄って思ってます、百合子社長?」
俺は改めて聞いてみた。
「ええ、思っていますよ」
男心をくすぐられた俺は、彼女を赤レンガに押し付け、壁ドンした。
「でも、英雄だったのは、あの日だけ…。今は私が貴方のスーパーガールかな?」
百合子嬢はくるりと体位を変えると、俺を赤レンガに押し付け、逆に壁ドンした。
「こっちの方が、ぴったりくるでしょ、洋助クンッ」
と、小首をかしげ、微かに挑戦的に妖しく微笑むのだった。  『end』

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