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US様投稿小説 少年探偵は囚われの身がお好き

第3章

「こんな厳重にしまい込んだんじゃあ、蜃気楼でも手出しはできないだろうなぁ」
人気の失せた地下通路で、先ほど憧れのお人が暗証番号を打ち込んだ重い鉄扉を睨む淳之輔です。そんな時、少年にふとした思いがよぎります。
「由美子お姉ちゃんは暗証番号を知っている…ってことは、蜃気楼がお姉ちゃんを狙うかもしれない…」
古今東西、探偵小説には令嬢が怪盗にさらわれる場面がつきものです。
先ほど、淳之輔が熟読していた江戸川乱歩の『人間豹』では悪魔のような漢にさらわれた明智探偵の妻、文代が、生命の危機にさらされる場面が登場し、言い知れない心臓の高鳴りを覚えたのも事実です。
「由美子お姉ちゃんを襲って、この倉庫の暗証番号を聞き出そうとするに決まっている! 由美子お姉ちゃんが危ないッ、彼女を守れるのは僕しかいないんだから!」
と、いささか安直且つ安易な思考に陥るのも12歳の少年特有のものですが、本人は大真面目です。
愛する人を守るべく、地上階に通じる階段を上りかけたときでした。
足音が、夏場でもひんやりとした地下室に響き渡ります。カツコツカツ……。思わず、階段の陰に身を潜める淳之輔、彼の目に飛び込んできたのは…。

「なんだ、淳之輔君じゃあないか」
と、少々驚いた口調で、微笑む紳士は保坂館長です。
本当は、利用者が地下室に入ることは禁じられていますが、そこは旧知の仲、別段怒りはしません。
「おいおい、探偵ごっこもいいが、もうそろそろ、日が落ちるし、閉館時間は過ぎておるぞ。スタッフもみんな引けているし、早く帰りなさい。佐伯君が、君の姿が見えないって心配しておったよ」
学習室に残してきたカバンを見つけたのでしょう。
お姉様は淳之輔がまだ館内に入ると思い、探しているのかもしれません。
「ハーイ、わかりました。じゃ、館長さんさようなら」
行儀良く挨拶をして、地上への階段を上りきると、すでに館内の照明が消され始めていました。
そんな中、今さっき淳之輔が登ってきた会談の入り口に向かう人影があります。
とっさに書庫の陰に隠れ様子を伺います。
「あれ…平山宏彦じゃないか」
足音を忍ばせて現れたのは先ほどまでイベント会場で対談を行っていた『怪写轡画』の作者です。
平山は足音を忍ばせるように、階段を降りていきます。
「あやしいな」
淳之輔は、彼の音を追って再び薄暗い地下へと潜入するのでした。

地下へ降り切った平山は、夢遊病者のごとく、あちこちを見回し何事かつぶやいています。トークイベントを終えて出てきた時から、どこか浮世離れした様子でしたが、今の彼は輪をかけて心ここにあらずの様子です。
「あれは、あの絵は私のものだ…。つまりは、あの絵を盗み出す資格がある…これまで盗み出したどの名画よりも価値のある、あの絵を…」
(ええ、これまでも盗み出したことがあるって…もしかして平山が蜃気楼ってこと!?)
淳之輔は心を躍らせました。
(よーし、蜃気楼は僕が捕まえてみせるぞ!!)
ブルージーンズの半ズボンから延びる日焼けした太腿を忍ばせるように、平山の後を追う淳之輔。
「やっぱり、あの暗証番号付きの倉庫に行くんだな」
自分の絵画の保管場所ならば、由美子嬢に尋ねていても不思議はありません。
淳之輔は平山が怪盗の名に恥じぬ手さばきでどうやって暗証番号を解読し、その扉を開けるのか、その様子を探るべく、通路の角からそっと顔をのぞかせました。
が、そのときです!
「あううぅッ!…」
突如現れた大きな人影に、目の前を覆い隠された津語の瞬間、鳩尾に強烈な痛みを覚えた淳之輔は、前のめりに崩れてゆくのでした―――。



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