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ここは、自分のこだわりを書き綴った場にしたいと思ってます。小説はすべて私の頭の中の妄想・空想を書き綴っています。


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US様投稿小説 少年探偵は囚われの身がお好き

第4章

どれほどの時間が流れたのでしょうか。淳之輔の意識が次第に蘇ります。
黴臭い書物の匂い。そこは、廃棄本が積み上げられる書庫の中でした。
「…ン…ンン……ンンン? ンンン―――ッ!!」
淳之輔は、後ろ手にされた手首と、纏めて結わかれた足首に力を籠めますが、食い込む荒縄の痛みが増すばかりです。
固くきつく縛られているのです。しかし、それだけではありません。
声が出せません。
大きな玉結びの黒い布の塊が口内一杯に食い込み、顎が疲れるほどに硬く、首の後ろで結わき上げられ、低い呻きすらかき消されるほど厳しい猿轡をかまされているのでした。
(ぼ、僕、縛られてる!! 捕まっちゃったんだッ!! で、でも誰に!?)
思い当たるのは、あの平山です。
自分の正体に気づきつつある『探偵』もどきの動きを封じるべく、ここに監禁したと考えるのが妥当だと、少々冷静になった頭で考察する淳之輔です。
後ろ手に背中までくくり上げられ、交差させられたたうえに結ばれた手首は、いくら暴れても自由を取り戻せません。
結ばれ、また靴を脱がされ素足になった足の甲をこすり合わせますが、これまた厳しい縛めを受けた少年の脚は立つことすらままなりません。
かくして、まるで探偵小説の哀れな人質役のごとく、淳之輔は緊縛を受けた状態で、薄汚れた床に横たえられたまま、呻くことしかできないのです。
これからどうする、どうなる――――?
そんな、恐ろしくも奇妙な監禁事件の中、虜の身の淳之輔を覗き込む視線に、彼自身がようやく気が付く時が来ました。

幼さの残るリンゴのようなほっぺに、ググッと黒い布をくいこませた淳之輔が逆さになった視界に、ある男の影を捕らえます。
「ンン――…?」
「お目覚めかね、坊や…ククク…」
まるで探偵映画のワンシーンのような光景です。
男はアランドロンの怪傑ゾロ、よろしく貌の上半分を黒い頭巾で覆い隠しており、その正体は窺い知れません。
ですが、状況から言って、平山が、いやいや蜃気楼がついに正体を現したと考えるのが普通でしょう。
「ンンン、ンンンン~~ッ!?」
淳之輔は陸に打ち上げられた魚の様に身悶えますが、声ならぬ声を発するばかりです。
「うんうん、わかったよ、坊や。可愛い子だ。元気で快活で勇敢で…。私の子供の頃にそっくりだ。坊やのような男の子が、私は大好きだよ」
男は声ならぬ声しか出せない淳之輔の幼さの残る顏をしげしげ見つめ、顎に手を掛けます。
「君の言いたいことはわかる。僕こそ、坊やの追い求める怪盗蜃気楼だ。名画『怪写轡画』を頂戴しに参上したわけさ」
(や、やっぱり! で、でも口惜しい、逆に捕まっちゃうなんて!)
淳之輔は少年特有の純真な正義感をにじませつつ、黒くて大きな瞳で解答を悔し気に見つめます。
が、所詮は緊縛されたうえ、口まで塞がれ転がっているしかない、ただの捕虜です。
自分が生け捕った獲物を愉しむ様子で、かつ、淳之輔の惨めな心情を察し、弄ぶように蜃気楼は続けます。
「勇敢なのは結構だし、張り込むのも上手だが、怪盗に捕まってしまうようではダメだねぇ」
蜃気楼は、ますます愉し気に顔をゆがめ、淳之輔の傍らにしゃがみ込むと、奇妙な噺を始めるのです。

「坊やは乱歩の小説を読み耽っていたようだねぇ。そう言えば、明知探偵の弟子の小林少年も、よく二十面相に捕まっては縛られていたよねえ、今の坊やみたいに、さ」
男の子にとっては、ヒーロー小説で虜になるキャラクターほど無様なものはありません。今まさに自分が、そんな惨めな状況で悪漢に捕まっているのですから、ますます羞恥心に苛まれること請け合いです。
「明知探偵みたいに助けに来てくれる人は、坊やの前に現れるかねぇ?」
蜃気楼は、これまた愉快に嗤い声を立てます。
(くそう、この縄さえ切れたら、こいつにせめて一矢報いてやれるのに!)
泣きべそをかきそうなまでに口惜し気に、瞳を潤ませ、ぎゅうッと猿轡のこぶを噛み締める淳之輔です。
蜃気楼はやがて、ぴたりと声を止めると、怒りと純粋さを増す綺麗な少年の瞳を覗き込みます。
「ところで…坊やは乱歩の小説のどこが気に入っている? 明智の格好の良さ? 二十面相の痛快な怪盗シーン? 小林少年の活躍? いやいや違うだろう?」
横たわる淳之輔の耳元で囁くように言うのです。
「縛られている女性、危機に堕ちる女性、そんな場面にドキドキする…。そうだろう?」
「---!?」
図星を突かれた想いでした。
淳之輔がひた隠しに心の隅に押し込めている、女の人が危機に陥る場面での胸のときめき。そんな密かな興奮を、誰にも知られていないはずの心臓の高鳴りの源を見事この怪盗に言い当てられてしまったのです。先だって夢中になって読んだ『人間豹』でも、悪漢の手中に墜ちた文代さんが、虎の着ぐるみを着せられるまでどんな仕打ちを受けたのだろう、どんな風に裸にされたのだろう、と密かに思いを巡らせるだけで異常な心臓の高鳴りを覚えたのです。もっと細かく説明しますと、それ以前に文代さんが、口元に麻酔薬を浸されたハンカチを押し付けられ、さらわれるシーンを描写した活字を目で追った際には、以上に心臓が高鳴り、あろうことか、12歳の男の子のシンボルを厚くしてしまったことも事実なのです。

コメント

コメントありがとうございます。展開もですが、US様の筆力も引き込まれる要因だと思います。US様の少年DIDには胸が熱くなる要素満載です。でも優子ファン様にもこれほどまでの食いつかれるくらい少年DIDがあったとは意外でした。
いつか少年DIDへの想いも聞かせていただきたいです。

理想的な展開ですね。由美子さんも捉われの身になっているのを期待しています。ヒロインを救う立場の探偵助手も同じように捉われて愛する人への凌辱を見せつけられる・・・惨めですね。でも可愛いかも。

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