第6章
村上の説得に渋々由紀恵も納得した。
あとで、時間をかけてゆっくりと、いたぶればいいのである。
「ふ〜ん、そうかい。それもそうだね。それじゃ仕方ないわね。」
と頷いた由紀恵の傍から元緊縛師の辰が話しかけてきた。
「お嬢!、当然猿轡も噛ませ直すんでしょ?。またさっきみたいな粘着テープじゃ色気も何もあったもんじゃない。やっぱり日本人には日本手拭ですぜ、お嬢。」
「そうさね。それじゃ日本手拭にするかね。せめて猿轡でも噛ませて色々楽しもうかね。舐めたり、揉んだりなら問題ないんだろう?。辰、手拭は用意しるのかい?」
「もちろんでさ。」
辰が持ってきた大きなバックを広げて見せた。
バッグの中には、色んな柄の日本手拭が多数綺麗に畳んで、揃えられている。
「ねえ、ちょっと千里さん、どの手拭で猿轡を噛まされてみたいんだい?。」
由紀恵がおどけて聞いてきた。
千里が由紀恵を睨みつけている。
そこに、辰が割り込んできた。
「お嬢、この手拭はいかがです。この紫の桔梗の花柄の手拭なんですがね。こんな風に結びコブを作った丸玉咥えなんか、こっちのお嬢様の口に良く似合うとおもうんですがねぇ。」
そう言いながら器用に手拭を廻すと、真ん中に小ぶりの結びコブが出来た。
紫というより、白地に紫紺の桔梗の大きな花柄の図柄のある手拭で、結びコブの部分に図柄が絶妙に重なりあっている。
「ほら、よく見なよ。」と辰が千里の目の前に結びコブの出来た手拭をぶら下げて見せている。
「ホントだね。中々いいじゃないか。じゃ、それにしようかね。」
と由紀恵が言う。
辰がポケットからハンカチを取り出して、丸めようとする。
「ちょっとお待ち!」
と由紀恵がいうと、自分のスカートの中からショーツを脱ごうとし始めたのである。
由紀恵も千里と同じように、黒っぽいビジネス用のスーツにタイトなミニスカート姿である。
細くて白い足が艶めかしく見え、黒いヒールの高いパンプスを履いている。
「お前たちは、向こうを向いてるんだよ。」
と言いながら、楽しそうにミニスカートの中から黒いショーツを脱いで見せたのである。
そのショーツが自分に噛まされる猿轡の詰め物だと千里にはわかった。
新入社員の時から、可愛い妹と目をかけてきた後輩から、騙され、裏切られた挙句、穿いていたショーツを猿轡の詰め物として噛まされる屈辱が堪らなく悔しい。
思いっきり睨みつけながら
「由紀恵さん、あなたこんなことして恥ずかしくないの?それでも人間なの?。・・・・・・恥を知りなさい!。この人でなし。」
とキツい口調で言い放ったのだ。
「恥を知りなさい?。ふふふふ。・・・・・これから、千里さん!あなたが恥を知るのよ。
ほほほほ。女としての生き恥をたっぷり知ることになるのよ。明日になったら、生まれたまんまの姿にしてあげるわ。座禅転がしって何かご存知?ふふふ。胡坐を掻いたまんま縛られるのよ。素っ裸でね。クスクス。股間が丸見えになって、たくさんの男たちからゲスな眼差しでジロジロ見られるのよ。・・・・ふふふ。そして、私が特大電動コケシで、たっぷりグリグリしてあげる!。ほほほ。どお?。女ですもの・・・・いくら意地を張っても直ぐにびしょ濡れになるわ。それを見られるのよ。どお?。想像しただけで恥ずかしいでしょ?。たくさんの男たちに凝視されて、どんなに恥ずかしくても、舌を噛んで自殺なんか出来ないようにしっかりと猿轡を噛ませてあげるわ。・・・・さあ、千里さん。私のパンティをご馳走するわ。まだ、温もりもあるし、ホカホカよ。いかがかしら?。ほほほほ。」
感情を逆撫でするように、丁寧な言葉遣いで話すと、今度は由紀恵が千里の前で、黒いショーツを見せつけた。
「こいつはいいや。羨ましい限りだ。」と辰が混ぜ返す。
「イヤッ」と千里が顔を背けた瞬間、由紀恵の手が千里の頤を鷲づかみにした。
「ほらほら、手間とらせるんじゃないわ。」
そう言って、由紀恵がショーツを捻じ込もうとする。
思いっきり顎に力を入れて拒絶しようとする千里。
「村上さんも見てないで、ちょっと手伝って。」
というより早く、村上が千里の鼻を摘み上げたのである。
必死に顔を揺すって抵抗したくても、全くの無駄であった。
鼻を摘み上げられ、顎を押さえられたら、何も出来ない。
由紀恵の黒いショーツが口の中に丹念に奥まで詰め込まれた。
「ウググウグ」と言いながら、由紀恵のショーツを受け入れざるを得なかったのである。
そして、口の上から由紀恵がショーツを押さえ込んでいるところに、辰が結びコブの手拭を丁寧に嵌め込んできた。
きっちり口にコブが嵌まってから、後ろに厳しく引き絞った。
黒いショーツの詰め物が外から見えないように、結びコブが千里の口にすっぽりと嵌り込んでいる。
口を大きく膨らませたように、結びコブを銜え込んだ千里の顔は、滑稽なくらい変形させられたのである。
「もっと強く締め上げな!。」と命じる由紀恵。
何度も引き絞ったあと、アップにした髪の綺麗な襟足で二重に結んで締めたのである。
「どお?私のショーツのお味は?。これまで会社で随分お世話になったお礼。ふふふ。ほら、口惜しいでしょ?。悔しかったら、悔しい!って言って御覧なさいな!。ほほほほ」
笑いながら嬉しそうに椅子に座った千里を上から覗き込む。
千里の端正な顔が洋梨のように頬の辺りでくびれる程、手拭が頬を割っている。
口は大きく上下に開かされ、奥歯まで手拭が噛み込まれているかのように、しっかりと結びコブが噛まされているのだ。
そして、本当に口惜しそうに屈辱に耐えるように正面の由紀恵を睨みつけている。
「ふふふ、素敵な顔よ。おばさん!。さあ、これでいいわね。大人しくするのよ。」
と由紀恵が千里の顎を指先で持ち上げながらほくそ笑んだ。
由紀恵の指先を振りほどくように、千里は顔を振り、顔を背け悔しそうに床を見詰めるしかなかったのである。
村上の表情がニンマリと崩れている。
「いや〜、実に美しい姿だねえ〜。私は以前から高森君がこんな姿で身悶えしているところを想像してたんだよ。ゆっくりと味合わさせていただくことにするよ。」
と普段のダンディな男からは想像もつかないスケベ中年そのもので、千里の揃えて縛られた太股の間から、ミニスカートの中身を覗き込もうとしている。
そこに、村上の動きを制するように、若頭の上田が由紀恵に話かけてきた。
「お嬢、そろそろワタシらにも、その探しておられる「宝物」の話をお聞かせ願えないもんですかねぇ、差し出がましいようですが、ワタシらもシノギをホッポリだしてるもんでしてねえ・・・・・金になるんですか?お嬢」
「ああ、そうだね。そろそろ,その話をしなくっちゃいけないね。ふふふ、上田!。このヤマはいくらのヤマだと思う?。・・・・驚くんじゃないよ、・・ふふ、なんと3000億円のヤマなのさ。3000億だよ。ふふふ。」
上田も辰も口をあんぐりして、目が点になって由紀恵の顔を見詰めている。
縛られている千里も猿轡された顔を由紀恵の方を凝視するように見詰めている。
「それじゃ、続きは私がすることにしよう。」
そう言うと村上がネクタイの歪みを直しながら、普段のダンディな姿勢になって、椅子に座った。
聞いて驚くなよ、と言わんばかりの顔で能書きから話し出したのである。
「我が九十九商事は、明治・大正・昭和と常に当時の明治政府に協力しながら、「政商」として、発展してきた事は知っているだろう。歴代・九十九一族は、当時の日本陸軍の関東軍と一緒に満州に進出して莫大な利益を稼ぎ出し、今日の隆盛の礎を築いた。将に、戦争あるところ九十九あり、で死の商人、戦争の犬だったのだ。ところが、第2次大戦の敗色が濃厚になった昭和18年、当時、中国にいた当時の日本陸軍中枢部の人間たちは、日本の敗北を予想して中国各地で略奪した金塊や貴金属を密かに私物化して隠匿しようとしたのだ。当時中国に居て、それを知った先代の4代目・九十九権兵衛は、ある時、自分が所有するトラックで金塊を盗み出し、ある場所に隠したのだ。私物化しようとする陸軍幹部が許せなかったらしい。4代目・権兵衛は、いつか日本の再建の為に役立てようと、九十九商船が所有する貨物船に乗せ、大連の港からヨーロッパに移送したのだ。そして、奇跡的に、そうまさにに奇跡的にアメリカの潜水艦に襲撃されることもなく、金塊を載せた貨物船はマラッカ海峡からインド洋、スエズ運河を通り、地中海に入り、当時同盟国だったイタリア経由でスイスにまで辿りついた。本当に奇跡的な幸運だったのだ。盗まれた陸軍の人間も、盗んだ犯人がまさか政商・九十九権兵衛だとは、夢にも思わなかったようだ。結局誰が盗んだかの詮索も出来ずじまいだったらしい。盗まれた軍人たちにも後ろめたさがあったのだろう。
金塊はスイス・チューリッヒ銀行の地下深くにある九十九権兵衛個人が借りた地下金庫に眠ったのだ。戦争に負け、権兵衛は進駐軍にも言わず、日本政府にも喋らず、黙って秘匿しつづけたのだ。本来の日本復興に役立てたいという意思とは裏腹に公表するタイミンググ逸したというべきだろう。あとを受けた息子の5代目・九十九田吾作も言い付けを守り、財宝をチューリッヒ銀行に秘匿し続けたのだ。秘匿されたお宝は、今の時価に換算すると3000億は下らないはずだ。この事を知っているのは、九十九一族と会社の上層部の数人だけだ。将に会社のトップシークレットなのだ。今もし、国税に知られたら大変なことになる。ましてや、外部に特に中国政府に漏れれば外交問題にまで発展するような大変な大問題さ。」
「それじゃ、もしかして「探し物」って、その金庫の鍵なんですね。この前盗みに入った九十九とかいうじいさんの家の金庫にあったカードと写した紙切れの番号も鍵の暗証番号なんですね?。」と若頭の上田が聞いて来た。
「うん。」と村上が頷いた。
「その通りだ。何せこの地上には,存在していないはずのお宝だ。鍵を開け、お宝を盗み出しても、会社としては訴えることが出来ないブラックマネーだ。関係者たちの口を塞げば、3000億が我々のものになるのさ。」
上田と辰がフリーズしたように身じろぎ出来ずに固まっている。
由紀恵があとを継ぐように話し出した。
「副社長の津川さんとこの村上さんは、先物取引で大きな穴を開けたもんだから、一刻も早くその金塊の一部でも現金に換えて、穴埋めしたいんだって。もちろん、大江戸組にもたっぷりとお礼が入るって仕組みなのよ。」
「しかし、今日社長室で言ったように、あと1つ何かチューリッヒ銀行の刻印が入ったマイクロチップかICカ−ドか、何かそんなものが必要なんだ。その何かの行方を知っているのは、おそらく五代社長と九十九のじいさんのみだろう。九十九の爺さんの家は隅々まで探した。あと残るは五代社長のみだ。自宅も昨日忍び込んで家捜しした。・・・・そこにも無かった。どこかに隠しているんだ。それを聞き出すまでは、この高森君は大切な囮ということになる。」
千里は怒りの炎を瞳に浮かべながら、村上の方をじっと凝視したままであった。
しかし、この時、別荘の窓の外から、気付かれないように中の様子をじっと見詰めている眼があったのである。
その眼は、椅子に縛りつけられた千里の緊縛・猿轡姿をじっと見詰めていたのである。