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ここは、自分のこだわりを書き綴った場にしたいと思ってます。小説はすべて私の頭の中の妄想・空想を書き綴っています。


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US様投稿小説 少年探偵は囚われの身がお好き

第8章

再び、倉庫のカギが閉じられました。
中に残されたのは、再び猿轡を噛まされた由美子嬢と、パンツ一丁で縛られっぱなしになった淳之輔です。
「んああぁぁ~~」
悔しさにのたうち回るように、---あるいはお姉様の艶姿に心奪われ、奇妙な性癖に目覚めた言い知れぬ叫びでしょうか――淳之輔。
しかし、由美子嬢は冷静です。
しばし、上半身を震わすとなんと、乳房の形がくっきり浮かび上がるほど硬く縛られていたはずの上半身から、縄抜けして見せたではありませんか。
さらに彼女は、自分で瘻付きの猿轡を吐き出します。
その薄ピンク色の唇から口枷を外す様子がどこか、セクシーだと、目を奪われる少年探偵。と、そんな淳之輔の性癖など気づく様子もなく、由美子嬢は少年に駆け寄ります。
「しっかり、準之助ちゃん」
からからに乾きつつある口の中からこぶを取り出してもらい、後ろ手にされた麻縄は無論、股にかかったままの縄まで解いてもらいます。
さすがに恥ずかしさで震えましたが、この美女はそんなこと気にもかけていないご様子です。
「ふはぁッ…お、お姉ちゃん、どうして、縛られていたはずなのに!?」
「ふふ、書庫の中でカッターの刃が落ちていたのを後ろ手で拾ったの」
なるほど、それで身悶えていたような素振りで、縄に切れ目を入れて脱出の機会をうかがっていたのです。
「さぁ、脱出よ、淳之輔ちゃん。蜃気楼を捕まえちゃいましょう!」
と、由美子嬢は悪戯っぽい笑みを浮かべると逆に攻勢をかけようと、少年探偵を鼓舞します。
「でも、閉じ込められちゃっているよ。カギは中からじゃ開けられないんでしょ」
淳之輔は、先ほど由美子嬢がスタッフに説明していたことを思い出し、落胆したような表情を向けます。
「ふふふ、大丈夫。蜃気楼は一つだけミスをしたわ。この倉庫は開けるときと閉じるときでは、別々の暗証番号を打ち込まなければならないの。つまり、この倉庫は今、鍵はロックされていない状態よ!」
由美子嬢はすっくと立ちあがると、重い扉にググっと華奢な体をあてがう様にして押し開けます。
「ようし、僕にここからは任せて!!」
淳之輔探偵は、勢いよく飛び出すと、足を引き摺るようにしてふらつきながら絵画を抱え持ちさろうとする怪盗の背中に、得意の空手の蹴りをお見舞いするのでした。

夏休みの終わり。
図書館二階の展示された『怪写轡画』を前に地元マスコミの記者会見に応じる保坂館長の姿がありました。
「えー、皆様もご存知の通り、最近S田谷区に出没していた蜃気楼と名乗る怪盗もどきが現れ、この『怪写轡画』を奪おうとして逮捕されました。その容疑者は驚くべきことに、この名画の作者、平山宏彦が逮捕されました。ですが、この名画の価値が揺らぐものではありません。私は常々、この名画を時間で所蔵したいと願っており、我が図書館で保存・管理していくこととなり―――」
そう、蜃気楼の正体はあの平山宏彦だったのです。
平山は借金がかさみ、区内で窃盗を繰り返しては闇業者に転売していたらしく、容疑は認めています。
が、今回の『怪写轡画』の件に関しては、『嵌められた』などと供述している様子ですが、アル中も入っている彼のこととあって警察も真面目に取り合ってはいないようです。まぁ、平山が怪盗に自分の絵画を盗まれたことにして自作自演で保険金を手にすることを画策していた、ということで一件落着となりそうです。

「今回の犯人逮捕に関しましては、我が図書館のマドンナ司書、佐伯由美子君と、そして悪戯好きの未来の探偵、橋本淳之輔君が殊勲者です」
と、今日の記者会見に合わせ、由美子嬢と淳之輔を貴社の前に呼び寄せた保坂館長はユーモアを交え二人を讃えます。
照れ笑いを浮かべつつも、嬉しそうな淳之輔の傍らで、由美子嬢は少々複雑な表情です。
「どうしたの、お姉ちゃん? 難しそうな顔してるね?」
「ねぇ、淳之輔ちゃん。今回の犯人、つまるところ蜃気楼の正体って本当に、平山先生だと思う?」
「だって、僕たちが捕まえた蜃気楼は間違いなく平山だったじゃないか?」
不思議そうに由美子嬢を見返す淳之輔。
「でもね、私には私たちを捕まえた蜃気楼と、逆に私たちが捕まえた蜃気楼は別人じゃないかって思うの」
ややこしい話ですが、淳之輔をさらって監禁し、恥ずかしい方法で縛り上げ、由美子嬢をおびき出し、彼女までも縛り上げた蜃気楼と、暗証番号を開けさせた蜃気楼は別の男なのでは、ということです。
そう言われてみれば、あのアブノーマルな手法で淳之輔をいたぶり、萌芽的な変態的性癖まで言い当てた蜃気楼と、粗野でやることが雑であっけなく小学生の自分の組み伏せられた蜃気楼は同一人物と思えぬ節があるのも事実です。
「ねぇ、淳之輔ちゃん、あなた蜃気楼に捕まっちゃう前、最後に誰に会ったかしら?」
「決まっているじゃない、平山だよ」
「他には?」
由美子嬢は小首をかしげ、促すようにたずねます。
「…そういえば、保坂館長に」
嫌な予感がします。

「それと…」
由美子嬢は少々言いづらそうに囁きます。
「あなた…女の人が窮地に陥る場面に…夢中になっていた…そうよね?」
由美子嬢に隠して痛い性癖を言い当てられ赤面する淳之輔。
しかしお姉様の真意はそこにありません。妖しげな笑みを浮かべつつも、聡明なお姉様は核心を突きます。
「江戸川乱歩を夢中になって読んでいたことを知っている人って、私以外に誰がいるかな?」
「…保坂館長…」
疑惑がますます深まります。
ですが、淳之輔が最後に少年探偵らしい、指摘をします。
「でも館長は暗証番号を知っているってお姉ちゃん言っていたじゃない? それならわざわざ僕たちを捕らえて暗証番号を聞き出す必要なんてないじゃない?」
「実はね、あれは嘘。館長に教えた番号はフェイクなの。実は私、お父様のコネで今回の名画展を開かせてもらったんだけれど、文部省から鍵の暗証番号は私一人にとどめるように言われていたわ。つまり、本当の番号は私しか知らない。そのことを館長も察していた様子だったけど…」
由美子嬢は怪しげに美貌を光らせ続けます。

「もう一つ秘密を明かすと、館長はずっと平山先生に絵画の寄付をお願いして拒まれ続けていたわ。それほどまでにあの『怪写轡画』を所蔵したがっていた。そのうえ、暗証番号を知っていることが私だけであることを知り、あなたの『愛読書』も知っていた人物…他にはいないでしょう? 最終的に、『怪写轡画』も彼の手中に落ちた以上は…」
お姉様の名推理に淳之輔、完全にお株を奪われた格好です。少々気まずそうに話題を変えます。
「ねえ、もうここまでお姉ちゃんの名推理に付き合ったんだから教えてよ。『怪写轡画』の秘密ってなんなのさ。僕にはただ、昔の風景を描いたものにしか見えないけど?」
「そう、仕方ないわね」
由美子嬢は、またも妖しく微笑むと、優しく淳之輔の肩を押して促し、『怪写轡画』に対し、斜め方向に向き直らせます。
その瞬間、淳之輔は確信しました。
自分をある種変態的手法でいたぶった蜃気楼の本当の正体を。
そこには、硬く猿轡を噛まされ、哀願するような憐憫な表情をこちらに向ける美少年が描き出されていたのですから―――。『終わり』


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