その日、ひかるがペットになって初めておねだりをしたのである。
今まで、京香にされるがままだったひかるが、新しい猿轡を買って欲しいと言い出したのである。
例えば、昼間京香外出している間もずっと猿轡を噛ませていて欲しい、大きなボール猿轡で呼吸がし易いようにいくつもボールに穴が開いた猿轡が大好きだと言ったのである。
「京香様、お願いです。昼間の僕の為に新しいボールギャグを買って下さい。」
とお願いされたのである。
「ふふふ、面白い子ね。いいわ。買ってあげる。」
京香は、自分から猿轡をされたいとねだるペットが一際可愛いと思った。
京香は、ひかるに猿轡を口いっぱいに噛ませる瞬間の男の子が発する微かな呻き声と
締め上げる手の感触に、中毒になりそうになっていたのである。
早速、京香は、車で20分ほどのところにあるSMショップに買い物に行くことにした。
入念な化粧をし、カールのかかった髪を丹念に結い上げ、細く白い襟足が一層引き立つようにアップにしている。
高級ブランドの胸部にフリルのついたブラウスに、膝上20センチのタイトミニスカート。
黒いサングラスをかけながら、ひかるに声をかけた。
「行ってくるわね。ひかるが気に入りそうな猿轡をいくつか買ってきてあげるわ。
楽しみにしとくのよ、うふふ」
「はい、ありがとうございます・・・・。でも、きょうの京香様、・・・・・とっても素敵です。」
「何言ってるの。ほんの普段着じゃないの。ふふふ。でも、ひかるにそう言って貰えると、何だか嬉しいわ。褒めてくれた御礼に今晩はたっぷり可愛がってあげるわね。ふふふ。私もひかるのこと好きよ。」
嬉しそうにこっくり頷くひかる。
それから、ひかるに首輪をはめ、鎖でつなぎ、檻に入れ、頬にキスをして、檻の外から頑丈に鍵を掛けて、ベンツで外出したのである。
SMショップ近くのビルの地下駐車場に車を止め、往来を数十メートル歩くだけで、何人もの男が振り返る。
うっとりするほどの長く綺麗な足と引き締まったボディラインと普段着でも洗練された大人の女性の着こなし。
行きかう男達には20代後半の最高にいい女に映るのである。
そして、お目当ての猿轡を5個ほど物色し、地下駐車場に戻り、運転席に座って車のエンジンを掛けようとセルを廻した瞬間だった。
突然背後から、ハンカチのようなものを押し当てられたのである。
(クロロフォルムだわ。)瞬時にそう思った。
手は男の手である。跳ね除けようとしても、凄い力で動かせない。
朦朧とする意識の中で、ルームミラーを見た。
そこに映ったの男の顔は、なんと部屋の檻に監禁してきたはずのひかるだったのである。
(あなたどうやってここに居るの?)と言おうとしても声が出せない。
そして、意識が遠のいていった。
どれくらいの、時間がたったのだろう?
京香が眼が覚めたところは、狭苦しいアパートのような部屋だった。
朦朧とする意識の中で、夢ではないことを確認しようとした。
どうも男の部屋のようだ。
それもかなり安っぽい2DKくらいのアパートのようだ。
雨戸が閉められているのだろうか?
いくつかある窓ガラスは閉められ、窓の外からの光は完全に遮断されている。
部屋の中には、布団が隅にたたまれ、小さなテレビが1台と作業服のようなものが干してある以外、何もない部屋である。
そして、眼の前の色褪せした黄ばんだ畳の上には、白地に濃紺の千鳥柄の文様が大きく入った日本手拭がきちん畳まれて置いてある。
その他にも、和裁に使う1mの物差しと和裁の裁断バサミ、懐中電灯とデジカメと三脚が置かれているのが眼に入ってきたのだ。
一人暮らしの男の部屋を思わせるすえた臭いが漂い、灰皿には、短くなるまで吸い込んだショートホープの吸殻が盛り上がっており、さっきまで誰かが煙草を吸っていたと感じさせる臭いがこもった部屋に横たわっていたのである。
京香は、はっとなって起き上がろうとした。
しかし、後ろ手に縛られていることに気付いた。
手首の部分の腹と腹を合わせて何かで締め上げられている。
感触からいって革のようなもので締め上げられているようだ。
まったく手首が動かせない。
しかし、それ以外、足も縛られていないし、目隠しも猿轡をされていない。
しかし、股間の感触がちょっと違う。
スカートは履いているが、ショーツとパンティストッキングが脱がされている感じなのだ。
首を起こし、足を見た。
やはりストッキングを履いていない。
血の気が引いていくのがわかった。
立ち上がって逃げ出そうと思った時だった。
「お目覚めかい?京香さん!」と聞き覚えのない声で呼びかけられたのである。