7章
亜美は、庄次の自宅に忍び込んだ時、彼が複数の名前を使い分けていることを知りました。
そして、緊縛画家での名前が「盆土栄二」と知って何か引っかかるものがありました。
どこかで見た名前だと。
亜美の脳内に記憶されている膨大な名前の中にある名前なのですが、すぐには思い出せません。
でも聞き覚えのある名前であることは間違いないのです。
日本の雑誌などを亜美はほとんど読みませんし、挿絵の作者の名前になんか興味もありません。
でも、どこかで見たペンネームなのです。
おそらくネット上のDID関連サイトだと思うのです。
ある日、亜美は何気に怪兵に尋ねました。
「怪兵さんは、もちろん盆土栄二なんて名前知らないわよね?」
亜美が独り言のようにつぶやいたのがきっかけでした。
びっくりしたのは怪兵の方です。
盆土栄二となら何度かメールをしたことがあったからです。
「え??亜美は何で盆土さんを?・・・・・ああ、確か一度ブログにコメントされたことがあったよね。・・・・それでかい?・・・」
「ええ???(びっくり)・・・・まさか知り合いなの?イラスト描く人よ?」
「イラスト?それじゃ別人だよ。・・・イラストなんか知らないよ。何でそんなこと聞くの?」
しかし、亜美にはピンとくるものがもちろんありました。
庄次も怪兵と同じ猿轡マニアのはず。
どこかで接点があっても不思議ではありません。
「その方、盆土栄二って漢字よね。いつからの知り合い。どこに住んでる人?」
「いいや!・・・・何度かメールで話したことがある程度だよ。ただそれだけ。仕事なんか知らないよ。」
「どんな話?」
「もちろん、好きなDIDの話だよ。」
「どんな人?」
「知らないよ。ただ、好きな女優の話とか好きな猿轡の話をしただけだよ。会ったこともないし。それに俺がDID関係の人間と絶対の会わないことは亜美知ってるだろ?
話したのもそれも随分昔の話だよ。そうだね、4年くらい前かな?」
「すぐにそのメールを読ませなさい!(ビシッ)」
有無を言わさず、亜美は怪兵のパソコンを開き、過去のメールを探し出し、メールを読みだしたのです。
「ねえ、怪兵さん?お願いがあるの?これから盆土さんにさりげなくメールして欲しいの。
文章は指示するわ!」
「??????」
「いいこと。何にも聞かずに言われた通りに・・・・ね! 一生のお願い。言うとおりにしてくれたらご褒美に私の身体に何でもさせてあげるわ。それじゃダメ?それから、令子さんと2人で思いっきり可愛がってあげるから。」
断ることなど出来ません。
亜美がこんな表情、こんな態度で怪兵におねだりするなんて初めてのことです。
どんなに腹が立つことがあっても、亜美が猫なで声で甘えてくると、絶対に負けてしまいます。
完全に亜美の手の平で転がされる愛奴の関係になっていたのです。
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